ユイトとレイアの絆
村を出て二日後、一行は川辺で休憩を取った。
川の水は澄んでいて、小さな魚が泳いでいる。
「わあ、きれい!」
ユイが、川辺に座った。
「おさかな、いっぱいいるね」
「クゥーン」
シロも、川の水を覗き込んでいる。
レイアは、少し離れた場所で、野花を摘んでいた。
「......このおはな、きれい」
レイアは、小さな花束を作っている。
ハルトは、ティオとダリウスと一緒に、木剣の練習をしていた。
「えい! やー!」
「いい感じだ、ハル。もっと腰を入れて」
「こう?」
「ああ、そうだ」
ティオは、ハルトに木剣の振り方を教えている。
ユイは、川辺でしばらく魚を見ていたが——ふと、レイアの方を見た。
「......レイアちゃん、ひとりだ」
ユイは、立ち上がってレイアのところへ歩いた。
「レイアちゃん、なにしてるの?」
「......おはな、つんでる」
レイアは、花束を見せた。
「わあ、きれい!」
ユイは、目を輝かせた。
「レイアちゃん、じょうずだね」
「......ありがとう」
レイアは、小さく笑った。
ユイは、レイアの隣に座った。
「ねえ、レイアちゃん」
「......なに?」
「レイアちゃんは、どうしていつもしずかなの?」
「......?」
レイアは、首を傾げた。
「ユイね、おもうの。レイアちゃんは、いつもしずかで、あんまりおはなししないよね」
「......そうかな」
「うん。でも——それが、レイアちゃんらしいって、おもう」
ユイは、笑顔で言った。
「レイアちゃんは、しずかだけど——やさしいもん」
「......」
レイアは、ユイを見た。
「ユイちゃんも、やさしいよ」
「え?」
「いつも、みんなをなおしてあげてる」
レイアは、花束をユイに差し出した。
「これ、ユイちゃんに、あげる」
「ほんと!? ありがとう!」
ユイは、嬉しそうに花束を受け取った。
二人は——しばらく、静かに川を見つめていた。
「ねえ、レイアちゃん」
「......なに?」
「レイアちゃんは——まえのせかいのこと、おぼえてる?」
「......うん。ちょっとだけ」
「どんなこと?」
レイアは、少し考えてから答えた。
「......おかーさんのこと。やさしくて、あったかくて」
「おかーさん......」
ユイも、少し寂しそうな顔をした。
「ユイも、ママのこと、おぼえてる」
「......どんなひと?」
「えっとね——ユイが、ころんでいたいときに、『いたいのいたいのとんでけ』っていってくれたの」
ユイは、笑顔で続けた。
「だから、ユイも、おなじことしてるの。ママみたいに」
「......そっか」
レイアは、小さく笑った。
「ユイちゃんの、ママも、やさしいひとなんだね」
「うん!」
ユイは、元気よく頷いた。
「でも——いまは、ママいないから、さみしい」
「......うん」
「でも——」
ユイは、レイアの手を握った。
「レイアちゃんがいるから、さみしくない」
「......ユイちゃん」
「レイアちゃんは、ユイのいもうとみたいだもん」
「......いもうと?」
「うん! だから、ずっといっしょだよ」
ユイの言葉に、レイアの目から涙が零れた。
「......ユイちゃん、ありがとう」
その時、川の向こうから声が聞こえた。
「たすけて......!」
「え?」
ユイとレイアは、川を見た。
川の向こう岸で、小さな女の子が泣いていた。
「どうしたの!?」
ユイが叫んだ。
「お、おねえちゃんが......かわに、おちて......!」
女の子は、川を指差した。
川の中——流れの速い場所で、もう一人の女の子が、必死に岩に掴まっていた。
「たすけて......!」
「しまった!」
ティオが駆け寄ってきた。
「ダリウスさん!」
「分かっている!」
ダリウスも、川に向かって走った。
だが——川の流れは速い。すぐには助けられない。
「まにあわない......!」
ティオが焦った時——
「ユイ、いく!」
ユイが、川に飛び込もうとした。
「ユイ! 危ない!」
ティオが止めようとしたが——
「だいじょうぶ!」
ユイは、川に入った。
だが——流れが速すぎて、ユイも流されそうになる。
「ユイ!」
レイアが、叫んだ。
「......まって」
レイアは、目を閉じた。
次の瞬間——川の流れが、緩やかになった。
「これは......!」
ティオは、驚愕した。
レイアが——魔法で、川の流れを制御していた。
「......いまのうちに」
レイアの言葉に、ユイは女の子のところへ泳いでいった。
「だいじょうぶだよ! つかまって!」
ユイは、女の子の手を掴んだ。
ティオとダリウスが、二人を引き上げた。
「大丈夫か!?」
「うん......」
女の子は、震えていた。
ユイが、女の子に手を当てた。
「いたいの、いたいの、とんでけ」
女の子の擦り傷が、治っていく。
「ありがとう......ございます......」
女の子は、涙を流しながら頭を下げた。
向こう岸の女の子も、駆け寄ってきた。
「おねえちゃん! よかった!」
二人は、抱き合った。
ティオは、レイアの方を見た。
「レイア......お前、川の流れを......」
「......うん。ちょっとだけ」
レイアは、疲れた様子で座り込んだ。
「すごいな......お前、そんなことまでできるのか」
「......ユイちゃんを、たすけたかったから」
レイアは、ユイを見た。
「ユイちゃんが、いなくなったら——さみしいもん」
「......レイアちゃん」
ユイは、レイアを抱きしめた。
「ありがとう!」
「......どういたしまして」
二人は——笑顔で抱き合っていた。
その夜、焚き火の周りで。
ユイとレイアは、一緒に座っていた。
「ねえ、レイアちゃん」
「......なに?」
「きょう、ありがとうね」
「......うん」
「レイアちゃんがいなかったら、ユイ、ながされてたかも」
「......でも、ユイちゃんも、あのこをたすけようとしてた」
レイアは、ユイの手を握った。
「ユイちゃんは、ゆうき、あるね」
「そうかな?」
「うん。ユイちゃんは——だれかをたすけるためなら、じぶんがあぶなくても、がんばるもん」
「......えへへ」
ユイは、照れくさそうに笑った。
「でも、レイアちゃんも、すごいよ」
「......?」
「レイアちゃんは、いつもみんなのこと、みてるでしょ?」
「......うん」
「そして——みんなが、こまってるとき、たすけてくれる」
ユイは、レイアの目を見た。
「レイアちゃんは——やさしいもん」
「......ユイちゃんも、やさしいよ」
「えへへ」
二人は、笑い合った。
ティオは、その様子を見て——小さく笑った。
「あの二人——本当に、姉妹みたいだな」
「ああ」
ダリウスも、頷いた。
「あの二人は——お互いを、支え合っている」
「......そうですね」
翌朝、出発の準備をしていると、昨日助けた姉妹が訪ねてきた。
「あの......」
「ああ、昨日の」
ティオは、二人を見た。
「もう、大丈夫か?」
「はい! ありがとうございました!」
姉妹は、深々と頭を下げた。
そして、妹の方が——ユイとレイアに、花束を差し出した。
「これ......おれいです」
「わあ! ありがとう!」
ユイは、嬉しそうに花束を受け取った。
レイアも、花束を受け取って——小さく笑った。
「......ありがとう」
姉妹は、手を振りながら去っていった。
ユイは、花束を見つめた。
「きれいだね、レイアちゃん」
「......うん」
「ずっと、もっておこうね」
「......うん」
二人は、花束を大切そうに持っていた。
ハルトが、二人に近づいた。
「ユイ、レイア、なかいいね!」
「うん! レイアちゃんは、ユイのいもうとだもん!」
「......ユイちゃんは、おねえちゃん」
二人は、笑顔で答えた。
ティオは、三人を見た。
ハルトは、元気で明るい。
ユイは、優しくて温かい。
レイアは、静かで優しい。
三人は——それぞれ違うけれど、お互いを大切に思っている。
それが——この三人の、絆なんだ。
馬車の中で、ユイとレイアは隣同士に座っていた。
「ねえ、レイアちゃん」
「......なに?」
「これから——ずっと、いっしょだよね?」
「......うん」
「もとのせかいに、かえれても?」
「......」
レイアは、少し考えた。
「もし、かえれたら——ユイちゃんは、かえりたい?」
「......うん。ママに、あいたい」
「......そっか」
「でも——」
ユイは、レイアの手を握った。
「レイアちゃんとも、はなれたくない」
「......ユイちゃん」
「だから——もし、かえれても、ずっといっしょがいいな」
ユイの言葉に、レイアは涙を流した。
「......うん。ずっと、いっしょ」
二人は、抱き合った。
ティオは、その様子を見て——少し寂しそうな顔をした。
「......元の世界に、帰れる日が来るのだろうか」
「分からん」
ダリウスは、空を見上げた。
「だが——その日が来たとき、この子たちは——どんな選択をするのだろうな」
「......」
ティオは、三人を見た。
その答えは——まだ、誰にも分からなかった。
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