第二次鷲萸戦争
アドラー国上空国境付近にて
「ドラゴン1からドラゴン2へ」
「対空砲火に気を付けろ!フォース製の40mm対空砲だ!」
突如上空に侵入した空中艦艇を迎撃すべく、パトロール任務に就いていた第223飛行隊が、航空駆逐艦ジェンキンスと熾烈な空戦を繰り広げていた。
空中に無数の黒煙と死を撒き散らし、鬼のように飛んでくる機関銃弾を避けながら、風よりも速く飛ぶのは、かつて空を支配した竜ではなく、ジュラルミンで出来た戦闘機なのである。
「駄目だ!7.8mmじゃ装甲を貫通出来ない!」
「だから俺は上に言ったぞ!ロケットか、無反動砲を積める機体を寄越せってな!」
「うるさい!泣き言何か聞きたくない!指を動かせ!人生で最も忙しく働け!艦橋か排熱用タイルを狙え!そこなら機銃で抜ける!」
銃弾がガラスを突き破り、艦橋の中でパチパチと音をたてながら、跳弾する。
一機が火だるまに、なりながら艦艇目掛けて突っ込んで行った。
「小隊長!」
国境で起きたこの出来事は、あっという間に世界へ広がり、世界はこの騒動に注目した。
近年稀にみる、空中艦艇と航空機の戦いを航空機が制した。
撃沈までには至らなかったものの、空中艦艇は鹵獲され、アドラーの戦力となった。
世界はこれから起きる戦いをモデルケースとし、軍の強化及び方針を決める。
歴史から見れば、たった数年程度の戦争であるが、この戦争が、世界の戦争に対する見方を、大きく変える事になるのだ。
それは、何処かの世界で起きた日露戦争や第一次世界大戦、スペイン内戦と、同じ作用を引き起こす事実かもしれない。
アドラー国ガーベラ独立大隊にて
「我がユニコッドは、卑劣で帝国主義のアドラーへ宣戦布告を行った!」
「アドラーの圧政に苦しむ者達よ、立ち上がれ!」
大隊の面々が、ユニコッドの開戦放送を聴いていた。
「先に仕掛けてきたのは、そっちだろ!」
「何が圧政だ!」
ユニコッドへの不満を爆発させながら、報復攻撃の命令を今か今かと待ちわびるのは、特殊監査強襲浸透部隊通称ガーベラ大隊の隊員だった。
休暇から呼び戻され、しかも祖国が攻撃を受けたと知ると、(誰かからの教育で)愛国心溢れる彼らは、直ぐにでも武器を取り、反撃に転じたかった。
しかし、いつまで立っても命令が下されず、やきもきしていた。
するとそこへ、大隊長である逸見がやって来た。
「全員よく聞け!たった今命令が下った」
「諸君らは、これよりフォレスタル要塞攻略に掛かる」
「要塞の構造や戦力は不明、また敵の空中艦艇一隻を撃破したが、敵にはまだ3隻残っている」
「空中艦艇は、国境に連なるプルムトリア山を、高度制限の影響で突破出来ない」
「だが、谷となると話は別だ」
地図を黒板に張り出し、ペンで印を付けた。
「谷を通って山岳地帯を抜ければ、我が国の首都まで到達し、艦砲射撃も可能になる」
「首都砲撃の可能性が残っている以上、このルートを潰さなくてはならない」
「その為に、谷の上に陣取っている目障りな要塞群を破壊する!」
逸見の力が入りすぎて、ペンの先を折ってしまった。
その欠片を決まりが悪そうに拾い上げ、ゴミ箱に捨てた。
咳払いをし、気を取り直して話を進める。
「部隊の移動には、航空機による空挺降下を実施する」
「要塞攻撃の爆撃機が来る前に、敵の対空陣地を無力化せよ」
「諸君我々は、この国で数少ない実戦を経験した部隊だ」
「後ろでデスクワークをしていた連中や日和見主義の連中に、戦争を教えてやろう。どちらにつけば良いかを、はっきりさせてやれ!」
「なお、本作戦名は決める時間がなかったので、上が後から付けることになった」
「ブルースプーン作戦なんて、奇妙な名前を付けられない様、存分に活躍してくれ」
「了解!!!!!」




