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こどもでもゆうしゃです。〜保護者は胃が痛い〜  作者: ちゃーき


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15/29

大きな街での騒動

獣人の村を出て五日後、一行は大きな街——商業都市アルベルグに到着した。

「わあ! おっきい!」

ハルトが、目を輝かせた。

アルベルグは、帝国でも有数の商業都市だ。城壁に囲まれた街には、無数の建物が立ち並び、街道には多くの人々が行き交っている。

「すごいね、ティオにいちゃん!」

「ああ、帝都の次に大きな街だ」

「......ひとが、いっぱい」

レイアが、少し不安そうに呟いた。

「大丈夫だ。はぐれないように、ちゃんとティオにいちゃんの手を握っててくれ」

「......うん」

三人は、それぞれティオの服の裾や手を掴んだ。

シロも、馬車から降りて、三人の周りをうろうろしている。

「クゥーン」

「シロも、いっしょだね!」

ハルトが、シロを撫でた。

ダリウスが、馬を降りた。

「ティオ、この街で補給をしよう。それに——少し休息も必要だ」

「そうですね。子供たちも、疲れているでしょうし」

「ああ」

一行は、街の中へ入った。




街の中は、活気に満ちていた。

露店が立ち並び、商人たちが声を張り上げている。果物屋、パン屋、武器屋、雑貨屋——あらゆる店が、ひしめき合っていた。

「わあ! あれなに!?」

ハルトが、露店の飾り物を指差した。

「ああ、それは——」

ティオが説明しようとした時、ユイが別の店に駆け寄った。

「ティオにいちゃん、このおにんぎょうかわいい!」

「ユイ、待って——」

ティオが追いかけようとすると、今度はレイアが立ち止まった。

「......このほん、きれい」

「レイア、後で見よう。今は——」

ティオは、三人をまとめようと必死だった。

「ハル、ユイ、レイア! 三人とも、バラバラにならないで!」

「はーい!」

三人は、一応返事をしたが——またすぐに、別々の方向に興味が移る。

「......胃が」

ティオは、胃を押さえた。

ダリウスが、笑っていた。

「フフ、大変だな」

「笑ってないで、助けてください......」

「分かった。私がハルを見よう」

「お願いします......」

ティオは、ユイとレイアの手を引いて、街を歩いた。




しばらく歩くと、広場に出た。

そこには、大きな噴水があり、周りにはベンチが並んでいる。子供たちが、噴水の周りで遊んでいた。

「ティオにいちゃん、あそこであそびたい!」

ハルトが、子供たちを見て言った。

「そうだな。少し休憩しよう」

ティオは、ベンチに座った。三人は、噴水の周りに駆け寄った。

「ねえねえ、いっしょにあそぼ!」

ハルトが、他の子供たちに声をかけた。

だが——子供たちは、ハルトたちを見て、少し距離を置いた。

「......誰?」

「知らない子たち」

子供たちは、警戒している様子だった。

「ハルは、ハルト! こっちは、ユイと、レイア!」

「......」

子供たちは、まだ警戒している。

その時、一人の少年が前に出た。

「君たち、どこから来たの?」

「えっとね——」

ハルトが答えようとした時、別の少年が割り込んできた。

「あ! その服——」

その少年は、豪華な服を着ている。貴族の子供だろう。

「君たち、田舎者? 服がダサい」

「......え?」

ハルトは、首を傾げた。

「ダサいって、なに?」

「かっこ悪いってことだよ! ぼくの服を見て! こんなに豪華なんだから!」

貴族の少年は、自慢げに服を見せた。

「......ふーん」

ハルトは、特に気にした様子もなく、噴水を見ている。

「ね、無視しないでよ!」

貴族の少年は、ムッとした。

「君たち、田舎者のくせに——」

「あのね」

ユイが、貴族の少年の前に立った。

「ふくが、かっこいいとか、わるいとか——そんなの、かんけいないよ」

「え......」

「だいじなのは、なかみでしょ?」

ユイの言葉に、貴族の少年は黙り込んだ。

「......」

周りの子供たちも、静かになった。

レイアが、小さく呟いた。

「......このこ、さみしいんだね」

「え?」

貴族の少年は、驚いた。

「ともだちが、いないから。だから、じまんして、きをひこうとしてる」

「......!」

貴族の少年の顔が、真っ赤になった。

「そ、そんなこと——」

「でも、だいじょうぶ」

レイアは、少年の手を握った。

「わたしたちが、ともだちになるよ」

「......え?」

少年は、呆然としていた。




その後、子供たちは一緒に遊び始めた。

貴族の少年——名前はエドワードというらしい——も、最初は戸惑っていたが、次第に笑顔を見せ始めた。

「ハル、すごくはやいね!」

「えへへ!」

ハルトは、他の子供たちと一緒に走り回っている。

「ユイ、やさしいね」

「そんなことないよ」

ユイは、転んだ子供の手当てをしていた。

「レイア、ふしぎなことがわかるの?」

「......うん。ちょっとだけ」

レイアは、子供たちに囲まれて、質問攻めにあっていた。

ティオは、その様子を見て——小さく笑った。

「子供たちは、すぐに仲良くなるな」

「ああ。大人が築いた壁も、子供には関係ない」

ダリウスも、笑っていた。

その時、一人の女性が近づいてきた。

「あの......すみません」

「はい?」

ティオは、女性を見た。質素な服を着た、優しそうな女性だった。

「あの子たちは......勇者様、ですか?」

「......え?」

ティオは、驚いた。

「どうして、分かったんですか?」

「噂を聞いていました。幼い勇者様が、三人いると」

女性は、三人を見た。

「私は、この街の孤児院で働いている者です。名前は、シスター・マリア」

「孤児院......」

「はい。戦争で親を亡くした子供たちを、保護しています」

マリアは、悲しそうに言った。

「最近、孤児が増えて——食料も、場所も足りなくて......」

「......」

ティオは、言葉に詰まった。

「あの......もし、よろしければ——勇者様方に、孤児院を訪ねていただけないでしょうか?」

「孤児院を?」

「はい。子供たちに——希望を、見せてあげたいのです」

マリアの目には、真剣な光が宿っていた。

「......分かりました」

ティオは、頷いた。

「行きましょう」




孤児院は、街の外れにあった。

古い建物で、壁には亀裂が入っている。窓ガラスも、いくつか割れたままだ。

「ここが......」

ティオは、建物を見上げた。

「はい。お恥ずかしい限りですが......資金が足りなくて、修繕もままならないのです」

マリアは、申し訳なさそうに言った。

中に入ると、二十人ほどの子供たちがいた。

年齢は、五歳から十歳くらいだろうか。皆、質素な服を着て、痩せている。

「みんな、お客様よ」

マリアが、子供たちに声をかけた。

子供たちは、ティオたちを見て——少し警戒した様子だった。

「こんにちは!」

ハルトが、元気よく挨拶した。

「ハルは、ハルト! こっちは、ユイと、レイア!」

「......」

孤児院の子供たちは、黙っている。

その時、一人の少女が前に出た。

「......あなたたちが、勇者様?」

「うん! ゆうしゃだよ!」

「......嘘」

少女は、首を横に振った。

「勇者様は、もっと大きくて、強そうな人のはず」

「でも、ハルたち、ほんとにゆうしゃだよ?」

「......信じられない」

少女は、頑なだった。

レイアが、少女の前に立った。

「......しんじなくても、いいよ」

「え?」

「だって、ゆうしゃかどうかなんて、かんけいないもん」

レイアは、少女の手を握った。

「わたしたちは、ともだちになりたいだけ」

「......友達?」

「うん」

レイアは、笑顔で頷いた。

少女の目から、涙が零れた。

「......ありがとう」




その後、三人は孤児院の子供たちと一緒に遊んだ。

ハルトは、子供たちに「ライダーキック」の真似を教えていた。

「こうやって、ジャンプして——キック!」

「わあ、すごい!」

子供たちは、目を輝かせている。

ユイは、怪我をしている子供たちの手当てをしていた。

「いたいの、いたいの、とんでけ」

傷が、みるみる治っていく。

「す、すごい......!」

子供たちは、驚愕していた。

レイアは、子供たちに絵本を読んであげていた。

「むかしむかし、あるところに......」

子供たちは、レイアの周りに集まって、静かに聞いている。

ティオは、その様子を見て——胸が温かくなった。

「子供たちは......本当に、無邪気だな」

「ああ。そして——その無邪気さが、人を救う」

ダリウスは、マリアを見た。

「シスター、この孤児院は——どのくらいの支援を受けているのですか?」

「......ほとんど、ありません」

マリアは、悲しそうに答えた。

「戦争で、国の資金も底をついています。孤児院まで、手が回らないのです」

「......」

「でも——私たちは、諦めません。この子たちを、守らなければ」

マリアの目には、強い決意が宿っていた。

ティオは、ダリウスを見た。

「ダリウスさん......何か、できることは......」

「......そうだな」

ダリウスは、少し考えてから頷いた。

「帝都に、報告しよう。この孤児院のことを」

「本当ですか!?」

マリアの顔が、明るくなった。

「ありがとうございます!」

「いや、礼を言うのは我々の方だ」

ダリウスは、三人を見た。

「あの子たちが——我々に、気づかせてくれた」




夕方、孤児院を出る時、子供たちが見送りに来た。

「勇者様、ありがとうございました!」

「また、来てください!」

子供たちが、手を振っている。

「うん! またくるね!」

ハルトが、元気よく答えた。

「ばいばい!」

ユイも、手を振った。

「......またね」

レイアも、小さく手を振った。

マリアが、深々と頭を下げた。

「本当に、ありがとうございました」

「いえ、こちらこそ」

ティオは、笑顔で答えた。

馬車に乗り込み、出発する。

ティオは、窓の外を見た。孤児院の子供たちが、まだ手を振っている。

「......この子たちは、本当に——」

ティオは、三人を見た。

「人を、救うんだな」

「ああ」

ダリウスも、頷いた。

「大人が見落としていたものを——子供の目で、見つけ出す」

「......そうですね」

ティオは、小さく笑った。

三人は、馬車の中で、シロと一緒に眠っていた。

その寝顔は——とても、穏やかだった。

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