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暗躍

国防軍に入らせろ?なぜ?」


「職が無いんだ、今この国で仕事を探そうとしても精々靴磨き程度の仕事しか見つからない」


「それだけじゃ無いんだろ、わざわざ職の為に特務隊を相手に戦うものか」


「あぁ、まあ何と言うか調べものをしたいんだ」


「調べもの?」「そうだ調べもの」


ケルッキ連隊長は少しの間うつむき考えると、「国防軍に入隊させるのは、事が済んでからだ」と言った。


私は、多分その時とても悪い顔をしていたに違いない




人気の無い街角で私達は、準備を進めていた。


国防軍の制服を着た死体と、暴行によって痣だらけになった女の死体を、今まさにここで銃撃事件が起きた様にするために、せっせと作業している。


筋書きとしては、二人の特務隊員が女性に暴力を振るう。


それをたまたま巡回中だった国防軍の兵士が発見、止めに入ろうする国防軍兵士に特務隊員が逆上し、銃撃というのが大まかなストーリーである。


兵士は、丁度さっき銃を暴発させ自分の腹を撃ち抜いた兵士を、女の方は数日前に暴漢に襲われた女を利用してる。


捕まった暴漢に、証言をすれば逃がしてやると言っておいた。


そして特務隊の制服のボタンを死体の手に握らせ、拳銃を死体に向けて撃つと、急いでその場を離れた。


これで明日の朝には特務隊狩りが始まる。


国内のありとあらゆる場所で特務隊に不満を持った人間が、様々な方法で制裁を加えまいと動き出すだろう。


そして次の朝には、自社のイデオロギーに乗っ取った刺激的な見出しの新聞が、牛乳と一緒に届けられた。


サンレフト紙「一発だけなら誤射かもしれない」


タントライト紙「特務隊の国家反逆を許すな!」


ニュトロ紙「情報が不正確な為今は節度ある行動

を」


人々が新聞を食い入るように読んでる様を見て、私は自らの行いによってもたらされる混乱に、思わず身震いした。


これから私の決断によって、何百何千の人間が死ぬと思うと、自分が恐ろしくなってくるのだ。


だが、やらねばならない。


成さねばこの先、この国は搾取されるだけの準植民地になってしまう。


勝戦国によって行われる難民の押し付けにより、アドラー国の人口は爆発的に増加した。


ハーバーボッシュ法が確立されていないこの世界において、それがいかに危険なのかは容易に創造出来る。


だからやるのだ、やらねばならぬのだ。


私がやることは、溜まりにたまった恨みという燃料へ火種を投げ入れる。


それだけで良い、爆発した燃料はやがて天高くまで狼煙を上げ、それを見た者もまた連鎖的に狼煙を上げる。


この国の新たな時代の幕開けである。


「明日から新聞屋が過労死する程忙しくなるぞ」

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