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起こされる

「スウィーツ係さあーん!」

 その叫び声はさっきから何回繰り返されていたのか。私が聞こえたのはその最後のものだけだったので分からない。その言葉を聞いて、それが私のことだと分かるのにしばらく時間がかかった。私は眠り始めたところだった。和室の戸口の方に頭を向けて、布団の上に寝ていた。暑いので、掛け布団はかけずにバスタオルを腹にかけているだけだった。

「片付け方を説明するから!」

 呼ばれているのは分かったが、目が開かなかった。私は左側を下にしたまま横たわっていた。体を動かすこともできなかった。

 戸口の向こうには作業場があり、そこから仮眠に入ったばかりの私を呼んでいるのだった。私もついさっきまでそこで作業をしていた。ベッドくらいの大きさのステンレス製の作業台がいくつか並んでいた。そこで白衣で頭から足まで覆い、マスクをつけた格好で、私たちは作業をしていた。作業が終わると、なんという名前か忘れたが、使っていたものを作業台の横に片付けるのだった。ミシン箱のような直方体のもので、ちゃんと指定の場所に置いたはずだった。作業台とそれとがちょうど数センチほどの隙間を空けて中央合わせに平行に並んでいるはずだった。

 しかしなにか不備があったのだろう。その片付け方を説明しておく必要があるということなのだった。それで、眠り始めたところの私を起こそうとしているのだった。

 私はようやく目を開くことができた。目の前には蜘蛛がぶら下がっていた。部屋は薄暗くて、距離感がつかめないのでどれくらい目の前かはわからなかったけれど、私の視野の中心に蜘蛛が糸からぶら下がっているようだった。糸が下がっているのは、天井からか、タオルを干してある放射状の物干し器からか。私はその蜘蛛をぼんやり見ながら、金縛りにあったまま動けなかった。

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