◇ 3 ◇ 02 マジ喧嘩なら、本気で買わせて頂きます
会社に戻ると、もう5時半を過ぎていた。
すっかり忘れていたけれど、出社してから佐崎部長と少し話したいと思っていた。
もう帰っているかも知れない。そうだとしても、明日会ってもらえるように松原さんに時間を取ってもらおう。けれど、松原さんまで帰っていたら、出直しだな。
「失礼します」
「あら、伊藤さんいらっしゃい。今日はどうなさったの?」
松原さんは、いつものように何事にも動じない爽やかな笑顔であたしを迎えてくれた。そこが恐ろしい。なんだかわからないけれど、威圧感みたいなものがある。
まだ、帰る気配さえない。明日の準備をしているんだろうか。抜け目のなさそうな松原さん。たぶん、そうなんだと思う。
「部長に確認したい事がいくつかあるんですけど、今大丈夫でしょうか。明日でもかまわないんですけど」
「もうすぐ、会議が終わりますから帰ってらっしゃいますよ。少し、お待ちになる? 帰られたら、お呼びしてもいいですよ」
「部長、お忙しいですもんね。申し訳ないんですけど、呼んでいただけますか。お時間取っていただけるなら」
「大丈夫ですよ。伊藤さんは部長のお気に入りですからね」
「そうなんですか? 帰って、仕事片付けてますんで、よろしくお願いします」
松原さんまで、なんて事を言ってくれるんだろう。やっぱり、佐崎部長同様、松原さんも苦手。
早々に撤退すると、本城君放って出てしまった事を思い出した。部長のオフィスを出るとタバコを吸うのを諦めて戻る事にした。
少し心配。どうしてるかな。
パンクしてないといいのだけれど。本城君がお昼から戻って来た時のあたしの様になっているかも知れない。早く戻った方が良さそうだ。
「あさちゃん。ちょっと」
オフィスの入口まで戻ると、あたしを見つけた加倉さんに呼び止められた。
「何かありました?」
加倉さんに喫煙室に誘われ、本城君を放ったらかしたまま加倉さんに付き合う事にした。ここまで、放ったらかしにしたのだ。10分やそこら放っておいても、結果は変わらないだろう。
加倉さんが、休憩を誘うのは良くある事。
仕事の話なら、ミーティングルームを使うだろう。そうではないと言う事は、また、女の話か。
加倉さんに続いて、喫煙室に入ると、誰もいなかった。この時間は、遅組も早組もだれてくる時間帯。珍しい事もあるものだ。
「本城に仕事任せたんだってな、早いんじゃないのか?」
あたしの予想に反して、今日は女の話ではないようで、気晴らしをしたいだけみたいだ。
てっきり、彼女とよりを戻す良い方法でも探しているのかと思っていた。そもそも、彼女の前で他の女に手を出そうとする事自体が間違っている。
「加倉さんは、そう思います? それにしては、あたしを突き放すの早かったですよね」
「そうか? あんなもんだろう」
加倉さんは、さっさとタバコに火を付けていて、煙と一緒にあたしの事はどうでもいいような言葉を吐き出す。
加倉さんが何を考えているのかが見えてこない。本城君の話をしたいのだろうか。
「なんだかんだで、加倉さんのアシスタントしてたのって、実質、3ヶ月ほどでしたよね。あの時の名刺、引き出しの中でまだ眠ってますよ。結局使ったのって、5、6枚だったし」
加倉さんに仕事の事で口を挟まれるのは初めてだ。あたしの判断は、間違ってるんだろうか。
「で、本城をどうするつもりなんだ?」
「彼ならできると思ってるんで」
加倉さん怒っているんだろうか。特に不機嫌な顔をしているわけでもないけれど、会話の間やイントネーションの端々に不機嫌を感じてしまう。
加倉さんは穏やかな人だけど、機嫌が悪いのはすぐわかる。それは、この人の近くにいるからかも知れない。
「麻美、まさか俺が知らないとでも思ってるのか?」
加倉さんの不機嫌は、今までは息を潜めていたけれど、何故だか表に出てきた。
口調も強くなり、苛ついているのがハッキリわかった。けれど、何をそんなに不機嫌なのかがわからない。
「加倉さん、何が言いたいんですか? さっぱりわかりません。本気でケンカ売ってるんだったら、本気で買わせていただきますよ」
加倉さんに何かがあって、あたしに当たるのは一向にかまわない。
あたしがした事で、トラブルが起こっているのなら、それで叱られるのも甘んじて受けよう。この訳のわからない遠回りな攻撃は何なのか。
ただ、ムカつくだけ。
今日は、加倉さんとはほとんどオフィスでも顔を合わせていなかった。ずっと、本城君に掛かりきりだった所為で。その間に、何かあったのだろうか。それさえわ かっていれば、こんなにもムカつかないのかも知れない。
その前に、気分転換に喫煙室に誘ったのではないのか?
原因は何かわからないけれど、八つ当たりなら、わかりやすく当ればいい。
「お前なぁ…」
「なんですか。はっきり言ってください」
加倉さんの不機嫌は、顔にまで出てきた。目つきも険しくなり、舌打ちをしたいのであろう口元。久しぶりに見る加倉さんの不機嫌顔。今まで、あたしに向けられた事はなかった。
今は、あたしに向けられている。
こっちも折れる気がなくなって来た。
「先輩、探しましたよ! 何してるんですか! 部長が呼んでます、行ってくださ…い……」
どうにもならくなってきた所に、慌てふためきながら、春香ちゃんが呼びに来てくれた。
「ごめんね、ありがとう」
春香ちゃんは、あたし達の変な空気を感じたのか、すぐに行ってしまった。
春香ちゃんが開けたドアが閉まらないうちに、手のひらで押し返し通れる隙間を確保した。
「それじゃ、あたし行きますんで」
加倉さんの返事も待たず、喫煙室から出た。
ムカつき過ぎで、これ以上同じ場所にいると、宮内並みに加倉さんに食って掛かりそうになっていた。上司だと言う事も忘れて。
遠回しにも程がある。ちゃんと言いたい事があるなら言ってくれればいい。こんなに加倉さんに対してムカついた事は無い。
この話が、これで終わるとも思えない。それより、部長が先。
喫煙室を出た勢いのまま、部長のオフィスまで足早にやって来た。
「失礼します」
「来たわね。どうぞ、お待ちですよ」
松原さんからお許しが出た。
ノックをすると部長からもお許しが出たのでドアを開ける。
「君から、尋ねて来てくれるとは嬉しいね」
また始まった。いちいち、付き合ってられない。
「早速ですが、戸田山さんの件で確認したい事がありまして」
「何かな。まぁ、掛けなさい」
「ありがとうございます」
ソファーに座ると、話を先に進められるように努力をしなければと、早速本題に入る事にした。
「担当営業は、私が指名してもよろしいんでしょうか。どなたかに決めていらっしゃいますか?」
「あぁ、その事か。忘れていたよ。君が指名するとなると…。宮内君か?」
その手があったか。
何か探れるかも。それに、斉藤さんと引っ付けられるかも知れない。
けど、イヤだ。宮内と組むとなると、幸せになれるものも不幸にしそうだ。
「あたしは、構いません。ただ、断られる可能性が有りますが、何とかできるかも知れません」
「君から、そんな前向きな答えが聞けるとは思わなかった。私は誰を選んでもらってもかわないよ」
そんなにあたしは、部長から見てネガティブなんだろうか。そんな事は無いと思うのだけれど。
「それでは、お決めになられてる訳ではないんですね。こちらから、アプローチしてよろしいでしょうか」
「私の手から離れたと思ってもらって結構。好きに進めてかまわんよ」
「わかりました。お忙しい所、お時間を割いていただきましてありがとうございました。仕事に戻ります」
「もう、帰るのかね。ゆっくりして行けばいい」
ここに、そう長居はできません!
部長の攻撃に耐えられる自信はありません。
部長の言動は、あたしには着いて行けるノモではない。かわす事さえできないでいるのに。精々、聞かなかった事にする事ぐらい。
「ですが、本城君にだいぶと仕事を背負わせてしまったんで、少し心配なんです」
「そうか。彼もそろそろ独り立ちできそうか」
部長って、勘が良すぎる。
あたしは、そこまで報告してないのに、わかってるなんて。
「独り立ちには、まだ早い気がしますが、処理能力はズバ抜けてます。ディレクションを任せようと思ってます。彼は、プランナーというよりディレクターの方が向いているような気がします。今は、加倉さんとあたしが、両方を兼任して進めていますが、分離するのも一つの方法だと思います」
「確かに、そうだな。企画課が立ち上がった時には、人員を割けなかったからな。君等には負担をかけたと思う」
「いえ、あたしは全然構いません。やりがいも有りますし、熟せないは無いですから。ただ、彼はもう、アシスタントにしておくのは勿体なくなって来ています。彼にディレクションを任せられるようになれば、私の熟せる仕事の量も増えます。それに何より、戸田山さんの仕事をじっくりと割り込める隙間ができます」
「そうか、期待しているよ」
「それでは、失礼します」
部長のオフィスを後にすると、本当に本城君が心配になって来た。
パニクってないといいんだけど。
思わぬ所で、部長に本城君の評価をしてしまった。それでも、コレに合うだけの事を成してくれるだろう。
そう言う意味では、あんまり心配はしてない。ただ、本城君の頭の中が心配。今日は詰め込むだけ詰め込んだ。さて、どうなっているか。
デスクの近くまで戻ると、本城君は、昨日葉折さんからの差し入れの残り物を、今度は中身を出して並べている所だった。
「本城君、そろそろ上がってもいいんじゃないの?」
「あ、伊藤さん。どこ行ってたんっスか?」
後ろから声を掛けたあたしを、本城君は不満げに、睨むまでは行かないまでも、不満げに見据えてきた。
ふと、他の視線を感じて本城君から目を逸らし、その視線を探すとすぐに見付ける事ができた。
加倉さんは戻って来たあたしに気付いたのだろう、こちらを伺っている。目が合うと、思いっきりあからさまに逸らされた。
ムカつく。
言いたい事があるなら、はっきり言えばいいのに。
「どうしたんっスか?」
「何でもない。社内にはいたんだけど。あ、ちょっと出てた時もあったけど」
「そう、ですか…」
聞いて来た割には、どうでもいいようだ。少し、ナーバスになってる。
「帰らないの?」
「時間があるのはわかってるんっスけど、なんか気だけが焦っちゃって」
「今日は帰ったら? もしこれで間に合わなくても、何とかするし」
「明日、落ち着いてからにした方がいいスね」
「そう言う事。今日は、一通り把握した訳だから、明日はそれを消化ね」
「わかりました。それじゃ、帰ります」
本城君は、少し微笑んだように見えた。
けれど、まだ落ち着かない様子で、上着とコートを羽織るとオフィスからか出て行った。
不安なのだろう。いきなりだったから。少しずつにすれば良かったかも知れない。それでは、本城君は難なくこなしてしまうだろう。それは、面白くない。
本城君は、自分を低く評価してる。
本人は自覚してないようだけど、これが結構キャパがある。先が楽しみだ。
けれど、追い抜かれるのは癇に障る。
「先輩、ちょっといいですか?」
「ふぅん?」
不意打ちされた事で、間抜けな声を出してしまった。
声の方を向くと、春香ちゃんが大きな白いビニール袋を持って立っている。
「あの、昨日のクリーニング。すっかり、引換券を渡すの忘れて。さっき、取りに行って来たんです」
そう言いながら、クリーニングから帰って来たスーツを渡してくれた。白いビニール袋は、クリーニング帰りのスーツだった。
本当に気が利く。すっかり忘れていた。
「ありがとう。ごめんね。いくらだった?」
「いいんですよ。先輩にはお世話になりっぱなしですし、これくらいは。それより」
春香ちゃんはあたしに近づいて、声を潜めて聞いて来た。
「あの、加倉主任と何かあったんですか?」
「別に何も無いよ」
さっきの事を気になるようだ。いつもの感じではなかった。
あたしがキレるのはよく見てるだろうけど、加倉さんが不機嫌なのは春香ちゃんは見た事無いんじゃないだろうか。
「でも。なんか、あれからずっと加倉主任ご機嫌斜めなんですよ」
「ほっとけばいいんじゃないかなぁ。そのうち直るでしょ。春香ちゃんは気にしなくていいよ。あたしも、訳が分かんない」
「そうなんですか。あんな主任見るの初めてなんですけど」
春香ちゃんは初めて見る加倉さんの不機嫌に恐れを成しているようだ。
加倉さんは、いつも訳のわからない事を言ったりする。けれど、さっきのは何か違う。
何故あんなに、怒ってるんだろう。
「あ、付けてみたの? かわいいよ。似合ってる!」
プレゼントしたピアスをつけてくれている。しかも、カワイイ春香ちゃんにすごく似合っている。
「あ、ありがとうございます。嬉しくて我慢できなくなっちゃって、消毒液買って来ちゃったんです」
「そう、よかった。あの時、カワイイとしか言ってなかったから、どうかなって思ってたんだよね。気に入ってくれてるならよかった」
なんかまだ、変な視線をビシバシ感じる。
視界の隅に入ってくる加倉さんは、よくわからないけれど、見られてるような…睨まれてる?
そんな事であたしが、動じるとでも思ってるんだろうか。残念ですが、そんな事はございません。
別に、人間関係が悪くなったて、平気。
加倉さんに脅かされたってかまわない。生活する収入さえ有ればいい。
嫌いな人だらけの会社で働く気はないから、他行くかな。
最後は、実家に帰るか。脛齧り人生でも構わない。両親に養われるのもいいだろう。あたしに帰って来てもらいたいようだし、家事手伝いというのも一度経験するのも面白いかも知れない。
「先輩、今日も遅いんですか?」
「今日は、恭平が降りて来たら帰るよ」
「予定あるんですね」
春香ちゃんは、あたしを誘ってくれるつもりだったように思える。
「よかったら、一緒に行かない? 恭平さぁ、美貴ちゃん実家に帰ってるもんだから、寂しいんだよ。まっすぐ家に帰るの嫌みたい。付き合わない?」
「いいんですか? お邪魔じゃないですか?」
「とんでもない。なんで邪魔なの? 相手は恭平だし。今日はちゃんとご飯食べようって、事になってるんだけど。どこ行く気なのか…」
「じゃ、ご一緒させてもらいます」
「いつ終わるか聞いて無いんだけど、大丈夫?」
「暇ですから私。先に着替えてきますね」
「じゃ、あたしも」
あたし達は、フロアを出る所まで一緒に行った。
春香ちゃんは、更衣室に。あたしは、喫煙室。
さっきは、加倉さんのおかげでタバコを吸えなかった。今度は、落ち着けるかな。
タバコに火をつけて、肺に煙が届くとホッとした。やめた方がいいんだろうとは、思う。やめられるのだろうか。自信がない。
今日は、遅く出て来たのに、長かったような気がする。
窓の外は、真っ暗。日が落ちるのが早いな。
恭平がいつ終わるかわからない。あんまり遅くなるようだったら、春香ちゃんと先に行ってよう。
窓を開けて、壁にもたれたままタバコを吸っていた。
斜めに少ししか開かない窓がもどかしい。全開にして、冷たい空気をいっぱい入れたい。
窓に映る自分の顔。寂しい顔をしていた。そんな事思ってない。ただ、疲れてる。
早く、週末にならないだろうか。何も考えず、眠りたい。
下の道路を走る車は少なくなっている。さすが、ビジネス街。夜は、人口が極端に減る。
「あさちゃん、まだキレてる?」
ボケーッとしていたところに声がかかった事で、驚いて振り返ると加倉さんがいた。
確かに、ムカついてた。キレてもいた。
「いいえ。大丈夫です。遠回しにわざわざ話されるのは嫌いなんで、ちゃんと話してもらえませんか」
「そうだな」
感情を抑えて穏やかに話してみた。
加倉さんと変な感じのままいるのも気持ちが悪い。
あたしも大人げない事に、逆ギレしてたのだから。会社を辞めてしまえば、加倉さんと縁は切れるだろう。けれど、子供のケンカじゃないのだから。
ちゃんと話せば加倉さんの真意も見えてくるだろう。
加倉さんだって、あたしを怒らせたい訳ではないだろうから。
何か言いたい事があるのは確か。
「本城君に仕事任せた事が気に入りませんか?」
「どうだろうな」
加倉さんはソファーに座り、タバコに火をつけた。
深呼吸するように深く煙を吸い、ネクタイを緩めて煙を吐き出した。
「けど、そうかも知れないな。本城に仕事を任せた事かな」
それが何故、気に入らないんだろう。考えてみてもあたしの中からは答えが出て来ない。
「何故です? 本城君に任せて、サボる気でいる訳じゃないですよ」
「わかってる」
「じゃあ、なんですか?」
加倉さんは、今まで灰皿の方をずっと見ていたけど、立ったまま窓の側から離れないあたしの方に視線を向けた。
「麻美さ、オファー受けるつもりなのか」
「あぁ、営業部と制作部の事ですか? 今まで忘れてましたよ。それも、考えないと…」
そうだ。忘れていた。ちゃんと考えないといけない。佐崎部長から聞いたんだろう。あたしが抜ける分、加倉さんに比重は傾く訳だし。
「忘れてたって…。お前なぁ。それより、大切な事があるのかよ」
呆れてるようだけど、それより大切な事はいくらでもある。
「それも大事ですけど。あたしには、他にもあるんです。言ってしまえば、その事はけっこうどうでもいい部類です。今は」
「本気で言ってる?」
「もちろんです。確かに、時間がないから早く決めないといけませんけど。誰かが決めてくれたらいいのにって思ってるんです。そうも、言ってられないですよね。せっかく、佐崎部長が決定権をくれた訳だから」
最初は色々と考えてみてた。
正直な所、今は煩わしくもある。自分がどうしたいのかわからない。
「俺が決めてもいい訳?」
「いいですよ」
「まったく、お前はぁ。何考えてるんだ」
「こっちが、言いたいですよ。そんな事で、怒ってたなんて」
加倉さんは、あたしがどっちを選ぶかで機嫌が悪かったのかと思うと、呆れてしまうのはあたしの方だ。
「まぁ、気の済むまで悩むんだな」
結局は、自分で決めるしかないのは、わかっている。それでも、煩わしさから解放されたい。
決めて貰えると、少しの期待を持ってしまった。
加倉さんに決めてもらったところで、行った先で嫌気がさすと加倉さんに当たってしまうと思う。そう、わかっているからこそ、悩めと言うのだろう。
「加倉さん、明日…。あ、ダメだ」
明日は、シルバーショップのお兄さん、昌也とご飯の約束してたのを思い出した。
「何?」
「いえ、金曜付き合ってもらえません?」
「え?」
「散々、あたしに恋愛相談してて、あたしの決めかねてる事には付き合ってくれないんですか?」
「いや、そう言う訳じゃ…」
「もしかして、デートの約束とかありました? けど、月曜までに決めないといけないんですよね」
「わかったよ」
加倉さんはいい迷惑だと、言いたげではいるけれど、付き合ってくれる気になってるみたいだ。
加倉さんの目の前にある灰皿にタバコを捨てるとドアの方に向かった。
「でも、ホントにデートだったらあたし方はいいですからね」
加倉さんの答えを気にしてはいなかったので、そのまま、喫煙室を出た。
恭平はいつ頃終わるのだろう。
春香ちゃんも誘った事を含め知らせるために、様子を見に事にした。