激突!☆戦☆車☆大☆隊☆
燃えているのは人ではない奴らだ。
私を包みこむのは、奴らの香ばしい肉の香りであった。
新聞記者がこれを見れば、少女の首を切り落とし、一家を横に並べ銃殺し、死体を焼くのがアドラーの娯楽とでも書くのだろうか?
しかし、問題は無い。
私は伝染拡大を阻止する為に、兵へ全てを破壊せよ、と命じたのだ。
橋を確保しろ、と言われタイヤをゴロゴロと回しながら向かったが、拍子抜けしたことに敵兵はおろか、地雷の一つさえも存在しなかった。
何故か?は直ぐに分かった。
橋の近くにある小さな村が原因だった。
村を一時的に補給所にしていた萸軍部隊は村人と接触し、知らない内に精神を犯され、最後には全てを放棄したのだ。
こうなってしまった以上、最早躊躇う必要は無い。
サーチ&デストロイである。
村にいる連中は全て殺した。
火炎放射機は、家屋に潜む敵を炙り出すのに持ってこいの兵器だ。
機関銃でバタバタと奴らを薙ぎ倒すのも、気分がいい。
MG42は確かに素晴らしい銃だが、凄まじい連射で弾薬を山のように消費してしまうので、
チェコスロバキア製の機関銃を採用すべきだと進言したのだが、軍部がMG42に心を奪われてしまい、仕方なく連射速度の切り替えが出来るセレクターを取り付けた。
あの島でこちらの世界の武器を手に入れられたのは、非常に助かった。
古今東西ありとあらゆる武器を調達することができ、それをコピーして、世界の戦場に革命をもたらす事が出来るのだ。
そして、その中でもブローニングM2は、私の心強い味方となっている。
装甲車を軽々撃破し、遠く離れた敵の小銃が届かない距離から12.7mm弾を叩き込み、敵の四肢を弾き飛ばすことが可能なのだ。
こんなに素晴らしい兵器を作ってくれたブローニングに、お礼を言わなくてはならない。
ありがとうブローニング!
貴方のお陰で人が沢山殺せます!
ありがとうアメリカ!
君達の兵器で、我々は敵を殺すことが簡単になりました。
「ヴァイアー軍曹!君の三号戦車はいつまで戦える!」
「は!死ぬまでであります中佐殿!」
「よろしい!ならば、命令だ!」
「偵察機が複数の戦車とそれに随伴する歩兵を発見した」
「正確な数は不明、偵察機を見つけるなり、森に隠れてしまった、敵は闇に紛れて我々を奇襲する筈である」
「穴を掘り地雷を埋め、対戦車兵器を用意するのだ」
そこからの行動は早かった。
橋の防衛を目的とした即席のプランが立てられ、タコツボを掘り、敵の進行予想ルートに、対人地雷、手榴弾をワイヤーで繋ぎ、固定したブービートラップを仕掛けた。
60基のパンツァーファウストと、2台の戦車それから鹵獲した1門の37mm対戦車砲が頼りである。
1台に対し、必ず複数人で掛かるよう指示、乗ってきたトラックは後方へ待避させ、装甲車は橋の手前に陣取り、戦車は両翼に配置して十字砲火を浴びせる手筈となった。
対戦車砲は援護を行うG3(第3中隊)に配備され、その際アンナが「ちっちゃくてかわいい」と言い、アンネは対戦車砲に嫉妬した。
13時間後……
暗闇の中、敵の戦車がゆっくりと、橋に近付いて来るのがわかる。
橋に無線機が放置されていて、尚且つ警戒の体勢をとっている事から、敵は我々が待ち伏せしていることに気付いている。
各員に無線で合図するまで攻撃はするな、と伝えてあった。
「キキョウ大尉、合図で擲弾を撃ち込め」
「わかってますよ中佐」
「見ろよあの戦車、俺達を殺そうとしてるぜ」
「型はベーテーシリーズの7かな」
「隣はFTと巡航戦車ですよ、奴ら世界中から武器を仕入れてるんでしょうか?」
ざわつく隊員を横目に、逸見は履帯が土を踏みしめる音を聴いて、身震いした。
戦車と正面から、やりあった事は無かったからだ。
「射撃用意」
私が合図すると、訓練された兵士達が一斉に武器を構えた。
槓桿を引き、薬室に初弾を送り込み、擲弾を装填して彼方の敵を見た。
(擲弾とは、八九式重擲弾筒を直射と曲射、両方に対応出来るように改造して、各分隊に一丁配備したものである)
「用意………………撃てーーーーーー!!!!!!」
鉄拳が鉄の箱に飛び、機関銃弾が嵐を巻き起こした。
ノイマン効果で装甲を貫通したパンツァーファウストの破片が、乗員をズタボロにし、弾薬に誘爆した。
銃弾が飛び跳ね銃口が躍り狂う。
「まるで湾岸戦争だな!」
「わんがん!?何ですかそれ!」
「気にするな!」
馬鹿みたいに大声で話してるのは、まるで野砲が着弾したような音が次々と聞こえ、大声を出さないと声が聴こえないのだ。
「G3からタイガー1へ、照明弾一発を打ち上げる送れ」
「了解G3、弾薬撃ち抜いて、フェスティバルのビックリ箱にしてやる、送れ」
「G3、了解終わり」
砲塔の軋みと、砲弾が砲身に擦れる音、目の前で聞こえる銃声完璧だ。
「徹甲!距離ー600撃て!」
第2中隊オイゲン中尉にて
「外した!下がれ!下がれ!」
耳をつんざく砲撃音が聞こえ、耳鳴りがする。
今の砲撃で、5人が吹き飛んだ。
そして頭の中で鐘が鳴り響いている。
急いで新しいパンツァーファウストを味方の死体から拾い上げ、間髪いれずに、撃ち込んだ。
機関銃を担ぎ、随伴歩兵に腰だめで撃ち込む。
タコツボから飛び出し、身をさらしながら応戦する事は、指揮する立場がやることではないが、その行動はG2の全員を勇気付けた。
手榴弾を砲身に投げ込み、装填されていた砲弾を誘爆させる。
戦車の上によじ登り、片手でパンツァーファウストを、自分もろとも殺す兵士の姿も見えた。
至近距離で撃ち合い白兵戦を仕掛け、互いに首や腹を狙う兵は、人の顔をしていなかった。
「萸野郎を殺せ!!!」
自分からこんな言葉が出るとは、誰が想像しただろうか。
戦争は人を変えるのだ。
第3中隊アンネ・アンナにて
「腰か脚を撃って、そうすれば3人減らせる」
「わかってるよアンネ」
「ほら、右の機関銃をやって」
G3は、G1,G2の援護を担当していた。
他の部隊と比較すべき点は、狙撃銃や半自動式ライフルが多数配備されてる事である。
射撃に長けた者を、重点的に配属させた部隊であり、機関銃や迫撃砲の射手を狙撃し、戦闘を有利に進めるのが仕事だ。
「サプレッサーのお陰で、マズルフラッシュが見えないのは助かる」
「その代わりキルフラッシュは見えるから注意してね」
「わかってるよアンネ」
優しく微笑み、自分が撃った敵兵を救助しようとしてる人間を狙撃した。
対戦車砲は軽戦車の群れに対し、履帯や操縦席を狙って撃ち込む。
ついさっきまで、ライフルを担いでいた人間が、操作してるとは思えない程の正確な射撃であった。
全ての武器扱えるように、訓練した結果でもあるが、それをなし得たのは、当人達の技量が元々高かったのが、影響しているのだろう。
そして、彼らは巧妙に偽装し、敵に見付かる事は殆ど無かった。
第1中隊逸見萩にて
「動いて撃て!動いて撃て!敵に人数を悟られるな!」
各員が、予め決められた地点へ移動して、銃撃を与えるのがG1の役割だった。
動いて撃て、動いて………あっ
20人程度の敵兵と、バッタリあってしまったのである。
「あぁ、どうも」
ピンも抜かずに手榴弾を投げつけ、それに驚いた敵兵にすかさず肉薄し、stgを撃ち込みながら拳銃とナイフを取り出す。
首を刺し拳銃で目につくものに撃ち込んで、敵を盾にしながら、ライフルを奪い取り、銃剣で心臓を串刺しにしながら、射撃。
反動で銃剣が抜けた所でストックで腹を殴打、首をへし折った。
そうして戦ってるうちに、いつの間にか敵が撤退し始めたのだ。
この戦闘で、我々は21人の犠牲と37人の負傷者を出した。
正面からぶつかり合う戦いを、余儀なくされた事が原因だった。
我々は強襲浸透部隊である。
防衛や敵と正面切って戦う事が目的ではない。
「休暇を申請しよう、久しぶりにイザベラに会いたくなった」
逸見はそう言うと、士官用の自動車に戻って行った。
萸軍第35戦車大隊報告書
FT戦車2台を喪失
BT戦車9台を喪失
MkⅢ戦車4台喪失
無数のロケットが飛んできたと思えば、一瞬で戦車が吹き飛んだ。
装甲の増加と対人装備の強化を要請する。
第8歩兵師団報告書
戦車に随伴させた歩兵が、無数の破片を浴びながら帰還した。
証言では、野砲の砲撃を受けて、1000人以上の歩兵と交戦したと言っている。
戦車との共同が取れなく、戦車だけが先に行ってしまい援護が難しかった。
無線機の配備を要請する。
補給された銃弾の規格が合わず、無理矢理押し込んだ結果故障が多発した。
補給部隊の頭を取り替えを要請する。




