カタコンベ住まいの吸血鬼
地上。ここは地上だけど地下。
吸血鬼。俺は吸血鬼だけどカタコンベ住まい。
どうしてこうなった?
家に吸血鬼狩りの連中が押し入ってきた。
俺達は人間を殺さないのに、人間によって両親は殺された。
俺は一人逃げてきた。
こうしてこうなった。
墓も意外と住み心地は良い。食事はあちらから寄ってくる、ネズミとコウモリの血しか吸わない。
元からそうやって生きてきた。獣の血を吸い、バラの生気を吸いながら、両親と仲睦まじく・・・
もうやめよう。あの二人は死んだのだ。もう蘇る事は無い。心臓に杭打たれたのを俺は見たのだ。
だからと言って、人間を憎んではいない。何故か?多分それは生活をする上で必要なことだったのだろうと思ったからだ。でも理解はできない。何故無害なものを殺すのだろう?
「あーぁ・・・」
ここの所、誰とも喋っていない。俺はおしゃべりが大好きな吸血鬼なのだ。正直言って血よりも喋るほうが好きだ。だからここの生活を良いとは思えても満足はできない。
「だーれかぁ・・・いないよねぇ」
はぁ、とため息をついた時だった。上から何かどたばたとした音が聞こえてきた。・・・人間の足音だ。
気配を探る・・・聖なる「なにか」を持っている匂いがする。
まさか・・・
『見つけたぞ、吸血鬼。お前にはここで死んでもらう。おとなしくしてろよな』
やっぱり・・・
「ちょ、ちょっと待ってよ!俺はここ近くに住む住人に危害を与えたことはない。血だって獣の血しか吸わない、だからと言って家畜を襲ったこともない。無害に生きてきたんだ。どうして死ななきゃならないの?」
『なぜって?それは・・・』
『お前が人以外の何かだからだよ。』
『吸血鬼。人間より強い物・・・人外はな、たとえどんなに善良だろうがこの世に居ちゃいけないんだ。それが人間様の世界の理なんだ。』
『それにお前、うわさに聞くはぐれ吸血鬼だろ?親を殺されてさぞ人間が憎いだろう。』
「俺は人間を憎くなんか思ってな」
『今はそうでもいずれ思うのさ。心を持っているお前はいつかそう思うのさ』
『だから、いま弱いうちに。ここで、殺すんだ。』
そんな馬鹿な。人間以外はこの世に居ちゃいけないなんて、そんな暴論が通ってたまるか。
俺たちにだって日々を良く暮らす権利がある。神は人間のそれを認める代わりに、俺たちのそれも認めているはずだ。なのにこの人間は神の理を覆しやがったのだ。ちょっと高慢すぎやしないか?
なんてやつ。話が通じなさそうだ。逃げるしかない
俺は素早く霧となって、男の横を通り去った
『あっ・・・おい待て!』
だーれが待つもんか!そう思いながら俺は全速力で駆け巡るのだ。次の暮らしの新天地へと・・・。
[name アトッシュ]
[吸血鬼の人外 親を人間に殺されたが憎んではいない。]