ティオの決意
前世の記憶について話した翌日。
ティオは、一人で考え込んでいた。
三人は、少し離れた場所でシロと遊んでいる。
「ティオ、浮かない顔だな」
ダリウスが、隣に座った。
「......昨日の話が、まだ心に残っていてな」
「そうか」
ダリウスは、空を見上げた。
「君は——この子たちのことを、どう思っている?」
「......どう、とは?」
「保護者として見ているのか? それとも——」
ダリウスは、ティオを見た。
「家族として、見ているのか?」
「......」
ティオは、言葉に詰まった。
2
「最初は——ただの保護者だった」
ティオは、三人を見ながら話し始めた。
「この子たちを、無事に守ればいい。それだけだった」
「......」
「でも——いつの間にか、変わっていた」
ティオの声は、震えていた。
「この子たちの笑顔を見ると——嬉しくなる」
「......」
「この子たちが泣いていると——胸が痛む」
ティオは、拳を握った。
「この子たちが傷つくのが——怖い」
「それは——」
ダリウスは、小さく笑った。
「親と、同じだ」
「......親」
ティオは、自分の手を見た。
「オレは——この子たちの、親なのか?」
「少なくとも——この子たちにとって、君は家族だ」
ダリウスは、三人を見た。
「そして——君も、この子たちを家族だと思っている」
「......」
ティオは、黙り込んだ。
「でも——」
ティオは、苦しそうに言った。
「この子たちには、本当の家族がいる」
「......ああ」
「パパや、ママが——元の世界で、待っている」
ティオの目から、涙が零れた。
「オレは——ただの、代わりでしかない」
「......」
「いつか——この子たちは、元の世界に帰る」
ティオは、拳を握った。
「そして——オレのことは、忘れるんだ」
「......本当に、そう思うか?」
ダリウスが尋ねた。
「......え?」
「この子たちが——君のことを、忘れると思うか?」
「......」
ティオは、答えられなかった。
「この子たちは——君を、家族だと言った」
ダリウスは、続けた。
「それは——決して、忘れられないものだ」
「......」
「たとえ、元の世界に帰っても——君のことを、ずっと覚えているだろう」
ダリウスの言葉に、ティオは涙を流した。
「ティオにいちゃん!」
ハルトが、駆け寄ってきた。
「どうした?」
「ハルね、おおきなおさかな、みつけたの! いっしょにみよ!」
「ああ、行くよ」
ティオは、涙を拭いて立ち上がった。
川辺で、ユイとレイアが待っていた。
「ティオにいちゃん、みて! おっきいよ!」
確かに——大きな魚が、川を泳いでいた。
「本当だ。大きいな」
「すごいね!」
三人は、目を輝かせていた。
ティオは——その無邪気な姿を見て、胸が温かくなった。
この子たちの笑顔を——守りたい。
ティオは——改めて、そう思った。
その夜、ティオは一人で考え込んでいた。
「もし——この子たちが、元の世界に帰ったら......」
ティオは、焚き火を見つめた。
「オレは——どうなるんだろう」
寂しさ。空虚感。
それらが、ティオの心を侵食していく。
「......でも」
ティオは、三人の寝顔を見た。
「それでも——この子たちを、帰してあげたい」
ティオは、決意を新たにした。
「この子たちの幸せが——オレの幸せだ」
だから——
「どんなに寂しくても——笑顔で、送り出してやる」
それが——自分の、役目だ。
翌朝、ティオは三人に声をかけた。
「ハル、ユイ、レイア」
「なあに?」
「オレは——お前たちを、絶対に守る」
ティオは、真剣な表情で言った。
「どんな敵が来ても——どんな困難があっても——」
ティオは、三人を見た。
「お前たちを——守り抜く」
「......ティオにいちゃん」
「それが——オレの、決意だ」
ティオの言葉に、三人は笑顔で頷いた。
「うん! ティオにいちゃん、ありがとう!」
「ティオにいちゃん、だいすき!」
「......ずっと、いっしょ」
三人の言葉に、ティオは涙を流した。
「ああ——ずっと、一緒だ」
出発の準備をしていると、ダリウスが声をかけた。
「ティオ、決意は固まったか?」
「......はい」
ティオは、頷いた。
「この子たちを——最後まで、守り抜きます」
「そうか」
ダリウスは、満足そうに笑った。
「それでいい」
「でも——」
ティオは、ダリウスを見た。
「もし、この子たちが元の世界に帰る日が来たら......」
「......」
「オレは——どうすれば、いいんでしょうか」
ティオの声は、震えていた。
「笑顔で、送り出すと決めました。でも——」
「不安か?」
「......はい」
ティオは、正直に答えた。
「この子たちがいなくなったら——オレは、どうなるんだろうって」
「......」
ダリウスは、少し考えてから答えた。
「その時は——その時だ」
「......え?」
「今は——考えても、仕方ない」
ダリウスは、ティオの肩を叩いた。
「今は——この子たちと、一緒にいる時間を、大切にしろ」
「......はい」
ティオは、頷いた。
馬車の中で、三人はシロと遊んでいる。
「クゥーン!」
「シロ! まてまて!」
ティオは、その様子を見て——小さく笑った。
この子たちと一緒にいる時間——
それは、かけがえのない、宝物だ。
いつか——この子たちが、元の世界に帰る日が来るかもしれない。
でも——今は、この時間を、大切にしよう。
ティオは——そう決めた。
それが——自分にできる、最善のことだから。




