ヴェルナの罠
その夜——魔王城。
ヴェルナは、地図を広げながら、邪悪な笑みを浮かべていた。
「計画は、順調に進んでいる......」
地図には、アルベルグの街が印されている。
「勇者たちは、今、アルベルグにいる。そして——」
ヴェルナは、別の場所を指差した。
「ここに、罠を仕掛けた」
部下の魔族が、前に出た。
「ヴェルナ様、しかし——直接勇者を狙わないのですか?」
「愚か者め」
ヴェルナは、冷たく言った。
「あの幼児たちは、予測不能だ。直接戦えば、我々が敗れる」
「では......」
「だから——周囲から、崩すのだ」
ヴェルナは、地図の別の場所を指差した。
「保護者の青年——ティオ・ランベール。そして、護衛の騎士——ダリウス」
「あの二人を......」
「ああ。この二人を——幼児たちから、引き離す」
ヴェルナは、笑った。
「そして——孤立した幼児たちを、恐怖で支配する」
「恐怖......ですか?」
「そうだ。あの幼児たちは、まだ子供だ。恐怖に弱い」
ヴェルナは、邪悪な笑みを浮かべた。
「保護者を失った恐怖——それが、あの幼児たちの心を折る」
翌朝、ティオたちは街の宿で目を覚ました。
「おはよう、ティオにいちゃん!」
ハルトが、元気よく挨拶した。
「ああ、おはよう」
「きょうは、なにするの?」
「今日は——少し、街を見て回ろうと思う」
「やったー!」
三人は、嬉しそうだ。
朝食を食べ終わると、ダリウスが部屋に入ってきた。
「ティオ、少し話がある」
「はい?」
「街の外れで——不審な動きがあるとの報告を受けた」
「不審な動き......?」
「ああ。魔族の気配がする、と」
ダリウスの表情は、険しかった。
「私が、確認に行く。君は、子供たちと一緒に街にいてくれ」
「分かりました。気をつけてください」
「ああ」
ダリウスは、部屋を出ていった。
ティオは、三人を見た。
「さあ、街に行こう」
「うん!」
街の市場を歩いていると、一人の男が近づいてきた。
「あの......すみません」
「はい?」
ティオは、男を見た。商人のような格好をしている。
「あなたは——勇者様の保護者の方ですか?」
「ええ、そうですが......」
「実は——お願いがあるのです」
男は、困った顔をした。
「私の娘が——森で迷子になってしまいまして......」
「迷子......?」
「はい。助けを求めても、誰も来てくれなくて......どうか、勇者様のお力を......」
男の目には、涙が浮かんでいた。
「......分かりました」
ティオは、頷いた。
「すぐに、探しに行きましょう」
「ありがとうございます!」
男は、深々と頭を下げた。
ティオは、三人を連れて、男の後を追った。
森に入ると——男の様子が、変わった。
「......ここだ」
男は、森の奥を指差した。
「あの......娘さんは?」
「ああ——」
男が振り返った——その瞬間、男の姿が変わった。
肌が灰色になり、角が生え、翼が広がる。
「魔族......!」
ティオは、剣を抜いた。
「フフフ......罠に、かかったな」
魔族——変装していた男は、笑った。
「貴様ら——ヴェルナ様の計画通りだ」
「計画......?」
その時、森の中から、複数の魔族が現れた。
「囲まれた......!」
ティオは、三人を庇った。
「ハル、ユイ、レイア! オレの後ろに!」
「うん!」
三人は、ティオの後ろに隠れた。
魔族たちが、一斉に襲いかかってきた。
「くそっ!」
ティオは、剣で応戦する。だが——相手は五人。一人で戦うのは、厳しい。
「ティオにいちゃん!」
ハルトが、叫んだ。
「大丈夫だ! お前たちは——」
その時、魔族の一人が、三人に向かって走った。
「子供たちを捕らえろ!」
「させるか!」
ティオは、魔族の前に立ちはだかった。
だが——その隙に、別の魔族がティオを攻撃した。
「ぐあっ!」
ティオは、地面に倒れた。
「ティオにいちゃん!」
三人が、駆け寄ろうとした——が。
「動くな!」
魔族が、三人を囲んだ。
「......」
三人は、恐怖に震えていた。
その時——
「そこまでだ!」
ダリウスが、森の中から現れた。
「ダリウスさん!」
「ティオ、無事か!?」
「はい......何とか......」
ダリウスは、魔族たちに向かって剣を構えた。
「貴様ら——卑怯な真似を!」
「フフフ......卑怯? 戦いに、卑怯もクソもない」
魔族のリーダーが、笑った。
「我々の目的は——勇者たちを、恐怖で支配することだ」
「恐怖......?」
「そうだ。あの幼児たちは——保護者がいなければ、ただの子供。恐怖に怯える、弱い存在だ」
魔族は、三人を見た。
「さあ、泣き喚け。助けを求めろ」
「......」
三人は、黙っていた。
ハルトが——前に出た。
「......ハルは」
「ん?」
「ハルは——こわくない!」
ハルトは、涙を堪えながら叫んだ。
「だって——ティオにいちゃんと、ダリウスおじさんがいるもん!」
「......フン、強がりを」
「つよがりじゃない!」
ハルトは、魔族を睨んだ。
「ハルたちは——ひとりじゃない!」
その言葉に——ユイとレイアも、頷いた。
「うん! ユイたちは、ひとりじゃない!」
「......みんながいる」
三人の目には——恐怖ではなく、決意が宿っていた。
「......チッ」
魔族のリーダーは、舌打ちした。
「計画が——狂った......」
「貴様らの計画など——最初から、無意味だ!」
ダリウスが、魔族に斬りかかった。
ティオも、立ち上がって応戦する。
「ハル、ユイ、レイア! オレたちを——信じてくれ!」
「うん!」
三人は、力強く頷いた。
ハルトが、魔族に向かって叫んだ。
「ゴーバスターズ、レッツゴー!」
青い光の弾が、魔族を襲った。
「ぐあっ!」
ユイも、涙を流しながら叫んだ。
「もう、やめて!」
浄化の光が、魔族たちを包んだ。
「ぐああああ!」
魔族たちは、苦しみ始めた。
レイアが、小さく呟いた。
「......あなたたちは、まける」
「な、何を......!」
「だって——わたしたちには、なかまがいるから」
レイアの言葉に——魔族たちは、恐怖を感じた。
「く、くそっ! 撤退だ!」
魔族のリーダーが、叫んだ。
魔族たちは、森の奥へ逃げ去った。
戦闘が終わり、ティオは三人を抱きしめた。
「怖かったか?」
「......うん。ちょっとだけ」
ハルトが、正直に答えた。
「でも——ティオにいちゃんがいたから、だいじょうぶだった」
「そうか......」
ティオは、三人の頭を撫でた。
「よく、頑張ったな」
「うん!」
ユイも、レイアも、笑顔で頷いた。
ダリウスが、近づいてきた。
「ティオ、怪我は?」
「大丈夫です。かすり傷程度です」
「そうか......」
ダリウスは、深く息を吐いた。
「魔族の狙いは——我々を、子供たちから引き離すことだったようだな」
「ええ。そして——子供たちを、恐怖で支配する......」
「だが——失敗した」
ダリウスは、三人を見た。
「この子たちは——思っていたより、強い」
「......そうですね」
ティオも、三人を見た。
三人は——シロと一緒に、遊んでいる。
「クゥーン!」
「シロ! まてまて!」
その姿は——さっきまでの緊張が嘘のように、無邪気だった。
「......本当に、強いな」
ティオは、小さく笑った。
その夜——魔王城。
ヴェルナは、報告を聞いて——顔色を変えた。
「何だと......? 失敗した......?」
「は、はい......幼児たちは、恐怖に屈しませんでした......」
部下の魔族が、震えながら報告した。
「あの幼児たちは——保護者への信頼が、強すぎます......」
「......」
ヴェルナは、歯を食いしばった。
「くそっ......計画が......」
魔王ザルガンが、玉座から声をかけた。
「ヴェルナよ」
「は、はい......」
「もう、小細工は止めろ」
「し、しかし——」
「あの幼児たちは——我々が思っている以上に、厄介だ」
魔王は、立ち上がった。
「ならば——私が、直接出向く」
「ま、魔王様が......!?」
「ああ。あの幼児たちを——この手で、始末する」
魔王の目には——殺意が宿っていた。
翌朝、ティオたちは街を出発した。
「ティオにいちゃん、きのうはこわかったね」
ハルトが、馬車の中で言った。
「ああ。でも——よく頑張ったな」
「えへへ」
ハルトは、照れくさそうに笑った。
「でも——ハル、おもった」
「何を?」
「ハルは、ひとりじゃないって」
ハルトは、ティオを見上げた。
「ティオにいちゃんと、ダリウスおじさんと、ユイと、レイアと、シロがいる」
「......そうだな」
「だから——こわくない!」
ハルトの言葉に、ティオは笑顔で頷いた。
「ああ。お前たちは——一人じゃない」
ユイとレイアも、頷いた。
「うん!」
「......うん」
ティオは、三人を見た。
この子たちは——本当に、強くなった。
そして——これから、もっと強くなるだろう。
だが——その強さは、力だけじゃない。
仲間を信じる心——それが、この子たちの本当の強さだ。
ティオは、そう思った。
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