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サクラ舞う季節  作者: なっかー
第1章 離別
3/15

§2 巣立ち(2)

 

 1



 そんな僕の思いとは裏腹に、式は何事もなく始まった。


 そして、あっという間に時は流れていった。


 「開式の辞!!」

 「ただいまより、第六十八回卒業式を挙行いたします。」



 「国歌斉唱!!」

 「君~が~代~は~千~代~に~八~千~代~に~……」



 「学校長式辞!!」

 「卒業生の皆さん、本日はご卒業おめでとうございます。これまでの三年間……」



 「祝辞!!」

 「卒業生の皆さん、本日はご卒業おめでとうございます。さて……」



 「祝電披露!!」

 「皆さんの卒業をお祝いして、今年もたくさんの祝電をいただいております。一階の廊下に掲示してありますので……」




 「卒業証書授与!!」

(ここまでは早いんだけどなぁ……これが長くて退屈なんだよなぁ……)

「第三学年一組!! 赤井一郎!」

「はい!」

(すごく緊張する……というか、なんでよりによって僕が最初なのよ……)


 「おめでとうございます」

 ――校長っておめでとう一つでも、すごい気迫があるな……あー、今はそんなこと考えたらダメ! 目の前に集中しろ!! 自分!! …………で、ええと……なんて言えばいいんだっけ……。

 そんなことを脳をフル回転させて考えていた。


 「ありがとうございます」

これが1秒の沈黙の後にとっさにでた言葉だった。

 ――これで良かったみたいだ……。

 そう思った証拠に、ちゃんと次の人の名前が呼ばれている。


 「石川寺男」

 次の人の名前を聞きながら体育館のステージを降りた。

 緊張した……。僕を締めつけていた束縛から解放された。


 ……このあとも順調だ。つまり、あの応答で大丈夫だったということかな。でも、間違っていても指摘できる雰囲気じゃないもんなぁ。後で誰かに何か言われるかも……。あぁー嫌だなぁ。やっぱりこの学校嫌だなぁ。

 ん? もしかして、僕、勘違いしてないか?





 「巣立ちの言葉!!」

 「卒業生一同、今日のこの良き日に……」



 「卒業生合唱!!」

 「あぁあの町で……」




 多分、歌の中盤くらいだったと思う。貴子は崩れ落ちた。まるで北極海の氷山のように。豪快に。

 素早く先生達が駆けつける。卒業式では毎年、おそらく一、二回はあることなので、慣れた手つきだ。

 「大丈夫?」

 先生が不安そうに聞く中、歌は無情にも止まることなく続いていく。

 「大丈夫です」

と貴子は答えた。そして、すぐに立ち上がり、再び歌い始めた。

 僕はすぐ隣で起きた出来事に動揺していた。いきなり隣で轟音とともに人が崩れたらそりぁびっくりするに決まっている。

 そしてその隣の人は鼻声になりながらも続きを歌っている。


 その後は特に大した事件はなかった。




 「校歌!!」



 「閉式の辞!!」



 「卒業生退場!!!」



 ――長かった……。

それが正直な感想だった。

 一番目に体育館から出ることができた。緊張から本当に解放された。自由の身になった。中学校という束縛からも。

 でも、何だかんだ言って緊張したってことは、やっぱり思い出に残る良い中学生活だったということだ。そして、中学校生活での出来事を色々と思い出した。良いことも悪いこともあった。






 2



 式が終わった後は、適当なお別れ会がある。これが、この学校での最後の思い出になる。



 会はイベント係が司会となってすすむ。大体、流れは以下のような感じになる。


 イベント係の言葉

 レクリエーション

 歌

 先生への感謝の言葉&花束贈呈式

 先生の言葉

 写真撮影

 フリータイム!!



 しばらくして、ようやく始まった。


 「皆さん、三年間ありがとうございました。今日は皆さんで最後の思い出を作りましょう。よろしくお願いします」

というイベント係の言葉があった。


 ただし、レクリエーションの間、貴子の表情が晴れることは決してなかった。

 歌は何とか辛うじて歌えているようだ。明里や真とも視線が合う。全員、貴子のことがとても心配のようだ。おそらく、倒れたことを引きずっているのだろうなぁ。人一倍責任感が強いから、仕方ないのかな。でも、良いリーダーって一度崩れると脆いということを痛感する。クラスじゅうがやはり、心配している。


 そんな中、僕は合唱コンクールのことを思い出した。



因みに国歌の著作権は既に消滅しています。


2017/07/04 一訂

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