第十ニ話 圧倒的強者襲来
よし、なんとか五月中に書けた! えっ? 明らかに内容が薄いじゃねぇかjk?
知っているとも!(最悪の開き直り)
とまぁ、ふざけるのはこのぐらいにして、第十二話です。誤字、脱字が御座いましたらご報告をお願いします。
いきなり現れて襲い掛かってきた謎のプレイヤー。
猛然とこちらに突進し、その勢いのまま両手に構えたハルバートを突き出して来る。狙いは俺の喉元――――一撃で頸を貫くつもりだ。
「ぐっ……!」
直線的で単純な攻撃であるが、だからこそ一切の無駄がない最速の一撃であった。一瞬の差で大楯による防御が間に合い命拾いしたが、下手すれば――――直感で相手の攻撃コースを予測していなければ、今の一撃で即試合終了となってしまっていたかも知れない。
安堵する暇は無い。そんな時間を相手が待つはずが無い。直ぐ様反撃に移ろうと両刃剣を振り上げて――――。
「なに……!?」
――――目の前から緑の騎士が消失している事に気が付いた。目の前に迫っていたはずの敵が忽然と姿を消したのだ。
確かに大楯を前面に構えて攻撃を受け止めた時に、一瞬だけ視界より相手の姿を外してしまった。だが、そのわずかな時間で俺の前から姿を消したというのか……!?
(どこに行った……!?)
一度下がってみるか? 目で探すか? 否、そんな事をしている間にやられてしまうだろう。
相手は何も魔法でワープしたり透明になったわけでは無いだろう。《魔法使い型》ならともかく《騎士型》である緑の騎士が、そんな魔法を覚えているわけが無いのだ。相手はあくまで俺の視界より姿を外したに過ぎない。俺の死角に入り込んだだけである。
問題は真下か、右か、左か。どの死角に入り込んだのか。
「――――――――!!」
刹那で考え、刹那で行動する。
振り上げた両刃剣を俺は、右方向にへと降り下ろした。
視界より映らない場所にて聞こえる、金属同士がぶつかり合うカン高い音響。そして右腕に伝搬する凄まじい衝撃。
それが、相手が振り切ろうとしたハルバートに両刃剣がぶつかった音と衝撃だと気付き、次いで相手の攻撃を事前に止める事に成功したのだと気が付いた。
「なっ――――!?」
「しゃあっ!」
緑の騎士が驚いて動きを止めた。俺はその隙を見逃さずに、緑の騎士のわき腹に向けて蹴りを放った。中学時代より培ってきた自慢のミドルキックだ。
「に――――!!」
が、恐るべき事に緑の騎士も尋常じゃない反射速度で後ろに跳んで、渾身のミドルキックを回避したのだ。攻撃が止めたタイミングで、隙を逃さずに反撃したというのに、まさか避け切るとは思わなかった。
互いに距離を置き、仕切り直す。ただし今度は緑の騎士を視界から外さないように大楯を構えずに、両刃剣を前にして威嚇するように攻撃準備をする。
「…………驚いたよ。まさかあの一撃を防ぐとはな。君は今までのプレイヤー達とは格が違うようだ」
「はっ! 俺のスーパーキックをあっさりと避けておいて、どの口が言ってんだ!!」
今の攻防で分かった事がある。この男、相当に強い。それもVRゲームに慣れている強さだとか、ステータスが高いだとかではなく、純粋に戦い慣れている強さだ。リアルで何かしらの武術を習っているのか、俺のように喧嘩を経験した事でもあるのだろうか。
「それにしても……良くさっきの攻撃を防ぐ事が出来たな。完全に不意を突いた上に死角から攻撃したはずだったんだが……」
「こちとら不意討ち闇討ちは腐る程に経験した身でな。なんとなくカンで剣を降ったら大当たりってわけだ」
一応、俺から見て右方向の死角に入ったのではないか、という予測を立ててはいた。左手には大楯があってハルバートを振る際に邪魔になるだろうし、真下は両刃剣を元々降り下ろそうとしていた位置だ。左側でも真下でも緑の騎士から見れば障害物だらけの死角になっていたのだ。ならば、消去法で右側の死角に入り込んだと思ったのである。
とは言え、あの刹那の間にそこまで考えていたわけでは無い。ある程度の推測の後に自身の直感を信じて両刃剣を振るっただけの話である。
もし直感が外れていたら、こうして相対する事無くデスペナルティを受ける羽目になっていただろう。そう思うと背筋がゾッとし、大楯と両刃剣を握る手に力が入った。
「凄いな……! どうやら君は当りのようだ。まだまだ付き合ってもらうぞ……!」
「俺はもう帰りたいんですがね! このサイコ野郎!」
緑の騎士はまだやる気らしい。再度ハルバートを構えて突進してきた。先程と同じように一直線に突き出すつもりか――――?
いや、そんな事は無い。先の攻防で失敗した方法を何度も繰り返す馬鹿がどこにいる。ましては相手はAIではなく人間なのだ。失敗を糧に次に繋げていく学習する生き物だ。
「しっ――――!」
緑の騎士がハルバートを振るう。狙いは俺の喉元。ここまでは先程と同じ。
俺が大楯で弾く。次は相手の動きを見逃さないように、視界にしっかりと収めておく。次はどのように動くのか、どのように攻撃するつもりなのか――――?
「はぁ!」
緑の騎士はハルバートを引いて、再度突き出して来た。異常な引きと突きの早さだ。無意味に武器を振り回しているわけでは無い、完璧にハルバートを操り切っているからこその素早い動きだ。
俺は大楯を構え続けて攻撃を防ぐ――――という事はしない。大楯を前面に構えているだけで視界が塞がれる。そうなれば元の木阿弥だ。
緑の騎士の攻撃を防ぐには防御に徹しているだけでは駄目だ。どこかで攻めないといけない。そして、その瞬間こそが今なのだ。
俺は相手の突き出しに合わせて一歩前に出る。その際に身体を半身にして、被弾面積を少なくする。突き出しという攻撃は素早いが一点にしか攻撃出来ない以上は、その一点を小さくされると当てるのが難しくなるのだ。
案の定、俺の脇腹を通り過ぎるようにハルバートが流れていく。ニ撃目も回避する事が出来た。
「よし、喰らえ!」
緑の騎士に一気に近付く。ハルバートの特性上、近距離の振り回しはかなり苦手の筈だ。こちらはその弱点を容赦無く突いて、インファイトで攻め立ててやろう。
両刃剣を振るおうとする。狙いは相手の左脇下。最も防ぎ難い位置を斬りつけてやる。
そう思っていたのだが――――。
「甘いぞ……!」
緑の騎士はハルバート引いて攻撃に備えようとせず、なんと己の武器を手放したのだ。そのままフリーになった右手で俺の顎を、左手で俺の右肩を掴んで来た。
「うぐっ!?」
「ふっ――――!」
そして緑の騎士大きく一歩踏み込み、左の脚を俺の脚に引っかけて右手と左手を突き出した。脚の重心が崩れ、容易に傾いてしまう俺の身体。この技は……。
「な、投げ技だと!?」
俺も武器を投げたりしたことがあるが、このような達人が武器を手放すなんて思ってもみなかった。武器の扱いだけでなく、徒手空拳での戦いも出来るというのか、この男は。
呆気なく地面に叩き付けられてしまう。突然の投げ技に対応仕切れずに、受け身を取る事すら出来なかった。後頭部と背中に受けた衝撃に硬直し、息が詰まり意識が少しの間だけ飛んでしまった。
「がはっ…………!!」
不味い、と思った時には遅かった。緑の騎士の追撃が腹部に叩き込まれる。手放したハルバートをいつの間にか回収して、容赦無く俺に突き刺したのだ。
「こ、の……!」
ハルバートが身体に突き刺さっている以上は激しく動く事は出来ない。だが、幸いにも右手にはまだ両刃剣が残っている。
両刃剣を振るう。緑の騎士は直ぐに俺の上より跳び退いて回避した。攻撃を当てる事は出来なかったが、マウントポジションを取られ続けてしまう展開は避ける事が出来た。俺も直ぐに飛び起きて緑の騎士に備える。
(くそ……けっこうダメージがでかいな……)
自分の残りHPを確認する。投げのダメージとハルバートを突き立てられたダメージ、ニ回分の攻撃を持ってして俺のHPは三割近く削られていた。
防御力の高い俺でこのダメージ量。相手の攻撃力の値は相当に高いのだろう。職業熟練度も向こうの方が上なのかもしれない。
「……どうした? 君の力はこんなものじゃないだろう? もっと僕を楽しませてくれ……!」
「うるせぇっつーの! ちくしょう……!」
緑の騎士は俺に対して何かしらの期待をしているようだが、それに応えるのはかなり難しいだろう。明らかにあちらの方がステータス的にも、戦闘経験的にも、俺を遥かに超えた強さを持っている。こうしてまともに相対出来ているのが奇跡な程だ。
(正面から殴り合うのは自殺行為だ……! かと言って逃げるのも癪だし……どう立ち回るか……)
格上相手との一対一は何度も経験した事があるが、それはリアルの話だ。このVRゲーム内ではステータスやらシステムの関係上、ジャイアントキリングがし難いのだ。この緑の騎士に勝つ為には如何なる方法を取るべきかーーーー。
「来ないのか? ならこちらから行こう……!」
「いや、ゆっくりしといて下さい!」
緑の騎士が急かして来るので押し留める。考える時間ぐらいは欲しいものだ。ただでさえ緑の騎士の方が強いのに、戦法を考える余裕すらくれないのは強者としてどうかと思うぞ。
「ん……? 君から来るのか? ならゆっくりするとしよう」
本当に待つのもどうかと思うが。相手が嫌に律儀で良かった。
「……ふぅーー」
大きく深呼吸をして気を落ち着ける。そして、再び相手を隈無く観察する。
どうやらこの緑の騎士は、ただ単純に闘争を愉しみたいプレイヤー――――バトルジャンキーのようだ。こちらに猶予を与えたり、わざわざ戦闘を中断してまで会話をしてくる事から、勝ちに拘っている訳では無く戦闘過程を重視するプレイヤーなのだと推測できる。
異常に強いバトルジャンキー。所謂、余りにも強過ぎて何事にも楽しみを持てなくなった、虚無主義者の一種だろうか。それとも高い戦闘能力を存分に生かせるVRゲームの中で、ひたすらにオレツエーをしたい構ってちゃんなだけだろうか。
(どちらにせよ面倒なプレイヤーだな……。この間の自己中暴言プレイヤーと比べたらマシだろうが、他人に掛かる迷惑を考えてねぇ時点でアウトだっつーの!)
こういうプレイヤーは好きにはなれない。人様に迷惑を掛けてしまうのは、誰だってしてしまう事だからまだ許せる。だが、意図して他人を邪魔したり、自分の欲望を満たす為に他人に迷惑を掛ける奴は許せない。
「野郎……ぜっっってぇぶっ飛ばしてやる……!」
「良い敵意と戦意だ……。どんどん怒るといい。存分に君の力を振るえ……!」
あちらさんもぶっ飛ばされるのは了承済みのようだ。潔い態度ではあるが、手加減してやる理由にはならない。
俺の方が格下で、むしろぶっ飛ばされてしまう可能性が高いのだが、関係は無い。何が何でもこの男を倒して謝らせるのだ……!
俺は緑の騎士の周囲を回るように走り始める。それも徐々に距離を詰めていくように、相手を中心として渦巻きを描くようにだ。少しずつ確実に、されど相手が踏み込んで攻撃出来る間合いには入らないように、緑の騎士へと近付いていく。
「――――ほぅ?」
緑の騎士は面白いものを見たとでも言わんばかりに眼を輝かせた。俺がこの後にどのような行動を取るのか理解したのであろうか。
緑の騎士は右足を軸にして左足を擦るように、俺の動きに合わせて回転している。俺を正面に捉え続けて、ハルバートでいつでも迎撃できるように構え続けているのだ――――。
「しっ!」
俺は急加速する。突然発射されたロケット花火の如く地面を蹴り、爆発的な加速を持って緑の騎士の側面に回り込みを仕掛ける。
だが、緑の騎士は慌てずに回転のスピードを上げて、俺の加速に付いて来た。側面に回り込む事が出来ずに、結局は相手の真正面に捉えられたままであった。
「そこだ!」
だがそれで良い。俺も側面に回り込めるとは露ほどにも思っていなかったのだ。俺が急加速したのには別の狙いがあるのだ。
それは、相手が少しでも重心を崩す事。その瞬間を狙っていた。どのような達人であれ、身体の向きを急に変える時には大なり小なり重心が崩れるものだ。それが一秒に満たない時間であっても、隙である事には変わりはない。
俺は再度、急加速を敢行した。ただし、今度の進行方向は緑の騎士へ向けて、だ。重心が崩れた瞬間を狙って、緑の騎士へと接近したのである。
だが、その程度の小細工で倒せる相手ではない。
「読めていたぞ、その攻撃を!」
緑の騎士は俺の接近に合わせてハルバートを横薙ぎに振るっていた。完全なタイミングである。回転による重心移動が終わる前から――――いや、始まる前からハルバートによる横薙ぎを準備していたのだ。俺が急加速からの急加速で接近するのを見越して、既に行動を開始していたのだ。
俺の頚を跳ねんと刃が迫る。ハルバートの重さが乗った鋭い一撃は、狙い定められた場所に吸い込まれていき――――。
「引っ掛かったな、アホが!!」
「なに――――!!?」
見事に空振った。
俺の真上を通り過ぎていく凶刃。一撃でこちらの命を狩り尽くすであろう死神の鎌は、その役割を果たせずに無意味に振るわれた。
緑の騎士は眼を見開いた。俺の予想外の行動と結果に驚愕したのだ。
俺がもし普通にハルバートを回避していたのなら、緑の騎士は驚かずに対応していたであろう。頭を下げて回避したのなら蹴り上げて追撃を、接近を中断して急停止したのなら踏み込んで投げ技を、更に一歩近付いて来たのなら身を引いていたのだろう。
だが、俺はこのような男に下げる頭は持っていない。臆して止まる事も破れかぶれに突っ込むような真似もしない。
では何をしたかと言えば、俺は奴を見下しただけだ。ただし、むしろ見上げてるのではないかと思う程に上半身を反らしてだが。
「なんと見事な上体反らし……!」
緑の騎士が俺の頚を跳ねようとしているのは分かっていた。奴から仕掛ける時は、一回目も二回目も俺の頚を狙ってきていたからだ。故に攻撃が上半身の更に上部に来ることが分かっていれば、思い切り身体を反らして回避するのは難しくはない。
俺は中学の時はとある技を相手に叩き込む為に、何度も上体反らしをしてきたのだ。この土壇場であってもスムーズに上体反らしが行えるぐらいには数をこなしている。だからこそ単純な回避方法ではなくて、この方法を選んだのである。
そして――――この体勢だからこそ叩き込める一撃がある。上体を反らした状態から戻る勢いを利用して、相手の顔面に重い一撃を与える必殺技が。
それは――――。
「どっしゃらあああああい!!」
「がっ!?」
名付けて渾身のヘッドバット。つまり頭突きである。
俺のヘルムと緑の騎士のヘルムが衝突し、凄まじい破壊音が生み出される。普通ならば互いに頭をヘルムで防御しているので、顔面に頭突きを食らおうが平気なはずなのだが、俺が仕掛けた頭突きには攻撃判定が発生している。つまり、緑の騎士には十分な衝撃とダメージが発生しているのだ。
ヘルム越しとは言え顔面に攻撃を食らい、流石に怯んで体勢を崩してしまう緑の騎士。その隙を俺は見逃さない。
右手の両刃剣を振るう――――なんて暇は無い。素早く次の一撃を与えなければ、緑の騎士は直ぐに立ち直ってしまうだろう。だから俺は両刃剣を握り締めたまま、その拳を緑の騎士の顎へと放った。
「オラオラオラオラオラオラ! ついでにオラァ!」
「がふっ…………!!」
それだけでは無い。時に大楯で殴り、時に膝蹴りを叩き込み、時に再度頭突きを食らわせる。攻撃に攻撃を重ねて一切の反撃は許さない。それこそが俺の一対一における戦法であるのだ。
緑の騎士は次から次に放たれる攻撃に対応し切れてはいない。チャンスは来た。ここで一気にダメージを稼ぎ、緑の騎士に止めを刺してやる。
「君が! 泣くまで! 殴るのを止め――――」
「――――これ以上は…………させるか!」
「うおっ!?」
しかし、予想以上に早く緑の騎士は立ち直った。俺が大楯で殴ろうとしたタイミングで、ローキックを繰り出して足元を払ってきたのだ。脚に衝撃を受けて身を崩してしまう。
更に緑の騎士はハルバートを持ち変えて、柄の部分を突き出したのだ。腹部を押し出されるように突かれてしまい、後方に吹き飛ばされてしまった。不様に地面にへと転がされてしまう。
「くそっ! やっぱり簡単にはいかねぇか……!」
俺は素早く立ち上がり、相手の追撃に備えて両刃剣を構える。
緑の騎士はハルバートを持ち変え直して、再度俺へ突進してきた。次は俺の頚では無く、細かく当てるように腕やら脚やら腹部とかを連続で刺し続けてきた。
「うっ! くっ! おっ! ちっ! 早いな、やっぱ……!」
大楯と両刃剣を駆使して捌き続けるが、やはりハルバートの振るい方が異様に早い。流れるようにハルバートを突いては引き、大量の蜂のように絶え間無く刺して来る。対応が間に合わずに何度も被弾してしまう。
(やべぇ……! このままじゃ普通に押し負ける! 強引にでも押し返さねぇと……!)
反撃は愚か防御すらままならない程の怒濤の連撃。防御に徹していても勝ち目が無いと判断した俺は、被弾を覚悟して踏み出し、身体ごと大楯を突き出して緑の騎士を弾き飛ばそうとした。
「甘いぞ!」
しかし緑の騎士には通用しなかった。こちらの勢いを反らしながら横に移動し、俺の弾き飛ばしを難なく回避したのだ。
そして前に踏み出して隙を晒した俺に、容赦無くハルバートの一撃が与えられる。横薙ぎの全力の一閃が俺の身体を斬り裂く。
「うおわぁ!!」
その威力、衝撃は正に遥か天上のもの。残り六割あった俺のHPを一気に消し飛ばし、残り二割という致命的な所にまで追い込んだのだ。
強烈な斬撃に体勢を崩してしまう。そして緑の騎士は、一切の油断も迷いも無く、止めの一撃を降り下ろさんとハルバートを頭上に持ち上げた。
「――――見事だった。君は間違い無く、僕が《神世界アマデウス》で討ち取ってきた戦士達の中で――――最強の存在だった」
それは称賛の言葉だった。こちらの健闘を讃え、惜しみ無く贈る餞別の言葉だ。
自身の勝利が確定した時に、ぬけぬけと言い放たれる勝者の言葉だった。最早戦いは終わりだと言わんばかりに、緑の騎士は別れの言葉を口に出したのだ。
そして、体勢を崩した俺には、その言葉に抗う術は無く。今から放たれるであろう絶命の一撃を避ける事も防ぐ事も出来ず、その腹立たしい称賛を受ける事しか許されてない。
「…………くそ」
最期にそう呟くのが精一杯だった。
次の瞬間には俺の脳天目掛けて、絶殺の刃が降り下ろされて。
〈You are dead〉
屈辱の単語が、敗北を示すメッセージが表示された。
格上殺しを成功させる事もなく、奇跡の逆転を起こす事もなく、俺は順当に敗北を喫した。ただ、その事実が目の前に映し出され続けたのであった。
次回の《神世界アマデウス》は~?
緑の騎士に敗北したナギ。屈辱感に苛まされる中で、彼はムサシによりとある提案を受ける。今よりもっと強くなる為にするべき事とは一体……!?
お楽しみにしていただければ幸いです……。