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僅かな犠牲

少し肌寒くなってきたな、と思いつつ椅子に座ってぼんやり空を眺めていた。


別の部隊がやらかしたせいで、特務隊は今世間の皆様から評価が悪い。


信じる神様が違うという理由で迫害され、命からがらこの国に逃げ延びたというのに、この国も私を嫌悪する。


もううんざりだ、誰か俺の頭を撃ってくれないかな。


何て考えていたら、向こうから小太りの男が走ってきて、息を切らしながら助けてくれと迫ってきた。


「何があったんだ?」


「誰かが銃を乱射しまくってるんだ!」


「何だと!直ぐに救援を呼ぶから待ってろ」


警戒所(特務隊が運用する交番の様な場所)の奥にある電話に手を伸ばし、受話器を耳にあてハンドルを回そうとした時、後ろから銃声が聞こえた。


体が言うことを効かず呼吸が出来ない。


後ろを振り返ると、小太りの男が拳銃を構えて、哀れむような目でこちらを見つめていた。


「さっきいい忘れてたんだが、銃を乱射しているのは君達なんだ」


そう言うと私の額に銃を突き付け、


「私は頭を撃ち抜いた」


たった今頭を撃ち抜かれた可哀想な彼は、ありもしないクーデター軍に加担した反逆者となるのだ。


受話器をとり、ハンドルを回して切羽詰まった声で電話交換手に、国防省に繋いでくれと言った。


「ダミアン大将を呼んでくれ特務隊がクーデターを起こしている!そっちからも銃声が聞こえるだろ!」


「ああ、良く聞こえるよアヒム中佐」


「なんだ聞いてらしたんですね」


「なんだとは酷いじゃないか」


この男のこういうところが面倒くさいんだよなぁと思いつつ、話を進めた。


「今そんな事より特務隊の動向について聞きたいのでは?」


「まあねそれでどうなの?」


「話しても大丈夫ですか?この会話、交換手に聞かれたりしないですか?」


「軍の電話は聞かれないよう、普通の電話とは仕組みが違うんだよ、大丈夫だよ」


「そうですかでは報告を、偽の電報で出動した特務隊は現在警官隊が迎撃にあたっています」


「特務隊は今何処に居る?」


「国防省と議事堂に向かって進軍中です。間も無くそちらからも、連中が見えるのではなくて?」


「ああ、良く見えるよ犬に吠えられて、右往左往する可哀想な羊達がね」


「そしてその犬を操っている羊飼いは大将殿と言うことですか」


「まぁ、そういうことだよ」


「そうですか……少し長話し過ぎました。私は竜騎兵隊の所へ向かいます」


「うん、気をつけてね」


電話を切り、警戒所から出ると雪が降りだしていた。


積もらない内に、郊外にある基地までたどり着かなければならないな、と思い先を急いだ。








特務隊第1集団は困惑していた。


首都で非常事態が起きたという電報が届き、いざ来てみれば銃声の一つも響いておらず、かと思えば警察が「武器を捨て降伏セヨ!」と言ってくる始末で訳がわからない。


そして誰かが自棄を起こしたのか知らないが、警官に発砲した結果、警官隊と戦闘が勃発した。


本部に指示を求めようにも、待てど暮らせど繋がらない。


街の広場に集結している間に、警官隊に包囲され孤立している。


突破出来ないことはないが、あくまでも目的は、非常事態の解決であり、警察との交戦ではない。


彼らは必死に考えを巡らせていたが、特務隊が考えを出す前に、攻撃が始まった。


突如空から中隊規模の竜騎兵達が襲い掛かる。


上空から爆薬の入った樽と鉄の矢を投下し、広場を攻撃


樽が爆発し、中に入っていた木片や石が辺りに飛び散り肉へ突き刺さっていき、鉄の矢が彼らをハリネズミへ変貌させた。


辺りは海老のようにピクピク動きながら、悶え苦しむ隊員達で溢れている。


竜騎兵の持つ武器は、敵を戦闘不能にさえすれば、良いと言う考えなので、殺傷力があまりない。


その為、不必要に痛みを与え対象を苦しませる事から、戦場では竜騎兵は目の敵にされ、捕らえられれば、少なくとも楽に死なせてくれる事はなかった。


この攻撃により、特務隊第1集団は総崩れを起こし、戦意喪失多くの隊員が国防軍に投降。


更に別動隊が特務隊本部を抑え、その際特務隊最高指揮官は「やりやがったな」と言う言葉を残し、自決した。


こうして特務隊はクーデター未遂事件と国家反逆罪の疑いで幹部を拘束され、その機能を停止、議会からの要請で特務隊の解体が決まった。


都市オーストで始まったこの動乱は、遠く離れた首都ベダリアで幕を下ろした。


特務隊はその大部分を、国防軍へ吸収され、国防軍はまた新たな時代へ進もうとしていた。


戦争と戦争の間の、平和と言う準備期間を

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