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大隊

やあ、諸君ご機嫌よう!」


と、満面の笑みを浮かべながら逸見は、声を掛けた。


緑豊かなこの野原に、集められたのは、軍規に反した愚か者、左遷、刑務所の囚人etc.の約400名の軍人もしくは罪人が集められた。


「諸君らがここに居る理由は様々だ」


「私はなるべくそれらには触れないで置くが、もし古傷に塩を塗り込みたいと言う者が居るなら、遠慮なく塩を塗り込んでやる!」


「例えケツの穴でもな!」


大声で叫ぶ私を見る者の目は、様々な感情で彩られている。


それはお世辞にも、あまり良くない感情であったが、彼は迷わず続けた。


「ここでもし問題が起きれば、5キロ離れた場所に展開している砲兵隊がここを砲撃する。間違っても脱走なんて考えるなよ」


こうして、彼らの地獄の日々が始まった。


最初は体力作りを中心とした予定を立て、訓練兵に実施させる。


「もたもたするな!ノロマ共!貴様ら走る動作も忘れたのか?もう一度ママの腹にいた頃からやり直してこい!!!」


罵倒されながら、大勢の男達(女性数名)が走る様子は、沙汰から観れば、フルメタルジャケットのワンシーンを観ている様な気分になるだろう。


この中の大多数は罪人が多いが、中にはそうでない人種、厄介払いの為に左遷された者も居る。


その中の1人が、A訓練中隊に所属している「リズ・ニューサイラン」である。


彼女は上官の不倫を、上官の奥さんに素直に話してしまった為、ここに飛ばされた。


ショートカットの栗色の髪が特徴的な女で、その山あり谷ありの体型から、直ぐに山脈のあだ名が付いた。


多様な言語を話し、通訳として活躍が出来そうである。


この他にも特質すべき隊員は居る例えば、問題行動を起こしがちな、B訓練中隊に所属している、「オイゲン・ミツマタ」東大陸系の人種で、見た目は任侠映画に出てきそうな大男だ。


自宅へ強盗に押し入った4人組を、撲殺して過剰防衛の罪で、刑務所に送られていた。


気性の荒い男達を上手くまとめ上げ、こちら側としては助かっている。


その戦闘能力は確かなもので、訓練の狭間に見せるその勇敢さと、強靭さは目を見張るものである。


最後に、変人の集まりであるC訓練中隊ここには、「アンナ・テイカ」と「アンネ・カズラ」

この2人がいる。


前者の方は、黒髪ロングヘアーの大人しそうな美人で、誰にでも親しく接してくれるが、後者の方は束縛欲が強く、アンナが一言でも他人と話そうものなら、剣のごとき鋭さで睨み付けてくる。


肩まで掛かったその髪は、藍色でとても珍しい髪で顔立ちは微笑めば、どんな男でも振り向かせる事が出来るだろう。


これは、俗に言う残念美人という奴だろうか?


何年も前に打ち出された、社会安定政策の一環である「秩序維持法」に2人は引っ掛かってしまい更正施設に入れられた。


が、アンネが施設から抜け出し、職員の首に手製ナイフを突き付け「アンナと一緒に居させなければこの公務員を殺す」と脅し、脅しに屈した所長が、この都合良く出てきた軍施設に放り込んだ。


何故かは知らないし、知りたくないが、異様に人体に詳しく医者並みの技量がある為、衛生兵として活躍が期待出来る。


と、いった感じで、良くも悪くも尖った人材が集まってしまった。


そして、彼ら彼女らに射撃や近接格闘は勿論の事、車両の運転、水泳等の一般部隊ではほとんど行わない事も行った。


しかし、訓練がまだ不十分な状態で出動命令が下ったのである。


「何故ですか!?」


と、私は受話器に向かって大声で叫んだ。


「逸見中佐、貴方の言い分はごもっともだ」


そう、電話の向こうのアヒム中佐は言う。


「まだ訓練の終了していない部隊を、実戦に投入するなど論外です」


「君の言いたい事は分かる、だが他に対応出来る部隊は君の部隊しか居ないのだよ」


「君の部隊しか居ない?君の所しかやってくれないの間違いだろ」


「口の聞き方に気を付けたまえ」


「軍の指揮系統から独立した部隊を創設するのを黙認してやっているのだ」


「それなりの地位がないと不便だろうと、ダミアン大将が中佐の階級まで与えてやった」


「君は他の将校が10何年懸けても、たどり着けないような場所に、コネでたどり着いたんだ」


「異例中の異例って事は理解してるんだろ」


「少しは無理をしてでも、恩に報いるべきじゃないのか?」


そう言われてしまったら、拒否は出来なかった。


「分かりました、大将には色々便宜を図って貰ったんだ」


「そのご恩とやらに報いてみるさ」


「期待しているぞ」


そう言うと、アヒムは電話を切った。


逸見は受話器を置くと、傍にあったくず箱を蹴っ飛ばした。

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