ハルトの成長と葛藤
アルベルグを出て三日後、一行は小さな村に立ち寄った。
村は、静かで平和な雰囲気に包まれていた。戦争の影は、ここまでは届いていないようだ。
「ティオにいちゃん、このむらきれいだね」
ユイが、窓の外を見て言った。
「ああ。のどかないい村だ」
馬車を降りると、村人たちが近づいてきた。
「ようこそ、旅の方々」
村長らしき老人が、頭を下げた。
「一晩、泊めていただけますか?」
「もちろんです。どうぞ、こちらへ」
一行は、村の宿に案内された。
部屋に荷物を置くと、ハルトが外に出たがった。
「ティオにいちゃん、そとであそびたい!」
「そうだな。少し、村を見て回ろう」
「やったー!」
三人は、シロと一緒に外へ出た。
村の広場では、子供たちが遊んでいた。
「ねえねえ、いっしょにあそぼ!」
ハルトが、声をかけた。
「いいよ!」
村の子供たちは、快く受け入れてくれた。
ハルトは、子供たちと一緒に走り回った。
「おにごっこしよー!」
「いいね!」
子供たちは、笑顔で遊び始めた。
ティオは、その様子を見守っていた。
「ハルは——本当に、子供らしいな」
「ああ。あの無邪気さが、ハル殿の魅力だ」
ダリウスも、笑っていた。
その時——
「きゃあ!」
悲鳴が聞こえた。
「何だ!?」
ティオは、声のする方へ駆け出した。
村の入口に——大きな魔物が現れていた。
「オーガ......!」
オーガは、村に向かって歩いてくる。その手には、巨大な棍棒。
「村人を避難させろ!」
ダリウスが、叫んだ。
「はい!」
ティオは、村人たちを誘導し始めた。
その時——ハルトが、オーガの前に立った。
「ハル!?」
「まって、ティオにいちゃん!」
ハルトは、オーガを見上げた。
「ハルが——やっつける!」
「待て、ハル! 一人では——」
だが、ハルトはもう走り出していた。
「ゴーバスターズ、レッツゴー!」
ハルトが、両手を前に突き出した。青い光の弾が、オーガに向かって飛んでいく。
「ガアアアッ!」
オーガは、光の弾を受けて怯んだ。
「やった!」
ハルトは、嬉しそうに笑った。
だが——オーガは、まだ立っている。
「ガアアアアアッ!」
オーガが、怒り狂って襲いかかってきた。
「ハル、危ない!」
ティオが駆け寄ろうとした——その時。
「ウルトラダイナマイト!」
ハルトが、両腕をクロスさせてエネルギーを放った。
その威力は——凄まじかった。
オーガは、吹き飛ばされ——村の建物に激突した。
「ガ......ガ......」
オーガは、動かなくなった。
「やった......」
ハルトは、呆然としていた。
だが——建物は、大きく損傷していた。壁が崩れ、屋根が落ちている。
「あ......」
ハルトは、建物を見た。
「ハルが......こわしちゃった......」
「ハル......」
ティオが近づいた時、建物の中から声が聞こえた。
「誰か......! 助けて......!」
「中に人が!?」
ティオとダリウスは、急いで建物の中に入った。
中には、怪我をした村人がいた。
「大丈夫ですか!?」
「......足が、挟まって......」
ティオとダリウスは、村人を救出した。
ユイが、駆け寄ってきた。
「いたいの、いたいの、とんでけ」
村人の傷が、治っていく。
「ありがとう......ございます......」
村人は、安堵の表情を浮かべた。
だが——ハルトは、俯いていた。
「......ハルのせいで......」
その夜、宿の部屋で。
ハルトは、ベッドに座ったまま、黙っていた。
「ハル、元気ないね」
ユイが、心配そうに声をかけた。
「......」
ハルトは、答えなかった。
ティオが、ハルトの隣に座った。
「ハル、さっきのこと——気にしてるのか?」
「......うん」
ハルトは、小さく頷いた。
「ハル、まものをやっつけようとしただけなのに......たてものを、こわしちゃった」
「......」
「ひとも、ケガさせちゃった」
ハルトの目から、涙が零れた。
「ハルの、ちからって......こわい」
「......ハル」
ティオは、ハルトを抱きしめた。
「ハルの力は——確かに、強い。でも——」
「......でも?」
「それは、悪いことじゃない」
ティオは、ハルトの目を見た。
「ハルは、村を守ろうとした。それは、正しいことだ」
「でも......」
「確かに、建物を壊してしまった。人も怪我をさせてしまった」
ティオは、続けた。
「でも——それは、ハルが悪いんじゃない。ハルは、まだ力の使い方を学んでいる最中なんだ」
「......ちからのつかいかた?」
「ああ。強い力を持つということは——その力を、どう使うか考えなければならないということだ」
ティオは、ハルトの頭を撫でた。
「ハルは——これから、もっと強くなる。そして——その力を、上手に使えるようになる」
「......ほんと?」
「ああ、本当だ」
ティオは、笑顔で頷いた。
「だから——今は、失敗を恐れないでくれ」
「......うん」
ハルトは、小さく頷いた。
翌朝、ハルトは村長のところへ行った。
「あの......ごめんなさい」
ハルトは、深々と頭を下げた。
「たてものを、こわしちゃって......」
「いや、いいんだよ」
村長は、優しく笑った。
「君は、村を守ってくれたんだ。ありがとう」
「でも......」
「建物は、また建て直せばいい。でも——君がいなければ、村人が死んでいたかもしれない」
村長は、ハルトの頭を撫でた。
「君の力は——村を救ったんだよ」
「......」
ハルトの目から、涙が零れた。
「ありがとう......ございます......」
村人たちも、近づいてきた。
「勇者様、ありがとうございました」
「おかげで、助かりました」
村人たちが、口々に感謝の言葉を述べた。
ハルトは——少しだけ、笑顔を取り戻した。
村を出発する時、ダリウスがハルトに声をかけた。
「ハル殿、少しいいか?」
「......うん」
ダリウスは、ハルトの前に膝をついた。
「君の力は——確かに、強い」
「......うん」
「だが——その力は、呪いじゃない」
「......のろい?」
「ああ。強い力を持つことを——恐れてはいけない」
ダリウスは、ハルトの目を見た。
「私も、昔は強い力を恐れていた。この力で、誰かを傷つけてしまうのではないかと」
「......ダリウスおじさんも?」
「ああ。だが——ある人に、言われたんだ」
ダリウスは、遠くを見つめた。
「『力は、使う者の心次第だ』と」
「......ちからは、つかうひとの、こころしだい?」
「そうだ。強い力を持っていても——それを、誰かを守るために使えば、それは正しい力だ」
ダリウスは、ハルトの肩に手を置いた。
「君の力は——誰かを守るための、力だ」
「......」
ハルトは、じっとダリウスを見つめた。
「だから——自信を持て。君の力は——正しい」
「......うん」
ハルトは、力強く頷いた。
馬車の中で、ハルトは木剣を握っていた。
「ティオにいちゃん」
「ん?」
「ハル、もっとつよくなりたい」
「......そうか」
「でも——つよくなるだけじゃ、ダメなんだよね」
ハルトは、木剣を見つめた。
「ちからを、ちゃんとつかえるように、ならないと」
「......ああ、そうだな」
ティオは、ハルトの頭を撫でた。
「じゃあ——これから、一緒に練習しよう」
「ほんと!?」
「ああ。ティオにいちゃんが、教えてあげる」
「やったー!」
ハルトは、嬉しそうに笑った。
ユイとレイアも、笑顔で見ていた。
「ハル、げんきになったね」
「......うん。よかった」
三人は——また、いつもの笑顔を取り戻していた。
ティオは、その様子を見て——小さく笑った。
この子たちは——失敗しても、立ち上がる。
そして——また、前に進む。
それが——この子たちの強さだ。
その夜、焚き火の周りで。
ティオとダリウスは、話していた。
「ハルは——今日、大きく成長したな」
「ええ。力の意味を——少しだけ、理解したようです」
「ああ」
ダリウスは、空を見上げた。
「強い力を持つということは——重い責任を持つということだ」
「......そうですね」
「だが——あの子は、まだ五歳だ。その責任を——完全に理解するのは、難しい」
「はい」
「だから——我々が、支えなければならない」
ダリウスは、ティオを見た。
「君は——よくやっている」
「......ありがとうございます」
ティオは、焚き火を見つめた。
「でも——まだまだ、不安です」
「当然だ。親なら——誰でも、子供のことは不安だ」
「親......」
ティオは、三人を見た。
三人は、シロと一緒に眠っている。
「......オレは、この子たちの親じゃないですけど」
「いや——君は、親も同然だ」
ダリウスは、笑った。
「この子たちにとって——君は、なくてはならない存在だ」
「......」
ティオは、小さく笑った。
そして——三人の寝顔を、静かに見守った。
【作者からのお願いです】
・面白い!
・続きが読みたい!
・更新応援してる!
と、少しでも思ってくださった方は、
【広告下の☆☆☆☆☆をタップして★★★★★にし ていただけると嬉しいです!】
皆様の応援が作者の原動力になります!
何卒よろしくお願いします




