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会話

今図書館に来ている。


それも国営の!国防軍にコネ入隊して1ヶ月たったが、ようやく立ち入り許可が出た。

(階級は少尉)


私はこの世界に対して、あまりにも無知である。


この世界の人間が、どんな歴史を歩み、どんな事を考えたか知らないのだ。


ならば、この図書館と言う情報の山に、飛び付く以外選択肢は存在しないのだ。


しかし、それなりの身分ではないと、立ち入る事を許されないので、手続きには中々苦労した。


この図書館に入る動機は何ですか?とか、何処の所属ですか?とかを書類に記入するものだから、まるで履歴書を書いているようであった。


「まずは歴史とマナーだな」そう呟くと、天井まで高層ビルの様にそびえ立つ本棚と本棚の間を通り抜け、歴史書が置いてある場所へ向かった。


この国は、文化発展の為に誕生したと言っても過言ではありません。


これは我が国で、語られている物語です。


ある所に一本の木がありました。


そこへ西からやって来た男が、その一本の木を見て、「この木は男性的だ」と言いました。


すると今度は、東から来た男が「いいやこの木は女性的だ」と言いました。


二人は大喧嘩になり、どっちの主張が正しいのかを、木の目の前で議論する事となりました。


西から来た男は、木がとても太く男らしいと主張し、東から来た男は木が捻れた部分から生み出す女性的の魅力が、あると主張した。


いくら言い争っても決まらないので、西の男は木がいかに男性的かを綴った本を書き、東の男は木が擬人化した絵を書いた。


そして、また西と東から人がやって来て、今度は彼らの作った作品を評価した。


やがて、その木の前は彼らの作品を見る人、それに触発され、自らも作品を作り出す者。


その集まりを稼ぎ場所と見た商人が物を売り出し、どんな天気でも作品が作れるように、雨風を凌げる小屋を作り出した。


その結果集まりは街へ発展し、街は人が溢れ、その溢れた人がまた新たな街を形成して行き、更なる文化発展の為に国が建てられた。


これがこの国の建国の由来とされています。


「……なんかショボいな」


私は本を棚に戻した。




戦記物から戦術、社会常識に論文とありとあらゆる文章を読み漁った。


・宗教大戦1847「世界は大義の為に戦った!」

・空中艦艇の戦略的観点から見た運用方法

・名将スタナレド驚異の戦術!

・自然生産法と機械生産法の違い

・一部地域の脅威的な技術発展についての考察

・世界奇病図鑑

・古代神話生物

・世界の美味しい料理 東大陸編

・脳みそが半分になっててもわかる社会マナー


等々の本を読み終わった時には、すっかり夜になってしまった。


急いで図書館を出て、基地へ向かおうと歩き始めた時、白い何かが、湖の方へ動いて行くのが見えた。


私は不思議に思い、白いのが向かって行った方へ歩みを進めた。


疑問と少しの好奇心が、私の足取りを軽くしているのが自分でも分かる。


たどり着いてみると、そこにはただ女が1人椅子に座ってるだけだった。


拍子抜けのような感覚と同時に、何故こんな時間に、この場所へ来たのかという興味も沸いた。


私は職務質問をする警察官のように、声を掛けた。


「失礼?ここで何を?」


驚いたのか少しピクッと顔が動くと、こちらに顔を向けた。


「あ〜夜分遅くにすいません。別に怪しい者では無いですよ」


女は顔をこちらに向けたまま微動だにしない。


「あの〜どうしましたか?」


女を見ると、それはそれは綺麗なものである。


白く長い髪に、触れれば容易く壊れてしまいそうなぐらい細い体、肌は月明かりに照らされ、真珠のように輝きを放っていた。


「美しい」これ以外に、表現出来る言葉が見つからないのだ。


女に見とれていると、唐突に本を差し出してきた。


「読んで」


私に本を手渡すと、目線を本へ落とし、手元にあった本を再び読み始める。


私は黙って従うことにした。


本に興味があるとかではなく、彼女の横顔を見ていたいと、思ったからである。


夜空に光る無数の星と月明かりに照らされながら、私はページをめくった。


本の内容は、最愛の人を愛するあまり四肢を切り落とし、妻を束縛してしまった男と、それをいとおしく感じ微笑む妻の姿を書いた中々マニアックな本である。


妻の腕をノコギリで切り落としながら、如何に互いが美しいかを夫婦が語りあう様は、妙に生々しく興奮を覚える内容であった。


本を読みふけっていると、腕時計の針が1時を指していた。


いくら階級があっても流石に不味いと思い、今度こそ急いで帰る事にした。


女へ別れを告げると、ガス灯が立ち並ぶ大通りを駆け抜けて行った。


基地に戻ると、上官からお叱りを受けた。


「上の人間が、規則を守らなければ、下の者に示しが付かんだろ!」


と、どやされてしまった。


どんなに位が偉くても、就任から1年は一兵卒と同じように規則を遵守するのが、この国の軍隊の伝統だそうだ。


次から絶対に門限は守ろうと、心に決めた。

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