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MAYBE  作者: 汐見しほ
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◇ 5 ◇ 02 事が動く日は、解決もする。

 お昼から戻ると、岸君と野田君を捕まえて、簡潔に仕事の内容と状況を説明して貰った。そして、自分のデスクに出はなく、加倉さんのデスクに着くと勝手の違う加倉さんのパソコンを立ち上げた。

 その間に、加倉さんの携帯に受ける電話の転送設定を、あたしの携帯に設定した。

 パソコンが立ち上がれば、早速メールを確認。あたし達どちらかが休んだ時には必ずする事。クライアントからのメールでの問い合わせもある。他の社員達は、メールまでは見ないだろう。

 以前は、二人だけで仕事を回していた。アドレスも共有していた事もある。その頃からの名残で、今でも必要な時は、プライベートも侵害する。あたし達はそれを前提に、弁えて使っている。加倉さんも、本当にあたしに知られたくない情報は、置いては置かないだろう。そして、あたしも必要以上の事はしない。

 それでも、差出人名は嫌でも目に入る。そして、件名も。相変わらず、女からのメールが多い。

 それにしても、気になるメールの件名。『どうして?』『連絡ほしいな』『会いたい』等と、書かれていては、愛しい彼女なら真っ先に開封して、内容を確認するだろう。けれど、加倉さんにはその気は無いらしい。何週間も前からの物もあれば、今週に入ってからの物もある。開封もしていなければ、ゴミ箱にも行っていない。受信箱に振り分けられる事なく、残っている。それは、興味がないという事だろう。

 さすが、加倉さん。酷すぎる。

 この人は、まともに誰かと付き合うことが出来るんだろうか。

 最近は、あたしに火の粉が掛かる事はなくなってきたけれど、加倉さんに引っ付いて回っていたアシスタントの頃、とんでも無く巻き込まれた。

 しかも、どうやって調べたのか、あたしの携帯にまで電話をしてきて、別れを迫ってくる女もいた。付き合ってもいなければ、寝てもいないというのに、何を根拠にそんな事を言い出すのか、サッパリわからなかった。

 会社を出る時、待ち伏せをされた事も。

 思い出すだけで、腹が立ってきた。

 その女達にブチ切れた事も一度や二度では無い。最初は窘めていたにも関わらず、最後には再起不能になる程、言い負かしていた。

 刺されなかったのは、奇跡かも知れない。そういう被害に遭わなかっただけ、ましか。今となっては、もうどうでもいい。

 それでも、やっと一人の女性と付き合い始めた加倉さん。けれど、この間まで続いていたその彼女とは、2ヶ月と保たなかった。

 一体、何人の女からメールが来ているのか、数えてやりたい気持ちになった。と思っても、そんな事している暇はない。

 加倉さんが会社で受けているプライベートアカウントのメールは無視し、会社で割り振られたアカウントのメールにだけ目を通した。

 そして、急を要する物にだけ返信ではなく、連絡を入れた。

 加倉さん宛の電話は全部受けた。

 今日、加倉さんには打ち合わせの予定は入っていなかったけれど、問い合わせに会って説明すべきであろうと思う物に関しては、アシスタントの岸君と野田君にそれぞれ分かれて行って貰った。


「先輩、少し休憩してきたらどうですか? ずっと電話とお友達ですよ。それから、コレ先輩にプレゼントです」


 少し落ち着いたところに春香ちゃんは、少し心配そうに話しかけてきた。そして、手にはカフェタンブラーを持っていた。


「ありがとう。かわいいねコレ。コレも、うさちゃんね」


 タンブラーを受け取ると思いの外、重みを感じた。中には何かが入っているようだ。

 何が入っているのか気になると、ふたを捻って飲み口を出した。すると、あたしの大好きなコーヒーの香りが溢れてきた。


「中身入りね! ありがとう。会社から、買いに行く時はコレに入れて貰うことにしようかな」


「先輩って、自分からカワイイ物買いませんけど、かわいいの好きですよね」


 考えてみれば、そうだ。積極的にカワイイ物を集めるわけでないけれど、こういうポップでカワイイ、イラスト付きの物は好きかも知れない。

 春香ちゃんほど、ウサギが好きだという訳では、全くない。けれど、カワイイ物には和まされるのは事実。


「春香ちゃん、ちょっとココお願いできる? タバコ吸ってくるから」


 春香ちゃんに任せ、お仕事中の斉藤さんの進み具合を確認すると、喫煙室へと向かった。

 タンブラーを右手に、タバコの箱とライターを左手に握り締めて、喫煙室までの道のりをダラダラと歩いた。少しどころではなく、足が浮腫んでいる。

 加倉さんが居ない日に限って、電話が多すぎる。いつも、加倉さんはこんなに電話で話していないぞ、と頭の中で愚痴ってみてもどうにもならない事はわかっている。それでも、納得がいかなかった。

 結局、加倉さんのデスクに着いてから、一度も席を立つ事が出来なかったのだから。

 喫煙室のガラスのドアがいつもより重く感じられた。中に入り、指定席に陣取って、タバコに火を付けた。

 幸い、他の社員は居なかった。心おきなく、少しの休憩を挟むことが出来そうだ。

 自分の仕事でもないのに、何故こんなに忙しいのか。加倉さんが居ない時に限って、会社に留まるよう縛られてしまう。

 今日は、会場のリサーチといくつか見学に出掛けたかったというのに。明日、出勤してから何とか、京香さんと会うまでの時間に回ればいいかと考えてみても、やっぱり、納得がいかない。何故、今日に限ってなのか。

 お昼からは、自分の仕事を全くしていない。本城君に仕事を任せていなかったら、どうなっていたのかと、恐ろしくなって来た。

 タバコを灰皿に一時置き、タンブラーを両手に持ち、飲み口をじっと眺めた。

 コーヒーを飲みたかったけれど、春香ちゃんがくれたタンブラーは保温も出来るタイプのようで、熱そうで口を付ける事をためらってしまう。それでも、コーヒーの誘惑には勝手ず、恐る恐る口を近づけた。

 思っていたより、熱いと言うわけではなかったけれど、あたしの思う適温ではなかった。もう少し、飲み口を開けたままにして冷ます事にした。

 タバコを灰皿から、指先に戻す。少し、タバコの本数が減ったかも知れないと、いつ買い足したか考えてみた。そして、残りの本数を確認すると、やっぱり減っている。

 最後に、深く肺に煙を届けた。減っているのは、良い事だと思いながらタンブラーを持って喫煙室を出た。そして、今になって、加倉さんが少し心配になってきた。大丈夫だろうか。


「あ、本城君。おかえり」


 エレベーターホールで、本城君と鉢合わせた。


「お疲れ様です。まだ、ミーティングルームに籠もってるんスか?」


「それがさ、そうも行かなくなってきたのよ」


 加倉さんの不在を伝えると、本城君は同情してくれた。

 本城君と一緒に戻ると、春香ちゃんと斉藤さんは本城君の労を労った。

 それを横目に、また加倉さんの席に戻る。まだ、電話を掛けて確認しなければいけない。早速、また受話器を上げた。








 本城君は、あたしが一段落しているのを待っていたのか、区切りが着いた所に、報告をしたいと申し出てきた。承諾すると、午前中籠もっていたままになっている、第2ミーティングルームで報告を受けた。


「って、事は? 変更が必要ね」


「そうッスね。コンセプトがブレた訳ではないんッスけど」


「今更、何なのよって言いたい所だけど、仕方ないわね。明日、あたし出勤しないといけないけど、予定は午後にあるから、午前中と終わってから何とかするわ」


「お願いします。何か手伝いますか?」


 本城君は、申し訳なさそうにそう言うが、これは仕方のない事。それに、本城君にあたしの領域を任せるのも気が引けるし、手伝って貰える事がない。


「それは、いいわ。それより、斉藤さん来てくれてて助かったわね。説明してスグにやって貰えそうな物は、彼女に回して」


「そうスね。けど、伊藤さん手回し良すぎッスよ。他の仕事って、何なんです?」


「ウエディングプランナー兼、式のプロデュースよ」


「え? うちって、そんな仕事してましたっけ?」


 本城君は、新しく業務拡大をした事を聞き逃していたのかも知れないと、心配している様子だった。


「してないわよ。特別なんじゃないかな。まぁ、パーティーやイベントを仕切るのは通常のうち仕事だし。的はずれなものでもないからね。畑違いではあるけど、何とかなるでしょ」


「それは、そうッスけど」


 どうやら、何も知らされていない事を良く思っていないようだ。それに、自分が外されている事も。拗ねているんだろうか。

 そう言えば、本城君と昌弥はルックス的にはあまり似ていないように思う。昌弥が、春香ちゃんのお兄さんと言うのなら、その方が遥かに納得する。

 本城君は、本当にあたしを恋愛対象としてみているのだろうか。そんな風には、思えない。けれど、昌弥がそう言うのならば、そうかも知れない。とりあえずは、放っておいてもいいだろう。


「先輩、打ち合わせ中、申し訳ないんですけど、そろそろ戻っていただかないと、保ちませんよ」


 いきなり、ミーティングルームの扉をノックも無しに春香ちゃんが入ってきた。

 本城君もビックリした様子で、春香ちゃんを見た。


「わかった。戻るわよ」


「春香ちゃん、ビックリするじゃん」


「すみません。ちょっと、焦っちゃいました」


 本城君の言葉に、反省をする春香ちゃん。けれど、その様子からすると、早く仕事に戻らないといけないようだ。

 それぞれの席に戻ると、早速、仕事に掛かった。デスクの上には、春香ちゃんと斉藤さんの字で電話のメモがあった。

 ウンザリしてため息をつくと、また受話器を取り、加倉さんの名刺ホルダーの中から担当者を探し当て、電話を掛けた。

 別段、急ぎの用件でもなかった。それなら、週明けにしてよ。と言いたい。けれど、そんな事を言えるわけもなく、業務を熟すしかなかった。

 春香ちゃんは、あたしの電話が終わると駆け寄って来た。電話対応をしている最中に加倉さんに来客があったらしく、応接室に通したと、あたしに対応を求めてきた。


「どうしたんでしょうね、今日に限って。加倉さんの仕事は、一段落のハズなんですけど」


「こういう日もあるわよ。予想に反して、事が動く事なんてね」


 そう、言い残すと急いで応接室に向かった。






「伊藤、お前は二重人格か?」


 来客者をエレベータまで送り、エレベーターの扉が閉まったところで、次は何をするべきかと考えようとした所に、会いたくない人のに声を掛けられた。

 声だけで誰なのかがわかるのが、自分でも嫌だった。

 振り向くと予想通りそこには、宮内が居た。


「失礼な人ね。切り替えがイイと言って欲しい」


「病的にな」


「もう、いい。あたしは病気なのよ。それより、出来たんでしょ?」


 やっと、宮内戦の対処法がわかってきた。

 言われた事を何であれ、認めてやればいい。挑発には乗らない事だ。昨日のやりとりを分析した結果、遊ばれている事に気が付いた。

 この人は、いじめて遊ぶのが好きらしい。一々、反応して突っかかるあたしは、音に反応するおもちゃの様だったのだろう。それに、殆どは冷静に楽しんでいるけれど、この間のように逆ギレをしてみせる宮内は、面倒なヤツ。


「コレが欲しいんだろ? 感謝を表してみてみろ。これだけ急がせたんだからな」


 ファイルをあたしに手渡しながらそう言うが、手を離してくれない。気付いた今では、あたしを挑発しているのが良くわかる。

 もう、引っかからないぞと決めるも、何か言わないとダメなのか。全くもって、面倒なヤツだ。


「宮内主任って、すっごく、お仕事早いんですね。助かりますぅ。ありがとうございましたぁ。さっすが、宮内主任、ステキです……。コレでどう? キャピキャピ風、ブリッコOL仕立てでございます」


 和也にさえ使った事のない甘い声を出し、宮内を愛しい人と、見つめなっがら言ってみた。まさしく、キャピキャピ風、ブリッコOL仕立。けれど、自分でも気持ち悪くて、鳥肌が立った。


「恥ずかしくないのか?」


 宮内は、動揺している様子ではないが、その口調から照れているのが見える。


「何よ、あなたがやらせたんでしょ? 満足した? まだあるわよ、そうね……。追っかけ風、黄色い声仕立てとか。あとは、寒空の下のラブラブカップル風、イチャイチャ仕立てとか、それから」


「もういい。伊藤と遊んでいる暇はない」


 宮内は、ファイルから手を離すと呆れた様子で、階段の方に向かって行く。


「あらそう? まだ面白いのあるのに。じゃ、また今度やってあげる」


「いらん」


 宮内にしっかり届くように、少し声を上げて言ってみると、振り返りもせず、階段を上っていく。

 勝った。遂に、宮内の攻略法を見付けた。

 これから、この方法を使って宮内で遊ぼう。反応が面白い。もしかして、キャピキャピ風、ブリッコOL仕立の女が好みなのかも知れない。けれど、そんな女と宮内がうまくいくとは思えない。イヤ、好みならば別か。


「伊藤さん、何やってるんッスか?」


 またかと、肩を落とす。

 また、変な所を人に見られた。今朝は、恭平だった。

 振り返ると、本城君がいた。トイレにでも行って来たのだろう。


「何って、ちょっとした楽しみを見付けたのよ。会社に来るのが楽しみになりそうよ」


「伊藤さん?」


 本城君は、イマイチあたしの言いたい事がわからない様子だけれど、そんな事は、どうでもいい。攻略法を見付けたあたしは、久しぶりに高揚している。その他の事なんてどうでもいい。

 本城君を置いて、オフィスに戻るとコーヒーが無くなっているのを思い出した。


「春香ちゃん、もう落ち着いたみたいだから、コーヒー買いに出てきても大丈夫かな?」


「あ、先輩お疲れ様でした。いいですけど、私、行ってきますよ」


 春香ちゃんは、早速、席を立つと出掛けようとした。けれど、あたしは気分転換も兼ねて、外に出たい。


「いいの。今、すっごく外に出たい気分なのよ。携帯持って行くから、急ぎなら連絡入れて」


「わかりました。けど、寒いですから、先輩までダウンしないでくださいね」


「ありがと。大丈夫よ。あたしは丈夫に出来てるの」


 いつもは、財布だけを持って出掛ける。今日のスーツにはポケットがない。バッグごと持って出掛ける事にした。春香ちゃんから貰ったタンブラーも忘れずに。

 コーヒーショップまではそんなに遠くはない。コートを羽織らずマフラーだけを巻いて外に出た。




 思ったより外は寒く、すぐにコートを持って出なかった事を後悔した。ランチで外に出たけれど、オフィスの過ごしやすさで、すっかり寒さを忘れていた。

 少し早足でコーヒーショップに向かった。コーヒーショップに着く頃には、身体は寒さに慣れていて、ショップの中が熱いとさえ感じた。

 そろそろ、岸君と野田君はヘナって返ってくるだろう。

 普段、加倉さんは彼らをあたしが扱うようには、扱っていない。急かしもしなければ、一気に大量の用件を預けたりもしない。それをあたしは、そこに行くのなら、ココにも顔を出して来いと、二人にクライアントだけではなく、取引先にご機嫌伺いに行かせた。それは、彼らの仕事ではないけれど、取引先の状況を伺う事は、こちらの仕事を進める上でも、何かと役に立つ。

 彼らにしてみれば、一日で三日分くらいの仕事量になっているのではないだろうか。加倉さんは、余分な物を取り除いて、自分の仕事に徹する人だから。

 それでも、今日の忙しさはあたしの所為だけではない。一度に事が動いている。

 春香ちゃんも気を揉んで、いつもより疲れていそうだ。斉藤さんも慣れない仕事を文句も言わずしてくれている。

 今日は、あたしが気を遣った方が良さそうだ。気分が良い今日は、他の人に気を配る余裕がある。

 課の人数分より多めにデザートも注文をすると、支払いには、まだ十分残っている加倉さんから貰ったプリペを使った。労を労うにしても、自腹は免れた。イイのだろうかと、考えてみた。それでも、あたしのコーヒー代が少なくなったのだから良しとしよう。

 コーヒーとデザートを持ってコーヒーショップを出と、プリペで加倉さんを思い出し、今日の約束はどうしようと気になってきた。

 あたしの異動について、一番理解してくれるのは、加倉さんだと思う。

 この間の逆ギレも、謝った方がよさそうだ。きっと、不機嫌だったのも勝手にあたしが決めると思ったからかも知れない。挙げ句に、逆ギレした。少しくらいは、あたしが相談するであろうと、予想していたのだと今では思う。

 バックの中から、プライベート携帯を取りだして、加倉さんの携帯に電話を掛けた。すると、自分の鞄の中で会社の携帯が鳴り出した。慌てて、電話を切ると会社の携帯も鳴りやんだ。

 このタイミングの良さは何なのかと、思いながらかけ直そうとして手にある携帯のリダイアル履歴を出すと、納得する。加倉さんの会社の携帯に自分がかけたのだ。転送設定をしたのは、自分なのに。


「何やってんのよ……」


 改めて、メモリーから加倉さんのプライベート携帯の番号を引き出す。今度は、間違えないか確認してから、通話ボタンを押した。

 加倉さんは、なかなか出てくれない。もしかして、眠っているのだろうか。間を置いてかけ直した方が、良いかも知れない。

 そう思い、切りかけた時、加倉さんは出てくれた。


「麻美、何かあったのか?」


「いえ、それより大丈夫ですか?」


「なんとかな」


 春香ちゃんが言っていた通り、加倉さんは声が出ていない。少し、聞き取りにくい。これは、あまり喋らせない方が良いと判断し、早速本題に入る事にした。


「加倉さん、今日の約束覚えてます? とりあえず、今日の報告もあるんで行きます。ちゃんと、ご飯食べましたか? 薬も」


 あたしが喋っている間も、苦しそうに呼吸するのが電話口から聞こえた。何とかなっているとは、思えない。大丈夫ではなさそうだ。土日のお休みだけでは、復活してくれそうにない様に思えた。


「はぁ。なんとか、牛乳で薬を飲んだ。食欲が出ないからな」


「ダメじゃないですか。誰か呼んで作ってもらってくださいよ。何人か、スグに来てくれる人は、心当たりあるんじゃないですか? 月曜日には、復活して貰わないと。あ、それと、あたしが行くまでに、女の人は帰してくださいよ。また揉めるの嫌ですから」


「だったら、あさちゃん何とかして」


「だから、手軽な女呼んでください。そんでもって、用が済んだら帰って貰ってください」


「俺、どれだけヒドイ男なんだよ……」


「それだけ、酷いんです。けど、自覚あるんですね。もう、話さなくてイイですよ。声出てないんだし。とりあえず、約束通り夕飯はご馳走しますから。って言っても、ご馳走は食べられないですね。消化に負担が掛からない物に決まりです。じゃ、大人しく温かくして、汗かいててください」


 一方的に、電話を切った。加倉さんの反論を聞きたくなかった。そして、結論を出すのにも、何か、これで決められるという様な、スッキリとできる何かを提示して欲しかった。

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