家族の形
黒い影の村を出て二日後。
夜、焚き火の周りで、三人は静かに座っていた。
いつもより、元気がない。
「どうしたんだ? 三人とも」
ティオが尋ねると、ハルトが小さく答えた。
「......ハルね、ゆめをみたの」
「夢?」
「うん。パパの、ゆめ」
ハルトの目には、涙が浮かんでいた。
「パパが——ハルのなまえを、よんでたの」
「......そうか」
ティオは、ハルトを抱きしめた。
「パパに、会いたいか?」
「......うん」
ハルトは、素直に頷いた。
「パパと、とくさつばんぐみ、みたいな」
「......」
ティオは、何も言えなかった。
ユイも、涙を流していた。
「ユイも......ゆめをみたの」
「ユイも?」
「うん。ママが——ユイのこと、さがしてた」
ユイは、涙を拭いながら続けた。
「『ユイちゃん、どこ?』って——なきながら、さがしてた」
「......」
「ユイ、ママに、あいたい......」
ユイは、声を上げて泣き始めた。
ティオは、ユイも抱きしめた。
レイアは、静かに焚き火を見つめていた。
「レイアも——夢を見たのか?」
「......うん」
レイアは、小さく頷いた。
「おかーさんの、ゆめ」
「......どんな夢だった?」
「おかーさんが——レイアに、いってたの」
レイアの目から、涙が零れた。
「『だいじょうぶ。ママは、ずっとレイアのそばにいるよ』って」
「......」
「でも——おかーさん、いない」
レイアは、ティオを見上げた。
「レイア、かえりたい。もとのせかいに、かえりたい」
「......レイア」
ティオは、三人を抱きしめた。
三人は——声を上げて、泣いた。
ティオは——ただ、三人を抱きしめることしかできなかった。
しばらくして、三人は泣き止んだ。
「......ごめんなさい」
ハルトが、小さく謝った。
「謝ることないよ」
ティオは、ハルトの頭を撫でた。
「パパやママに会いたいって思うのは——当然だ」
「......でも」
「でも?」
「ハル——ティオにいちゃんのこと、すきだよ」
ハルトは、ティオを見上げた。
「だから——かえりたいけど、かえりたくない」
「......」
ティオは、胸が締め付けられた。
ユイも、頷いた。
「ユイも——ママにあいたい。でも——」
ユイは、ハルトとレイアを見た。
「ハルとレイアちゃんと、はなれたくない」
「......ユイちゃん」
レイアも、涙を流した。
「レイアも——おかーさんに、あいたい。でも——」
レイアは、ティオを見た。
「ティオにいちゃんと、はなれたくない」
「......」
ティオは——何も言えなかった。
ダリウスが、近づいてきた。
「......聞こえていたぞ」
「ダリウスさん......」
「この子たちは——辛い選択を、迫られているのだな」
ダリウスは、三人を見た。
「元の世界に帰りたい。でも——ここにいる仲間とも、離れたくない」
「......はい」
「だが——」
ダリウスは、三人の前に膝をついた。
「君たちは——まだ、選ぶ必要はない」
「......え?」
三人は、ダリウスを見た。
「今は——この世界で、精一杯生きればいい」
ダリウスは、優しく笑った。
「そして——いつか、元の世界に帰る方法が見つかったら——その時に、考えればいい」
「......でも」
「大丈夫だ」
ダリウスは、三人の頭を撫でた。
「君たちが、どんな選択をしても——我々は、応援する」
「......ほんと?」
「ああ、本当だ」
ダリウスの言葉に、三人は少し笑顔を取り戻した。
ティオは、三人を見た。
「ハル、ユイ、レイア」
「......うん」
「オレは——お前たちに、元の世界に帰ってほしい」
「......え?」
三人は、驚いた表情を浮かべた。
「だって——お前たちには、パパやママがいる」
ティオは、続けた。
「家族が、待ってるんだ」
「......でも」
「でも——それまでは」
ティオは、三人を抱きしめた。
「オレが——お前たちの家族になる」
「......ティオにいちゃん」
「だから——元の世界に帰るまで、オレがお前たちを守る」
ティオの目からも、涙が零れた。
「それが——オレの、役目だから」
「......うん」
三人は、ティオにしがみついた。
「ティオにいちゃん、だいすき」
「ずっと、いっしょ」
「......ありがとう」
三人の言葉に、ティオは涙を流した。
翌朝、三人は少し元気を取り戻していた。
「ティオにいちゃん、おはよう!」
「ああ、おはよう」
「きょうは、なにするの?」
「今日は——少し、ゆっくり進もう」
ティオは、笑顔で答えた。
三人は、シロと一緒に遊び始めた。
「シロ! まてー!」
「クゥーン!」
ダリウスが、ティオの隣に座った。
「昨夜は——辛かったな」
「......はい」
ティオは、三人を見た。
「この子たちは——本当は、ここにいるべきじゃないんです」
「......」
「元の世界に——帰してあげたい」
ティオの声は、震えていた。
「でも——方法が、分からない」
「そうだな......」
ダリウスは、深く息を吐いた。
「だが——いつか、必ず見つかる」
「......本当に?」
「ああ。そして——その時が来たら」
ダリウスは、ティオを見た。
「君は——笑顔で、送り出してやれ」
「......はい」
ティオは、頷いた。
その日の昼、川辺で休憩を取った。
三人は、川で遊んでいる。
「ハル、みて! おさかな!」
「ほんとだ!」
「......きれい」
三人は、笑顔で遊んでいた。
ティオは、その様子を見て——少し安心した。
「元気になったようだな」
「ええ。子供は——切り替えが早いですね」
「ああ。それが、子供の強さだ」
ダリウスは、笑った。
「だが——心の中には、まだ寂しさが残っているだろう」
「......そうですね」
「だから——我々が、支えなければ」
「......はい」
ティオは、三人を見た。
この子たちを——絶対に、守る。
そして——いつか、元の世界に帰してあげる。
それが——自分の、使命だ。
夕方、焚き火の周りで。
ハルトが、ティオに話しかけた。
「ねえ、ティオにいちゃん」
「ん?」
「ハルね、おもったの」
「何を?」
「ここが——いまの、おうちなんだって」
ハルトは、笑顔で言った。
「パパは、もとのせかいにいる。でも——」
ハルトは、ティオと、ユイと、レイアを見た。
「ティオにいちゃんと、ユイと、レイアが、いまの、かぞくなんだって」
「......ハル」
ティオは、ハルトを抱きしめた。
「ありがとう」
ユイとレイアも、頷いた。
「うん。わたしたちは、かぞく」
「......うん。かぞく」
三人は——笑顔で、抱き合った。
ティオは——涙を堪えながら、三人を見守った。
この子たちは——元の世界に、家族がいる。
でも——今は、ここが家族なんだ。
ティオは——そう思った。
遅くなりすみません
急に生えてくる飲み会、キライ




