鳥獣人さんとの恋の始まりは、アイス泥棒だった
人間の他に獣人もいる魔法世界で、アイスをきっかけに恋が始まる。女性と柔らかそうな羽根を持つイケメン鳥獣人である店員との、癒しの日常ほのぼの恋愛ファンタジー+コメディー。
果たして、泥棒は誰だったのか。
私、スザンは、店先のテラスの椅子に座っていた。目の前には男性店員から受け取ったアイス。右手のスプーンで掬い、口の中に入れる。チョコの甘い味と香りが口の中に広がる。私は笑顔で球体を崩した。
その時、羽ばたく音と共に、頭上がふと暗くなった。目を見開き、顔を上げると同時に、ふっと隣を何かが横切った。
「え!?」
手元を見ると、器からアイスがごっそりなくなっていた。後に残るのは、スプーン、空の器のみ。
鳥がアイスを攫って行ったと分かった。
アイス泥棒!
「そんな……。」
私ははあ、とため息を付き、スプーンを軽い音を立てながら置く。折角買ったのに。自分の眉間に皺が寄るのが感じた。器を睨みつける。
そんな時、後ろから男性の低い声がかけられる。同時に後ろから何かがふよふよと浮いて来た。
「お客さん、どうぞ。」
「え!?」
私は目を見張る。テーブルの上には、新しい栗色のアイスが存在感を放っている。
振り返ると緑色の髪に同色の目の鳥獣人の男性が立っていた。背が高く美形。口元には笑み。さっき応対してくれた店員だ。腕には柔らかそうな羽根が生えている。右手に杖を持った彼は私と目が合うとくくく、と笑った。
「鳥に取られたみたいだから。あげますよ。」
一部始終を見ていた男性が、アイスを作り、魔法で飛ばしてくれたらしい。胸が躍る。笑われてるとか、気にならない!私は身を乗り出し、男性に聞いた。
「良いの!?」
男性はおお、と身を引くと、笑顔で頷く。
「ああ、どうぞ。……あ、お代はいらないから。」
鞄のお金を出そうとする私を男性は片手をあげ、悪戯げな笑みを浮かべ制した。でも。私が眉を下げると、彼はまた来るように言う。思わず笑みが漏れる。首を縦に振った。何て優しいのかしら!心の中で太陽が輝く。
「ありがとうございます!」
私は自分の目が輝くのを感じた。男性はあははは、と笑うと、ゆっくり食べるように言い、背を向けて去って行く。
「ヨーナスー、ちょっとお使いに行ってくれないかー。」
「分かりましたー!」
ヨーナスと言う名前らしい男性は、紙を受け取ると、大きく羽根を広げ、軽い音を立て飛び立って行った。
心の中で彼の名前を呟く。ヨーナスさん。そう言う名前なのね。私は暫く彼の去った青空を見つめた。素敵。
さて。スプーンに右手を伸ばす。口の中に運んだ。胸に言葉にならない幸福感が広がる。再び味わったアイスは、心なしか先程よりも甘味が強く感じた。
また来よう。




