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地図を見ないで走る

 私ともうひとり、自転車に乗って走っていた。特別な車両ではなくて、ごく普通のカゴのついたものに乗って、縦に並んで走っていた。神社のところから垂直に進んでいけば、私の住んでいるところまでたどり着けるはずだった。私たちはようやく広大な境内をではずれて、池の横の砂利道を抜け、鉄の鎖で隔てられた歩道を走ってくると、目の前に土産物屋があった。

 初めての道なので、少し自信がなかった。私たちは自転車を降りて、東屋のように屋根と木製

ベンチがある一角で降りて、検討することにした。

「向きが違ったみたいですね。これだと海のほうに向かってる感じです。東の方へ行かないと」

 もうひとりが、地図を広げて説明をし始めた。私はスマートフォンを出して調べようかと思っていた矢先だった。私は腹を立てた。

「地図を見るやつは嫌いだ」

「でも」

「だったらひとりでいけよ。私はその十分後から出発する」

 同行人は諦めて自転車にまたぎ、出発しようとした。ふと見ると、木目のくすんだ多角形のテーブルの上に、ビニール袋が二つ乗っかったままだった。私とふたりで、ひとつずつかごに入れて運んでいたのだった。

「持って行けよ。うちについたらこれを渡してどっかへ行け。親に言えば少しくらいはお金をもらえるから」

 もう黙ったまま、ビニール袋の荷物をカゴに乗せて、自分で地図を示した方向に走り去っていった。

 私も土産物屋の中で自転車に乗り、走り始めた。土産物屋の売り子が近所の農家の人常磐をしていた。

 私は初め、右側の上り坂になっている車道の脇を走っていった。登りかかったところで、後ろから大型バスが追い抜いていった。私は止まって待たなくてはならなかった。バスが去り、いざ行こうとすると、今度は走っていった自動車のホイールが目の間を横切っていった。

 これは違うということだな、と私は思った。そこで引き返して公園のところまで戻った。

「ここにゴミを捨てたらダメですよ」

 清掃員の制服を着た人物が私にそう注意した。私の荷物をゴミだと思ったのだろうか。

「捨てませんよ」

 周りを見渡してみると、坂道の横の芝生と芝生の間に細いサイクリングロードのような道があった。私はそこを走っていった。数百メートル走ると、前の方にゲートがあり、係官が立っていた。私はそこでどちらに行けば街道に出るのかと尋ねた。左に曲がってしばらく行けば、東へ行く道に出るとのことだった。私は確信してその道を走ることにした。


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