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こどもでもゆうしゃです。〜保護者は胃が痛い〜  作者: ちゃーき


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11/29

村人の期待と現実

翌日の午後、一行は小さな村に到着した。

村の入口には、立派な門が建てられている。そして——歓迎の横断幕。

「勇者様、ようこそ!」

そう書かれた横断幕が、風になびいている。

「......なんだ、これは」

ティオは、困惑した表情を浮かべた。

「事前に、帝都から連絡が行っていたのだろう」

ダリウスが、説明した。

「勇者様が通る予定だと」

「そうですか......」

ティオは、馬車の中を見た。三人は、窓から顔を出して、横断幕を見ている。

「ティオにいちゃん、あれなんてかいてあるの?」

「ああ......『勇者様、ようこそ』だ」

「ゆうしゃさま?」

ハルトが、首を傾げた。

「それって、ぼくたちのこと?」

「......ああ、そうだ」

「へー」

ハルトは、特に気にした様子もなく、また窓の外を見始めた。

村の人々が、道の両側に並んでいる。その数、数十人。皆、期待に満ちた表情でこちらを見ている。

「勇者様は、どんな方なのでしょう?」

「立派な騎士様かしら?」

「いや、魔法使いかもしれん」

村人たちの会話が、聞こえてくる。

馬車が、村の中心に止まった。

村長らしき老人が、前に出てきた。

「ようこそ、勇者様! 我々は——」

村長が、馬車の扉を開けた。

そして——固まった。

「......え?」

中から出てきたのは、三人の幼児だった。

ハルトが、元気よく飛び降りた。

「やっほー! ぼく、ハル!」

ユイも、ティオに手を引かれて降りた。

「......こんにちは」

レイアは、ティオに抱っこされて降りた。

村人たちは、呆然としていた。

「......子供?」

「勇者様が......子供?」

「しかも、幼児......?」

ざわざわと、困惑の声が広がる。

村長は、ティオを見た。

「あ、あの......この子たちが......?」

「はい。勇者です」

ティオは、真面目な表情で答えた。

「......そ、そうですか」

村長は、明らかに動揺していた。




村長の家に案内され、ティオたちは客間に通された。

客間には、立派な椅子とテーブルが用意されている。だが——椅子が高すぎて、三人の足が届かない。

「......これは」

ティオは、困った顔をした。

「あの、もう少し低い椅子は......?」

「あ、はい! すぐに用意します!」

村人が、慌てて子供用の椅子を持ってきた。

三人は、ようやく座れた。

「ふう......」

ハルトが、一息ついた。

村長が、改めて三人を見た。

「その......勇者様は、おいくつで......?」

「ハルは、ごさい!」

「ユイも、ごさいです」

「......よんさい」

三人が、元気よく答えた。

「四歳と五歳......」

村長は、頭を抱えた。

「これは......一体......」

「事情は複雑ですが、この子たちは本物の勇者です」

ティオが、フォローした。

「その......魔物退治などは......」

「できます」

「本当ですか?」

「ええ。この子たちは、すでに魔族とも戦っています」

ティオの言葉に、村長は少し安心したようだった。

「そうですか......実は、我々の村にも問題がありまして......」

「問題?」

「はい。最近、村の北の森に、大きな魔物が現れたのです」

村長は、深刻な表情で続けた。

「村人が何人か襲われ、怪我をしました。幸い、死者は出ていませんが......このままでは、村が危ない」

「なるほど......」

ティオは、三人を見た。

「どうする?」

「やる!」

ハルトが、元気よく答えた。

「ハル、まものたおす!」

「......ユイも、がんばる」

「......うん」

三人は、頷いた。

「分かりました。では、その魔物を退治しましょう」

「本当ですか! ありがとうございます!」

村長は、深々と頭を下げた。




翌朝、一行は森へ向かった。

村人たちも、見送りに来ていた。

「勇者様......大丈夫でしょうか......」

「子供なのに......」

「でも、帝都から来たんだから......」

村人たちの不安な声が、聞こえてくる。

ティオは、三人を見た。

「ハル、ユイ、レイア。気をつけろよ」

「はーい!」

三人は、元気よく答えた。

森の中は、薄暗く、静かだった。

鳥の声も、虫の音も聞こえない。

「......いやな雰囲気だな」

ダリウスが、剣を抜いた。

「ああ。魔物が近い」

その時、レイアが小さく呟いた。

「......あそこ」

レイアが指差した方向から、巨大な影が現れた。

「これは......オーガか!」

ダリウスが、叫んだ。

オーガ——巨大な人型の魔物。その体は、人間の三倍はある。手には、巨大な棍棒を持っている。

「ガアアアア!」

オーガが、咆哮を上げた。

村人たちは、恐怖に震えている。

「に、逃げましょう!」

「子供たちを、守らなければ!」

だが——

「まってー!」

ハルトが、オーガに向かって走り出した。

「ハル!」

ティオが叫んだが、もう遅い。

オーガが、棍棒をハルトに振り下ろした。

村人たちは、目を閉じた。

だが——

「ライダー——キィィック!」

ハルトが叫び、飛び蹴りを放った。

次の瞬間、炎がオーガを包んだ。

「ガアアアアアッ!?」

オーガは、吹き飛ばされて木に激突した。

「な......何だ......!?」

村人たちは、呆然としていた。

オーガは、まだ立ち上がろうとしている。

その時、ユイが前に出た。

「わるいまもの、やっつけちゃダメ!」

ユイが泣きながら叫んだ。その涙が光となり、オーガを包んだ。

「ガ......ガア......」

オーガは、浄化の光に包まれて苦しみ始めた。

レイアが、静かに近づいた。

「......このまもの、おなかすいてた」

「え?」

ティオは、レイアを見た。

「むらのたべもの、たべたかっただけ」

「......そんな」

オーガは、力尽きて倒れた。だが——死んではいない。ただ、気絶しているだけだ。

その時、ダリウスが剣を構えて、オーガに近づいた。

「よし、今のうちに——」

「まって!」

ユイが、叫んだ。

「ダリウスおじさん、なにするの!?」

「......トドメを刺す。このまま放っておけば、また村を襲う」

「でも......!」

ユイの目から、涙が溢れた。

「このまもの、おなかすいてただけなの! ころさないで!」

「ユイ......」

ダリウスは、剣を下ろさなかった。

「気持ちは分かる。だが——これは魔物だ。人を襲う存在なんだ」

「やだ! やだやだ!」

ユイは、泣きながらオーガの前に立ちはだかった。

ハルトも、困った顔をしている。

「......ころすの?」

「ああ」

「なんで?」

「このままでは、また村人が襲われる。君たちが助けた人々が、傷つくんだ」

ダリウスの言葉に、ハルトは黙り込んだ。

レイアが、小さく呟いた。

「......いっしょに、いきていけないの?」

「え?」

ティオは、レイアを見た。

「まものと、にんげんが、なかよくできないの?」

「......」

ティオは、言葉に詰まった。

村人の一人が、前に出た。

「勇者様......お気持ちは分かります。ですが、このオーガは、私の息子を襲いました」

男の声は、震えていた。

「息子は、重傷を負いました。もう少しで......死ぬところでした」

「......」

ユイは、泣いている。

ダリウスが、静かに言った。

「ユイ、ハル、レイア。よく聞いてくれ」

三人は、ダリウスを見た。

「魔物と人間は——残念ながら、共存できない」

「なんで......?」

ハルトが、泣きそうな声で尋ねた。

「魔物は、人を襲う。それが、魔物の本能だからだ。お腹が空けば、人を食べる。それが、魔物という存在なんだ」

「でも......!」

「君たちの優しさは、素晴らしい。誰も傷つけたくない、殺したくないと思う心は、本当に尊い」

ダリウスは、三人の前に膝をついた。

「だが——時には、守るために、誰かを傷つけなければならない時がある」

「......」

「このオーガを生かせば、また村人が襲われる。君たちが助けた人々が、死ぬかもしれない」

ダリウスの言葉に、三人は黙り込んだ。

「だから——私が、やる」

ダリウスは、剣を構えた。

「君たちは、見なくていい。目を閉じていてくれ」

「......」

ユイは、泣きながら目を閉じた。ハルトも、レイアも、目を閉じた。

ダリウスの剣が、振り下ろされた。

オーガの息が、止まった。




森を出ると、村人たちは複雑な表情をしていた。

「勇者様......ありがとうございます」

村長が、頭を下げた。

「村を、救ってくださいました」

だが、三人は黙ったままだった。

ユイは、まだ泣いている。ハルトは、俯いている。レイアは、ティオの服の裾を掴んで離れない。

ティオは、三人を抱きしめた。

「......辛かったな」

「......うん」

ユイが、小さく頷いた。

「ころすの......いやだった」

「ああ......オレも、嫌だった」

ティオは、三人の頭を撫でた。

村に戻る道中、ティオは三人に話しかけた。

「ユイ、ハル、レイア。さっきのこと、まだ悲しいか?」

「......うん」

三人は、頷いた。

「そうか......」

ティオは、深く息を吐いた。

「オレも、悲しい。誰かを殺すことは——本当は、誰もしたくないんだ」

「......じゃあ、なんで?」

ハルトが、涙声で尋ねた。

「それは——守るためだ。大切な人を、守るため」

「......むずかしい」

「ああ、難しいな」

ティオは、三人を見た。

「でもな、君たちの『いっしょに生きていけないの?』という気持ちは——間違ってない」

「......ほんと?」

「ああ。その優しさを、忘れないでくれ」

ティオは、三人を抱きしめた。

「いつか——君たちが大きくなったら、その優しさで、世界を変えられるかもしれない」

「......せかいを、かえる?」

レイアが、小さく呟いた。

「ああ。魔物と人間が、争わなくていい世界を——」

ティオは、空を見上げた。

「そんな世界を、作れるかもしれない」

「......」

三人は、ティオの言葉を、じっと聞いていた。

村に戻ると、村人たちは三人を囲んだ。

「勇者様! ありがとうございます!」

「素晴らしい!」

だが、三人の表情は、晴れなかった。




村に戻ると、村人たちは三人を囲んだ。

「勇者様! ありがとうございます!」

「素晴らしい!」

「あんなに強いとは!」

村人たちの態度が、一変していた。

村長も、深々と頭を下げた。

「疑って、申し訳ございませんでした」

「いえ、気にしないでください」

ティオが答えた。

ハルトは、村の子供たちに囲まれていた。

「ねえねえ、どうやってあんなにつよいの?」

「えへへ、ひみつ!」

ハルトは、得意げだった。

ユイは、村人たちに治癒を求められていた。

「勇者様、私の傷も......」

「うん。いたいのとんでけー」

ユイは、優しく治癒していった。

レイアは、静かにティオの隣にいた。

「......ティオにいちゃん、つかれた?」

「ああ、少しな」

「......おつかれさま」

レイアは、ティオの手を握った。

その夜、村では宴が開かれた。




村に戻った後も、三人は元気がなかった。

村長の家で休んでいる時も、ハルトは木剣を握ったまま、ぼんやりとしていた。

「......ハル、けんもてるの、いやになった」

「どうして?」

ティオが尋ねると、ハルトは小さく答えた。

「けんって、ひとをきずつけるものでしょ? まものも......ころしちゃう」

「......」

ティオは、ハルトの隣に座った。

「ハル、剣は確かに、誰かを傷つける道具だ」

「......うん」

「でも——守るための道具でもあるんだ」

「まもる?」

「ああ。君が剣を持つのは、大切な人を守るため。ユイや、レイアや——ティオにいちゃんを、守るためだ」

「......」

ハルトは、木剣を見つめた。

「でも、まもるために......ころさなきゃいけないの?」

「......」

ティオは、答えに詰まった。

その時、ダリウスが部屋に入ってきた。

「ハル、少しいいか?」

「......ダリウスおじさん」

ハルトは、ダリウスを見上げた。

「おこってる?」

「いや、怒ってない」

ダリウスは、ハルトの隣に座った。

「むしろ、謝りたい。君たちの目の前で、あんなことをして」

「......」

「だが——あれは、必要なことだった」

ダリウスは、深く息を吐いた。

「私も、昔は君と同じことを考えた。『殺さずに済む方法はないのか』と」

「......ほんと?」

「ああ。だが——戦場に出て、多くの仲間を失って、分かった」

ダリウスは、遠くを見つめた。

「時には、命を奪わなければ、守れないものがある」

「......」

「それは、悲しいことだ。辛いことだ。だが——それが、現実なんだ」

ダリウスは、ハルトの頭を撫でた。

「君の優しさは、素晴らしい。その心を、失わないでくれ」

「......うん」

ハルトは、小さく頷いた。

ユイは、窓の外を見ていた。

「ティオにいちゃん......」

「どうした、ユイ?」

「ユイ、まものをなおしてあげたかった」

「......」

「でも、なおしたら、またむらのひとがおそわれちゃう......」

ユイの目から、また涙が溢れた。

「ユイ、どうすればよかったの......?」

「......ユイ」

ティオは、ユイを抱きしめた。

「ユイは、何も間違ってない」

「......でも」

「ユイは、誰も傷つけたくないと思った。それは、正しいことだ」

ティオは、ユイの涙を拭いた。

「でも——時には、選ばなければならない時がある。誰を守るか、って」

「......えらぶの?」

「ああ。村の人を守るか、魔物を守るか——」

ティオは、ユイの目を見た。

「今回は、村の人を選んだ。それは、間違いじゃない」

「......でも、かなしい」

「ああ、悲しいな。オレも、悲しい」

ティオは、ユイを抱きしめたまま、静かに言った。

「でも——その悲しみを感じられる君は、優しい子だ」

レイアは、ティオの隣に座っていた。

「......ティオにいちゃん」

「ん?」

「いつか、まものとにんげんが、なかよくなれる?」

「......分からない」

ティオは、正直に答えた。

「でも——君たちなら、もしかしたら、できるかもしれない」

「......ほんと?」

「ああ。君たちは、特別だから」

レイアは、小さく笑った。

「......がんばる」

「ああ。でも、無理はするなよ」

「......うん」

その夜、村では宴が開かれた。

だが——三人は、あまり食べなかった。

村人たちは、三人を見て笑っていた。

「やっぱり、子供ですね」

「強いのに、可愛らしい」

「不思議な勇者様だ」

ティオは、その様子を見て、小さく笑った。

期待と現実——確かに、ギャップはある。

だが——この子たちは、本物の勇者だ。

そして——何より、子供だ。

それが、この子たちの強さなのかもしれない。




宴の後、三人は部屋で眠りについた。

だが、ユイは何度も目を覚まし、泣いていた。

「ユイ、大丈夫か?」

「......ゆめみた。まものが、ないてた」

「......そうか」

ティオは、ユイを抱きしめた。

「大丈夫だ。ティオにいちゃんが、ここにいるから」

「......うん」

ユイは、ティオにしがみついた。

ハルトも、寝言で「ごめんね......」と呟いていた。

レイアは、静かに眠っていたが——その顔は、どこか悲しそうだった。

ティオは、窓の外を見た。

星が、きれいに輝いている。

ダリウスが、部屋に入ってきた。

「ティオ、眠れないのか?」

「ええ......この子たちが、心配で」

「そうか」

ダリウスは、三人を見た。

「......辛い経験をさせてしまったな」

「いえ、仕方ありません。これも——勇者としての務めですから」

「だが、この子たちは、まだ幼い」

ダリウスは、深く息を吐いた。

「私たちは——この子たちに、何を教えるべきなのだろうな」

「......分かりません」

ティオは、正直に答えた。

「でも——この子たちの優しさを、守りたいと思います」

「守る......か」

「ええ。この子たちが、世界を変えるかもしれない。その優しさで——」

ティオは、三人を見た。

「魔物と人間が、共存できる世界を」

「......それは、理想だな」

「ええ。でも——理想を持つことは、悪いことじゃない」

「そうだな」

ダリウスは、小さく笑った。

「君のその姿勢が、この子たちを支えているのだろう」

「......ありがとうございます」

翌朝、村を出発する時、三人はまだ元気がなかった。

村人たちが見送りに来た。

「勇者様、ありがとうございました!」

「お元気で!」

だが、三人の表情は、晴れなかった。

「ばいばい......」

ハルトが、小さく手を振った。

「......またね」

ユイも、力なく手を振った。

レイアは、何も言わずに、ただティオにしがみついていた。

馬車が、村を離れていく。

ティオは、三人を見た。

「......時間が、必要だな」

ダリウスが、頷いた。

「ああ。この子たちは——まだ、答えを見つけていない」

「答え......」

「命を奪うこと。守ること。優しさと、現実——」

ダリウスは、前方を見た。

「その答えを、この旅で見つけるのかもしれない」

「......そうですね」

ティオは、三人を抱きしめた。

この子たちが、どんな答えを見つけるのか——

ティオには、まだ分からなかった。

だが——その答えを見つけるまで、自分が支えなければならない。

そう、心に誓った。

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