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神世界アマデウス  作者: 三神ノブノブ
第一章 神世界へようこそ
12/25

第十一話 東の茸の森・その三

 遅れてしまい、申し訳ありません。第十一話、お待たせしました。今回でボス戦は終了ですが……?

 誤字、脱字がございましたら、ご報告をお願いします。



 日光すら遮る程に生い茂った森の中。

 特殊な茸が撒き散らす光る胞子によって、視界を確保できる深い闇の中。

 その最深部にて、巨大な猪の王と俺達の戦いが続いていた。


「マリー! MP回復は余裕のある時にじゃんじゃんしとけ! 出し惜しみはするな!」


「はい……! ナギさんもHPの残量に気を付けて……!」


『ブガオオオオ!!』


 〈ボアガッシュ〉が大きく体を持ち上げる。大樹の幹と錯覚してしまいそうな程に太い前足が、俺の頭上より降り注ぐ。

 俺はバックステップでその場より退避した。次の瞬間、〈ボアガッシュ〉が前足を地面に叩き付けて周囲を吹き飛ばす衝撃波を発生させた。


「ぐっ……!」


 大楯を構えて衝撃波から身体を守る。衝撃波自体のダメージは少なかったようで、大したダメージを受ける事なく防ぎ切れた。


「もう少しですよ、ナギさん……! ボスのHPが四分の一を切りました……!」


「背中の茸も燃やし尽くしたし、いよいよ大詰めってとこか……!」


 〈ボアガッシュ〉の追撃――牙を振り回しつつ、ゆっくりと近付いて来る攻撃を大楯で弾きながら、俺は慎重に反撃の隙を窺う。最早〈ボアガッシュ〉は死に体ではあるが、ここで油断してやられてしまっては全てが台無しになってしまう。笑い話にすらならないので、一切の驕りや慢心を消して戦いを続ける。


『業火よ、穿て!』


『ゴガアアアアアアアアア!!』


 マリーも着実に堅実に、遠距離からの魔法攻撃を行っている。背中の茸を破壊し終わり、次は武器攻撃ではダメージを与え辛い脚部を集中して狙っている。脚部ダメージによる転倒を誘う為だ。


「オラ! 鼻っ面に一発! 続けてもうイッパァァァツ!」


 そして俺はマリーが攻撃対象にならないように急所にひたすらダメージを与えつつ、大楯と回避を駆使して〈ボアガッシュ〉の猛攻を凌いでいる。《狂想化》に移行してから攻撃が激しくなっているが、やることは何も変わらない。ひたすら攻撃をこちらにへと向けさせるだけである。


『ゴォォォォォ…………!』


 しかし、〈ボアガッシュ〉の猛攻は留まることを知らない。四肢を踏ん張り、大きく息を吸い込み始めたのだ。体全体が膨張していき、更にその巨体を膨らませていく。


「ッ! 来るぞマリー!」


「はい……!」


 なりふりは構わない。構っている暇は無い。全力で逃げなければ一瞬でHPの全てを持っていかれてしまう。恐らくは〈ボアガッシュ〉が使用する技の中でも最大級のものが、今放たれんとする。

 俺とマリーはなるべく〈ボアガッシュ〉より距離を取る。この技が放たれるのはこれで三回目であるが、先の二回から考えても離れ過ぎという事は無いであろう。それだけ攻撃範囲が広い大技なのだ。


『――――――――!!』


 そして〈ボアガッシュ〉の瞳が輝くと同時に、周囲の音が消えた。

 否、〈ボアガッシュ〉の全身から放たれる強烈な衝撃波により、空気も音も根こそぎ吹き飛ばされて、こちらまで届いていないのだ。

 この空き地の全てを消し飛ばさんとする程の衝撃波の正体――それは〈ボアガッシュ〉の毛穴より噴出され続ける”風“である。先程吸い込んだ大量の空気を、どういう原理かは知らないが(というよりゲームの中で原理とか言っても仕方が無い)全身の毛穴より噴出して、周囲を薙ぎ払っているのだ。


 それは正に爆発。長時間続く風の爆発であった。


「い――――いよっしゃ! ボス部屋の端っこギリギリなら届かない! 攻略サイトの情報通りだな!」


「今の内に回復しますね……!」


 だが、どんな大技にも弱点はある。一撃でも喰らえば即死は免れないような攻撃でも、未然に防ぐ事や回避する事は出来るのだ。

 この〈ボアガッシュ〉の必殺技も例外では無い。攻撃をキャンセルさせる事は不可能だが、タメが長いので体勢を整える時間が取れる。余裕を持って回避行動に移れるのだ。

 加えて、攻撃範囲もフィールド全域には及ばず、例え〈ボアガッシュ〉がボス部屋の中心に陣取っていたとしても端っこの方には届かないのだ。《騎士型(ナイトスタイル)》の鈍足であっても余裕で逃げ切る事が出来るタメの長さなので、事前にこの攻撃について知っていれば回避するのは難しい話では無い。


(でも、やっぱり攻略情報に頼らねぇとクリアー出来ないってのは悔しいな…………)


 しかし、逆に言えばβ版をプレイしたプレイヤー達は、初見でこの必殺技を受けていた訳である。攻略サイトに情報が載る前に〈ボアガッシュ〉に挑んだプレイヤーもいるはずだ。

 何度もボスにやられてデスしたのかも知れない。案外初見で討伐出来た者もいたかも知れない。だが、どちらにせよ独力で――自ら得た情報だけで戦い、自らの信じた武具や仲間と共に勝ったのだろう。その時の達成感は半端なものでは無かったはずである。

 故にこそ、俺は悔しいと思い、憧れを抱く。自分が選んだ道とはいえ、他のプレイヤーに遅れを取ってしまい、こうして攻略サイトという情報源に頼らなければならない状況下に、少し歯噛みをしてしまう。別に他人に頼るのは悪い事では無いのだが、それでも自分が情けなく思えて来るのだ。


(……いずれ追い付いてやる。こいつをぶっ倒して、俺も最前線で戦えるプレイヤーになるんだ……!)


 吹き荒れる暴風を前に拳を握り締める。今はこの風にすら立ち向かう術すら無く、暴風が止むまで身を伏せるしかない。それが自信の現状であり、自分の実力であるからだ。

 いつか必ず、最前線で華々しく戦っている集団に追い付いてやろう。負けたままでは、引き離されたままでは気が済まないのだ。


「――――! 風が止みます!」


「行くぞ……! そろそろ決着(ケリ)といこうか! 〈ボアガッシュ〉!」


 俺は決意も新たに〈ボアガッシュ〉にへと走り出す。今だ第一のダンジョンに挑む身だが、それもそろそろ終わりだ。敵は満身創痍、ここでHPを削り切り討伐したい。


『ゴアアアアアア!!』


 暴風攻撃を終了した〈ボアガッシュ〉が俺に視線を向ける。巨大な牙を剥いて俺に襲い掛かる。一撃を持ってしてこちらを仕留めんと、渾身の力を込めた牙による刺突を仕掛ける。

 

「オオオオオオオオオオッッ!!」


 俺は牙の刺突を大楯で弾いて、更に一歩踏み込む。幾度も繰り返して来た顔面への攻撃を繰り出す。額に、鼻に、口に、両刃剣を何度も突き刺して大ダメージを狙う。


『ゴギャアアアアアアア!!』


 〈ボアガッシュ〉は痛みに叫び声を上げながらも、その勢いを緩めるような真似はしない。前足を大きく振り上げて俺を押し潰さんとする。先程も繰り出した衝撃波攻撃だ。


「させませんよ……! 『業火よ、穿て!』」


『ゴッ!?』


 だが、マリーが後ろ足に魔法を当てた事で〈ボアガッシュ〉の攻撃は中断された。それどころか不安定な体勢で身体を支えていたせいか、そのまま横倒しになった。脚部にダメージが溜まった事による転倒だ。

 大きな隙。最大のチャンス。転倒から回復する前に〈ボアガッシュ〉を倒し切る事が出来る――――と俺は判断した。


「一気に勝負を決めるぞ! とにかく攻撃だあぁぁぁぁ!!」


「は……はい……!」


 両刃剣をとにかく振り回す。〈ボアガッシュ〉の顔面を斬り刻む。ゲームの世界であっても少し論理的にどうか、というぐらいに執拗かつ念入りに斬撃を食らわせる。

 マリーもMPを使い切る勢いで猛烈な魔法攻撃を浴びせ掛ける。戦闘を開始した当初から数えれば、余裕で森一つを灰塵に還す程の量の炎を〈ボアガッシュ〉に食らわせている。そろそろ本当に巨大なポークステーキが出来てしまうんではないかと思うぐらいには、〈ボアガッシュ〉の身体を焼き焦がしているだろう。


『ゴアアアアアア…………!』


 だが――――〈ボアガッシュ〉は大暴れする。その身体を起こそうともがき続ける。顔面を斬り刻まれようとも、身体を膨大な炎に包まれようとも、一切怯む事無く、衰える事無く、暴れ続ける。

 もうHPは底に尽こうとしているのに、まるで構う事など無く十全の力で動き続ける。死にかけているとは思えない元気っぷりだ。


「ぐっ……! いくらリアルに似せて作ってあっても、ここら辺はゲームだな。致命傷を受けていても、体力が無くなっても、死ぬまで一切の衰えが見えないなんて……」


 大暴れする〈ボアガッシュ〉に近付くのは難しい。とにかく滅茶苦茶に牙や角を振り回すからだ。これで背中の茸も存在していたら、胞子もばらまかれていたのだから、どうしようも無かった。手早く破壊してくれたマリーに感謝しなければ。

 俺は〈ボアガッシュ〉の牙や角を避け、大楯で防ぎながら、なおも両刃剣を振るい続ける。もう少しなのだ、もう少しで倒せるのだ。ここで怯んで後ろに退いてしまっては、せっかくの好機が無駄に終わってしまう。


「だぁらあああああ!!」


 叫ぶ。己を奮い起たせる為に、渾身の力を込める為に、叫んで気合いを入れる。これ程までの雄叫びを上げたのは、泉堂中学校の不良達と大喧嘩をした時以来だ。圧倒的な戦力差に怯んでしまわないように自分自身を鼓舞した時の事を思い出した。

 両刃剣を握る手に力を込める。一発一撃に自分の全力を乗せて叩き付ける。構えだの太刀筋だの、余計な事は考えずに、ひたすらに攻撃を続ける。どうせ俺は剣に関してはド素人だ。ならば技量だとか技術だとかに任せるより、己の底力を信じて両刃剣を振るうのが最適なのだ。


 〈ボアガッシュ〉がもがくのを止め、両足を地面にどっしりと着けた。転倒状態から回復しようとしているのだ。もう数秒で〈ボアガッシュ〉は再び猛攻を仕掛けて来るようになるだろう。

 その前に決着を付ける――――!!


「【クロス・ブレイド】!!」


 やはり、止めは【必殺技】で着けるべきであろう。残りの数秒という限られた時間の中で〈ボアガッシュ〉を討伐する為には、一瞬にして大ダメージを与える攻撃が必要だった。

 本来ならば【クロス・ブレイド】は前方に密集したモンスターをまとめて斬り払う技である。通常攻撃の数倍のダメージを叩き出す事が出来るのだが、反面発動後の反動が大きく、一定時間は――おおよそ一呼吸分の時間程は動く事ができなくなってしまう。雑魚戦ならともかく、ボス戦で使うにはリスクが高い【必殺技】だ。

 だが、最後の一撃ならば問題ない。この一撃で戦闘が終了するのならば、発動後の硬直を気にせず使用する事が出来る。


 第一の斬撃。左下より右上に向かっての切り上げ。〈ボアガッシュ〉の鼻と右目を巻き込み、光の軌跡が唸り声を上げる。

 第二の斬撃。右下より左上に向かっての切り上げ。残った左目すら斬り裂き、猪笹王の顔面を蹂躙する。

 二つの斬撃が交差する。光輝く軌跡がクロスする。


「――砕けて散れ」


 【必殺技】を持ってして〈ボアガッシュ〉の急所を斬り裂き。

 この技を持ってして〈ボアガッシュ〉の息の根を止める。


『――――――』


 〈ボアガッシュ〉の動きが止まる。巨大なる猪の王が硬直する。

 そして、やがてその身体が白く輝き始めた。内側から生命の全てを放出せんと、閃光と共に発光し始めたのだ。


「……これは……もしかして……!?」


 背後よりマリーの嬉しそうな声が聞こえる。興奮が抑えられない様子で、事態を見守っているのだ。そしてそれは俺も同じであり、溢れ出る様々な感情を抑えられないでいる。

 俺達はついにやり遂げたのだ。苦節一週間、この瞬間を待ち望んでいた。幾度も倒れ、幾度も挑み続けた日々――――それが遂に報われる日が来たのだ。


 〈ボアガッシュ〉の巨体が光と共に消えていく。細かい粒子が上空にへと舞っていく。輝く光が周囲を照らし続けて――――やがて、塵が拡散していくように身体が雲散霧消した。



 ――――Congratulations!!――――



 と同時に俺の目の前に金色の文字が浮かぶ。ボスを倒した事による特殊演出である。


『〈ボアガッシュの猛角〉を2本入手しました』

『〈ボアガッシュの剛毛〉を6つ入手しました』

『〈ボアガッシュの大角〉を2本入手しました』

『〈ボアガッシュの蹄〉を4つ入手しました』

『経験値を――――――』


 そして、次々とメッセージログが更新されていく。大量のアイテムや経験値、お金が所持品へと加わり、10で止まっていた職業熟練渡も一つ上がった。正に入り食い状態である。

 普通なら直ぐ様入手したアイテムを確認したり、レベルアップにより習得した新たな【必殺技】を確認したりするべきなのだろう。

 だが、俺達はしばらく茫然と立ち尽くしていた。達成感に身を委ねていたのだ。長い間苦しめられていたダンジョンの攻略に成功した事に、超級の強敵に勝利できた事に。


「……やったんだな、俺達。やっと第一のダンジョンをクリアー出来たんだな…………」


「…………はい。そうですね…………」


 もどかしかった。焦りも覚えた。最初のダンジョンに躓く自分が情けなくて、悔しかった。

 まだ第一のダンジョンの一つをクリアーしただけだ。この先には第二、第三のダンジョンが続いていくのだ。それに第一のダンジョンはまだ三つある。乗り越えた壁の高さは全体から見れば、それはそれは小さいものだろう。

 けれど、それでも。俺達は一つの困難を乗り越える事が出来たのだ。それは自分自身の大きな一歩であり、次に繋げる為の大切な一歩なのだ。


 《神世界アマデウス》を始めて約二週間。

 俺はようやく、次のステージへと切符を手にする事が出来たのであった。



   ――――――――――――――――――――――   




「いやー、マジで助かったよ! アンタのおかげで第一のダンジョンをクリアー出来た! ありがとうな、マリー!!」


「……私の方こそ、助かりました……。貴方には何度も救われて……感謝の気持ちが絶えません……。本当にありがとうございます……」


 《神世界アマデウス》内で夕暮れ時。

 〈イースト・マッシュルーム・フォレスト〉を脱出した俺達は、ダンジョンに一番近い村で身体を休める事にした。ここでボス戦で消費したアイテムを補充してから、最初の街に戻ろうという訳だ。

 マリーは一度、この村でログアウトするみたいだ。ボス戦で疲れたようで、今日はもうゲームを止めて早めに休むらしい。なので俺達はこの場でパーティーを解消する事にした。


「……あの……よろしければ……また私とパーティーを組んで頂いても構いませんか……? 貴方と一緒に戦うのが……本当に楽しかったので……」


「ん? あぁ、もちろん良いぜ! むしろこっちからフレンド登録を申込みたいぐらいだ! つーか、申込んでも良いか?」


「…………!! は、はい! ぜひお願いします……!」


 といっても、今生の別れにするつもりはない。マリーは魔法攻撃役として凄く優秀だし、気弱だが優しくユーモアに溢れたプレイヤーだ。彼女とパーティーを組んでいると、下手するとムサシと組むよりも戦いやすいのだ。ここでフレンドにならなくて、いつなると言うのだ。

 マリーとフレンド登録を行う。これで《神世界アマデウス》内でいつでもメッセージのやり取りが出来るようになった。広大な《神世界アマデウス》の世界であっても、連絡が取れるのなら合流し易く、パーティーも気軽に組めるのだ。


「よっしゃ! 登録完了! これからもヨロシクな、マリー!」


「はい……! これからもよろしくお願いしますね、ナギさん!」


 こうやって出会ったばっかりのプレイヤー同士でも、互いが気に入れば手軽にフレンドになれるのはオンラインゲームならではだ。特にVRならば遠距離にいようとも、こうして実際に会って会話をする事も出来る訳で、文明の進化をしみじみと感じる。


「では……私はログアウトしますね。私の力が必要な時は……遠慮無く呼んでください……。いつでも直ぐにナギさんの下へ……駆け付けますので……!」


「あぁ、頼らせてもらうぜ。アンタが困っている時は俺も助ける。いつでも呼んでくれよな!」


「は、はい……! 今日は本当に……ありがとうございました……!」


 そう言って頭を深々と下げた後、マリーはメニューを操作してゲームからログアウトした。後に残った俺は夕焼けに染まった村で感慨深く今日の出来事を思い返していた。

 マリーと共に第一のダンジョンをクリアーする事が出来たのだ。レベルアップによるステータス上昇のおかげで、ようやく【装備重量制限】のペナルティを解除できた。身体に掛かっていた重圧が消え、身も心も軽やかになった。


「さぁて……。俺は最初の街に戻るとしますかね。ボスの素材で新しい装備を作りたいし……」


 だが、俺がやるべき事はまだまだある。第一のダンジョンをクリアーしたが、それは一歩踏み出しただけに過ぎない。もっと先を進んでいるプレイヤー達に追い付く為にも、より強力な武器や防具が必要となる。レベルも今以上に上げなければならない。

 ログアウトするのはまだ早い。今日の内にアイテムを売買し、装備品を整えたいので、俺は最初の街に移動する事にした。この村では施設の数が少ないので、満足にアイテムを揃える事が出来ないのだ。

 そう思い、俺は村から出て行き最初の街の方面へと歩き出す。今からなら歩きでも日が落ち切るまでに最初の街に到達出来ると踏んでの行動であった。


 だが――――何事も思い通りに進むとは限らない。首尾よくボスを討伐できたとしても、無事に最初の街に辿り着けるとは限らないのだ。


「…………あん?」


 平原を突っ切り最初の街へ一直線に歩き続けていると――――目の前に一人のプレイヤーが立ち塞がったのだ。

 全身を緑色の鎧を纏ったプレイヤーだ。全身を包む鎧の形状からして、恐らく俺と同じ《騎士型(ナイトスタイル)》のプレイヤーであろう。フルフェイスで顔を隠しており、どんな表情をしているのか分からない不気味な人物である。いや、俺も人の事は言えないが。

 そして、隠すつもりの無い闘気。俺に向けて放たれる殺気。いつ襲い掛かって来てもおかしく無い程に高められた戦意を、ひしひしと全身で感じた。


「なんだぁ? てめえ……」


「……君に恨みは無い。因縁も無い」


 緑の騎士は凛とした、しかし抑揚の無い声を出した。次いで、収めてあった自身の装備品――――ハルバートとスモールシールドを取り出して構え、こちらにへと矛先を向けた。


「だけど、ここで戦ってもらう。僕と戦ってもらう」


「あぁ? 何を言ってんだ……?」


 G目当てのPKというわけでは無さそうだが、目の前のプレイヤーの突然の行動に戸惑ってしまう。いきなり立ち塞がり、怨恨無く戦いを挑んで来るなんて、脈絡が無さ過ぎて理解が出来ない。

 けれど相手は思考をまとめる時間をくれなかった。あるいは、元からこちらの意思なぞ関係無く戦うつもりだったのかも知れない。

 俺がレスポンスする前に、緑の騎士は一歩踏み出してハルバートを振るってきたのだ。


「っとぉ!?」


 慌てて大楯を使って攻撃を弾く。同時に後ろに跳んで距離を稼ぎ、緑の騎士から離れて体勢を立て直す。


「てめぇ! 急に何しやがる!! 何のつもりだ!?」


「……今の動き……悪くないな」


 いきなり襲って来たプレイヤーに悪態を付くが、話を聞いていないのか返答は無い。ただブツブツと独り言を呟いているだけだ。なんて自分勝手な奴なのだろうか。

 表情も見えず目的も分からず、ひたすら不気味な印象を受ける。急に襲い掛かって来るは話は聞かないはで、怒りを通り越して関わり合いを持ちたくないとすら思えてくる。

 しかし、残念ながら相手は俺を逃がすつもりは無いらしい。再びハルバートを構えると、こちらに向かって駆け出したのだ。


「さぁ――――僕を楽しませてくれ……!」


「くそっ……めんどくせぇ……!!」


 本音を言えば、直ぐにでも最初の街に帰りたいのだが、相手が執拗に襲って来る以上は無視する事も出来ない。力ずくで黙らせるか返り討ちにして倒さないといけない。

 俺は仕方なく両刃剣と大楯を構える。この緑の騎士と闘う為に剣を手にした――――。




 突然現れたら謎のプレイヤー。ナギの命運は如何に……!?

 次回は緑の騎士との戦いをお送りします!


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