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内緒話

薬局に着いた私達は、医薬品を探した。


中はやはり荒らされていて、倉庫の中は割れた瓶や薬が散乱していた。


床に落ちている厚紙で出来た箱を拾い上げ、パッケージを見てみると、「デンファレ」と書かれていた。


「なるほど、これが狙いだったのか」


「麻薬の一種で幻覚等を引き起こし、依存性もあるそして安い、これを国が認可して売ってるんだから冗談じゃない」


「俺の弟もこれに頭をやられたよ」


「話してる場合か、さっさと薬を探すぞ」


そして私達は、鞄が多少膨らむ位の医薬品をかき集めた。


急いで協会に戻ろうとした時、外からエンジン音と機関銃の発射音が聞こえてきた。


外を覗いてみると、1台の装甲車が暴徒に向かって、機関銃を撃ちまくっている。


自警団の1人があれは「軍の車両だ!」と叫び喜んでいる。


私は両手を挙げながら、車両にゆっくりと近付くと、助けが必要だと言った。


車の中の軍人は、隣に居た隊長格の男に向かって指示を仰いだ。


その男は少し考えると「案内してくれ」と言ってきた。


そしてこの海軍歩兵隊と陸軍の到着により、事態は急速に沈静化して行った。


その後の調査によれば、この暴動に加担した難民は5000人とされ、都市とまたそれに隣接する住宅地は、その機能を喪失した。


私はこの騒ぎに便乗して、この国の身分証明書を作った。


こういった事態に陥った時、役所の仕事は雑になるものだと、改めて実感した。


そして治安維持の為に国防軍第2師団から「第25連隊」と特務隊の「第5集団」が派遣された。


しかし、この特務隊の連中と来たら、来るなり高圧的な態度で接してくるし、市民の泊まる場所すら不足してると言うのに、「寝床が無い!」とか「飯が不味い!」等と言ってくるのだ。


更にやたらと現場の指揮を執りたがる。


自警団と国防軍、特務隊の人間と町の何処を巡回するか、協議してる時特務隊の指揮官は殆ど寝ていた。


いざ行動しようとした時「国防軍の勝手な行動は許さん」と怒鳴り散らして来たときは、その場にいた全員が呆れていた。


そして私は、毎日の様に起きる国防軍と特務隊のいざこざを尻目に、黙々と自分に与えられた仕事をこなす。


私が仕事をしている時も、特務隊の連中は酒を飲むか女を口説いている。(腹立たしい)


仕事が終われば藁を詰めた枕と、薄い布を被って眠りにつく。


こんな生活が何ヵ月も続いてくると、誰だって嫌気が差してくる。


なので少し相談をしてみる事にした。


特務隊の連中からくすねた蒸留酒を片手に、国防軍の連隊長に合った。


酒は苦手だが毒味の為に連隊長の前で一口飲んだ。


こうして、歴史の教科書の隅っこに刻まれる程度の出来事を、始めようとしていた。


「特務隊の連中…あれどうにかなりませんかね」


「気持ちは分かるよ、でも仕方ないんだよ」


「知っての通り、昔戦争で負けて以来、条約で緊急時を除き国防軍は特務隊と行動を行うって、条約に書かれてしまったんだから」


「そうは言ってもねぇケルッキ連隊長」


「あ〜ケルッキでいいよ」


「あーケルッキ氏、だからと言ってあれを放って置いたら、何をしでかすか分かりませんよ!」


「昨日は17歳の娘に手を出そうとして、流血沙汰になったじゃないですか!」


「しかも、あの組織は外国人や隣国寄りの人間が大勢居るんですよ!組織を解体でもしないとこの国は終わりますよ!」


「皆言ってますよ、嵐が去ったと思ったらまた別の嵐がやって来たって」


「そう責めんでくれ、私だってあの連中にはウンザリしてるんだ」


「組織を解体するにしたって、連中が何か大きな問題でも起こさない限り、国内外に正当性が主張出来ない!」


「なら連中が問題を起こせばいいんだな?」


「ん?それはどういう意味だ?」


「連中にクーデターを起こさせるんですよ、それを国防軍が鎮圧するんです」


「バカな、一体どうやって」


「死体を2,3つ用意して、市民の服と国防軍の服を着せた後に特務隊がやった事にすればいい」


「いたいけな少女に、涙ながらに特務隊がやったと証言させれば」


「そんな単純なやり方で上手く行くとは思えんがな」


「それはどうでしょうね、今や特務隊は誰もが恨む極悪人共の集まりだ」


「そんな奴らが民間人を殺したとするならば、民衆は激怒し、国防軍の人間は復讐に燃え上がるでしょう」


「なるほど、それで誰が実行するんだ」


「前提としては、強硬派で我々の意見に賛同してくれる人間、可能なら5人位は欲しい」


「証言なら、スラブの人間に金を掴ませておけばいい」


「それともう一つ」


「なんだ?」


「私を国防軍の人間にして欲しい」

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