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ホラー・ミステリ系の短編集

雨が降らなかったら……

作者: ハルカゼ
掲載日:2015/11/22

 ぼくは雨が、嫌いだ。

 濡れると、とても冷たいから。


「ねえ、どうする。傘、持ってないんだけど」

 小学校の昇降口で外の雨を眺める彩香が、そっと言った。


 彩香とはご近所さんで幼なじみである。

 いつも遊んでいる仲なのだ。

「どうするも何も、雨がやむのを待つしかないだろ。ぼくも傘は持ってないし」

 小学五年生にもなって、置き傘も用意しないなんて。

 騒いでいる同級生が次々と帰っていくなかで、ぼくたち二人は晴れるのを待った。


 ああ、雨って面倒だな。

 なんで、ぼくたちを帰らせてくれないのだろうか。

「じゃあ、健太。秘密基地に行くのは中止?」

「中止だ」

 

 秘密基地……。それはぼくと彩香だけが知っている場所。

 森の奥で作ったのだ。

 ゴミ置き場にあったソファーやテーブルなどを持っていき、それなりのものはできた。

 毎日、学校の帰りになると彩香と二人で寄っていた。

 そこでトランプをしたり、コンビニで買ったお菓子を食べてたりする。


 まあ、立ち入り禁止の場所なんだけどね。


 近くに工場があるから、危険なのかな?

 ぼくからすれば、まったく危険な場所だとは思わないけどね。


「これ、台風とか来てるんじゃない。すごい風だけど」

「かもね」

「早くやまないかな」

 ふと、秘密基地のことが心配になった。

 掃除とかしないとダメかもしれない。


 こうして、ぼくと彩香は雑談を交わしながら、雨がやむのを待った。


 しばらくすると、雨がやんだ。

 青い空には虹がかかっている。

「健太、やんだね」

「だな。帰ろっか」

 そう言って、ぼくと彩香はそろって昇降口から出ていった。


 もう、5時30分だ。

 とんだ時間ロスだったな。これだから、雨は嫌なんだ。

「晴れたから、秘密基地に行ってみない?」

「雨で心配だから見に行こうとぼくは思っていたけど」

「じゃあ、行こう!」

 こうして、ぼくたちは秘密基地に向かうことにした。


「今日は何するの?」

 彩香が無邪気な顔で言った。

「そうだな……。行ってから考えよう」

「何それ。無責任じゃない」

「だったら、彩香が考えろよ」

 そんなことを言っているうちに木々が増えて、気がつけば秘密基地の森のそばまで着いていた。


 ぼくが嫌いな雨のおかげで、秘密基地はボロボロだろう。

 いっこくも早く行きたかった。

 しかし、ぼくたちは森の中に入ろうとは思わなかった。

 いや、入れないのだ。だって、人混みができていたのだから。


「あれ、なんで人が集まってるの」

「さあ、ぼくにも分からない」

 首をかしげるしかない。

 よく見てみると警察官がたくさんいる。

 何事だろうか?


「君たち、危ないよ」

 近くにいた若い警察官の男性が腰をかがめて話しかけてきた。

 ぼくは何が起きたか気になり、

「何かあったんですか?」

「ああ、近くに工場があってね、そこでガス爆発が起きたんだ」

「えっ」

 ぼくと彩香はぽかんと口を開けていた。

 あんまりにも、この現実を受け止められなくて。


「1時間前に爆発したみたいだ。システムの不具合で起きたみたいなんだけど」

「……そうなんですか」

「しかし、気になることが1つだけあってね」

「気になること?」

「誰がやったのかは分からないけど、この先にソファーとかテーブルとかが置いてあったみたいでね。そこは完全に爆発の範囲内にあって完全に燃やされていたんだ」


 ぼくと彩香は目を合わせた。

 ぼくたちの秘密基地のことだ。


「立ち入り禁止なのにそんな物が置いてあったなんて、びっくりしたよ。誰かが使ってたのかな。まあ、負傷者がいなくて本当に良かったよ」

 そう言い残して、若い警察官の男性は去っていった。


 ぼくは彩香の方を見る。

 彼女はうつむいていた。

 秘密基地は燃やされたのだ。落ち込むのも無理はない。


 ただ、それよりも、ぼくたちは今日もこの秘密基地に行こうとしていたんだ。

 たまたま、2時間遅くなっただけで。

 1時間前に爆発したということは……。


 ぼくは澄みきった青い空を見上げた。

 もし雨が降っていなかったら、ぼくたちはどうなっていただろうか。


 そう考えると、背筋がぞっとした……。



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