熱を帯びる国
基地警備大隊とは仮の姿、後に付けられた通称は、独立処刑大隊
実態は、特殊監査強襲浸透部隊という名の特殊部隊であった。
隊員の殆どが囚人あるいは、懲罰部隊所属の兵士で、隠蔽工作や最前線での危険な活動を行っていた。
しかし、装備は他の部隊よりも潤沢で、大国の空挺部隊と同等、もしくはそれ以上の装備を有している。
逸見は、墓場から持ち出したstg44を整備していた。
航空会社とカメラ会社が共同開発したダットサイトを取り付け、フォアグリップをバンドガードに装着。
更に、伏せ撃ちしやすいように、弾倉を切り詰めた物やシェアファイアマガジンに変更、マガジンの長さを短くすることに成功した。
武器の調整を行っていると、キキョウ大尉がやって来た。
「報告します、第1中隊、第2中隊、第3中隊出撃準備完了」
「いつでも行動出来ます」
逸見は武器の安全装置を掛け、弾が入って無い事を確認して、武器を置くと、「ご苦労」とだけ話した。
前回、作戦について異議を唱えた彼だが、私にとっては良い副隊長役が見つかったと思っていた。
誰でも構わず意見を唱え、常に作戦の不備や情報の共有をしてくれる人間が必要だったのだ。
殆どの人間が、私を森で熊さんに遭遇したが如く怯えるか、こちらの目を見て不敵に笑ってくるのだ。(不思議なものである)
その為大尉の存在は、とてもありがたいものとなっている。
そして、それとは別に演説を副隊長に丸投げする、という目論見もあった。
アガナ国パレティナ地方『光の間』
「指導者様S80が、お話をしたいと」
「通してくれ」
諜報員から持ち込まれた資料を置き、眼鏡を外した。
自らの目を持って、目の前に立つ白髪の男を見つめなければならない。
体重100キロを超える巨漢の男が、たった1人の老人に恐れを感じているのだ。
「また、暗殺者を1人殺ったそうじゃないか」
「あんなのは暗殺者とは呼べませんよ」
老人はそう言うと、血まみれの袋を机に置いた。
「何の真似だ?」
「袋の中を見てみろ、我々の敵がまた増えたぞ」
指導者改めて、コバシ・ラ・シャダム、が袋の中身をつまみ上げ、しげしげと眺めた。
「この指がどうかしたのかかね?」
「指の爪が、青みがかっているでしょう」
「それは、ハリタス教徒がよく使ってるハーブだ」
「ハリタス教団はラプア民族を、消し去るつもりのらしい」
「世界中が我々の敵という訳か……」
少しの沈黙の後、大きな音を立て、ゴミが床に散乱した。
骨を避けナイフで首の大部分を抉った。
「妙に念入りだね」
「この国の連中には、とても世話になったからな恩返しだよ」
「恩返しってレベルじゃないよアンネ」
若干引きぎみで、そう言うと背中に背負った無線機の受話器を取り、話し掛けた。
「こちらG3中隊見張りを排除した、送れ」
「こちらG1了解、増援をそちらに送る、送れ」
「こちらG3了解、幸運を、終わり」
目の前に広がる景色には、大小様々な家屋が健在している。
この景色の中には、大勢の男、女、子供、老人が、存在している。
「恐らく、千人はくだらないだろうな」
アンナがそう呟くと、
「あんな作戦を思い付く何て、分隊長様は頭がお凄いのではなくて?」
と、アンネが上品に罵倒した。
「でも私達には関係ない、例えどれだけの人を犠牲にしても」
「例えどれだけの、人の人生を終結させようとも」
「「二人は永遠に一緒」」
二人の少女は、真夜中の砂漠で熱いキスを交わした。
彼女らの熱愛っぷりに、第3中隊の面々は呆れ顔だった。




