表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/59

回収

最近入ってきたあの男、逸見萩とか名乗ってたが何か変だ。


士官学校からきたとか言ってるが、にしては他の連中のように威張り散らしたりしないし、新米士官特有の自信のなさ、迷いを感じない。


そして中央軍司令であるダミアン大将が言ったあの言葉「よろしく頼むよ」何故?たかだか尉官クラスの人間を、上層部が気にかける?


違和感を拭えない気持ちが強く、考えにふけっていると、「アルノルト少将時間です」そう呼ぶ声が聞こえる。


「分かった直ぐに行く」


服装の乱れを正し、帽子を被り、部屋を出て、広場で待機している部隊を前に訓示を述べる。


「諸君、上層部は我々に実戦の機会を与えた」


「諸君の言いたいことは分かる」


「何故あんなちっぽけな島を占領する為に、一個師団を投入する必要があるのかと、そう思ってる者が居るのは、私も知っている」


「だが覚えていて欲しい!その疑問は時として自らの命を奪う事になる!」


「この事を肝に銘じておくように」


訓示が終わると、靴底を鳴らしながら駅まで歩き、列車の中に乗り込むと装備の最終確認を行った。


「bar13」これは、この国で正式採用されたボルトアクション方式の国産ライフルで、射程300m装弾数4発と、まずまずの性能で、山岳地帯での戦闘を想定し、銃身が長くなった。


その結果取り回しが悪くなり、東系の体格が小さい人種からは、評判が悪い。(私もその1人である)


本当は、私物のライフルを持ち込みたかったのだが、支給される弾薬が合わずこのライフルを使う羽目になった。


列車が軍港に着くと、今度は輸送艦に乗り換え島に向けて出港し、20分足らずで島に到着した。


しかしこうした上陸作戦を想定して居なかったのか、上陸用舟艇の一隻も備えておらず、哨戒艇や救命ボートを使って揚陸作業を行った。


結果第一陣が上陸するまでに3時間掛かってしまう事になり、本作戦のずさんさが伺える。


もし、敵の目の前でこれをすることになるとしたら……考えるだけでぞっとする。


上陸地点は人で埋め尽くされ、何処かのイベント会場の様だった。


「小隊集合!」


その掛け声で、私の部下達が一斉に集まってくる。


「これより作戦目標である『遺物』の回収に向かう」


「足元、木の上にも気を配れ」


「ここの連中は木登りが大好きだからな」


「まずは島内の村を制圧する」


「了解!」





島民達の生活はこの日を境に急変した。


突如として現れた武装集団が瞬く間に、島を占拠してしまったからである。


そしてその中にかつて、村八分の対象にした男が居るのだから島民達は復讐を恐れていた。


島民達は一番大きな村に集められ、この事態の説明を行った。


「たった今この島はアドラー国の領土となった」


「抵抗すれば残念な結果が訪れることになるので、どうか理解して欲しい」


「黙れこの人殺し!」


声の方へ目をやると、そこにはいつぞやに出会った人の良さそう男がいた。


「あぁ、どうもご無沙汰しております」


笑いながら言う私の態度にムカついたのか、声をあらげながら、「人の家族殺しといてその態度はなんだ!」と怒鳴り散らしていた。


面倒だなと思い、そいつに銃口を向け、威圧した。


「やってみろ!死ぬことなんて怖くない!」


「そうなの?じゃあ君でいいや」


銃口を隣にいた女へ向け、引き金を引いた。


「ウギッ」と変な声を上げて、地面に倒れてしまった。


予想だにもしなかった事に、その場に居た全員が目を丸くする。


「もし今後、誰かが抵抗すれば、そいつと全く無関係のやつを殺す」


「だから好きなだけ暴れてくれたまえ」


その言葉によって誰も反抗しなくなったので、私はとても満足し、「大変結構!」と言った。




目標である洞窟にたどり着くと、早速武器の回収作業に取り掛かる。


様々な国の銃があちこちに転がっており、これを全部持って帰るのは、骨が折れるなと思った。


たがこれらの武器より気になることがあった。


それはガーベラが前に言っていた、飛翔体の事である。


もしかしたらと思い、証言と記憶を頼りに飛翔体が落下したと思われる場所を探し出す。


そして何時間もしないうちに目的の物を見つけ出した。


この島で不時着に最も適してる場所と言えば、砂浜しかなかったのが決め手となった。


飛翔体の正体は、三式戦闘機飛燕だった。


多少性能に難はあるが、上手く扱えばこの空を我が物にする事が出来るのだ。


「諸君喜べ、これからの空中戦は大きく変革するぞ」


そう言いながら、笑みを浮かべた。


その頃、島での騒ぎを知ったアルノルト少将は、あの男は自分の手に余ると思い別の部隊に追いやろうと、決めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ