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点火前

「撃て!撃て!民族自決を決め込んだ連中だ!容赦はいらん!」


市街地での戦闘は、なるべく避けるべきであろう。


こうやって今行われている待ち伏せや、IED、人間爆弾の脅威は、イラクでアメリカが身を持って証明してくれたのだから。


「大隊長、敵の大口径機関銃に狙われています」


「見りゃわかるよ!」


そう、イラつきながら、キキョウ大尉に怒鳴った。


「クソ!舐めるなよ、こっちはSASがIRAとの死闘の末に書き上げた、血のマニュアルがあるんだ」


「連中に、擲弾の威力を教えてやれ!」


ボシュという、音と共に50mmの榴弾が機関銃目掛けて飛び出し、木っ端微塵にした。


「火力を前方に集中!」


すると、待ってましたと言わんばかりに、MG42がバリバリと音を立てながら火を吹いた。


このMG42も弾薬消費が激しい事から、一部部隊のみ配備している。


こいつを全部隊に配備すると、国力に影響を与えるレベルで、弾を作らなければ、ならなくなってしまうからだ。


機関銃の制圧射撃によって生まれた移動の時間を、隊員達がすり抜けてゆく。


対装甲要員がパンツァーファウストを、石や土で出来た建物へ発射し、崩落させた。


その隙を突き、道の真ん中から建物へと進んでゆき、粗末な作りのドアを蹴破った。


中に入ると部屋の隅で、絨毯にくるまった何かを見つけた。


逸見は、後から襲われたら敵わんなと思い、絨毯目掛けて2,3発撃ち込んだ。


絨毯から赤い液が流れだし、絨毯を染め上げる。


「何か、ありましたか?」


銃声を聞いた第1中隊のリズ・ニューサイランが、声を掛けてくる。


「死体に撃ち込んだだけだ」


「そんな事より、G2とG3(第2,3分隊)はまだか?」


「設置に時間が掛かってるようです。少なくとも後、30分は掛かるかと」


無線機のアンテナを、ぴょこぴょこさせながら答えるリズを、横目に逸見は後退の指示を出した。


「潮時かな、分散して退却するぞ」


「もう撹乱は十分だ、各員は予定の配置に移動せよ」







「この騒ぎを、どう捉えるべきかな」


コバシ・ラ・シャダムは、あちこちで上がる煙を眺めながら、隣に立つS80に問い掛けた。


「陽動と見て間違い無いでしょう」


「既にこの町の何処かに、侵入者の別動隊が潜伏して、指導者の命を狙ってる」


「我々を炙り出す為の煙を焚いている真っ最中と、言ったところでしょう」


「私は陽動を、貴方は潜伏してる連中を」


目的は指導者の暗殺、町に潜伏してるなら、土地勘も持っている指導者の私兵の方がネズミ狩りに最適だ。


シングルアクションの拳銃と、カービンライフルを持ち騒ぎの中に繰り出して行った。


住民は戸を締め、息を潜めて、騒ぎが収まるのを待っている。


民兵の多くは、陽動に引っ掛かって、周りが見えていない。


敵の陽動は成功している。


そして、陽動ならじきに撤退する筈、ならば撤収するを狙う。


一瞬で情報の整理と次の行動を決めたS80は、家屋の屋根から屋根へ、跳び移り待ち伏せ地点に向かった。

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