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寿命スロット×俺は命だけ偽造する ―異世界で5秒から始まる延命サバイバル―  作者: 雪ノ瞬キ


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8話:命の貸し先

「俺の今の動きには反応しないか。だとすれば直接殺意を感じた時か」


「ええ。私の時もただ動いているだけでは、反応しませんでした。ただ、魔法には全て反応します」


「つまり俺のは魔法ではない、ってことか」


 喉が乾く。戦いの最中なのに、頭だけは妙に冷えていく。


「恐らくは」


 ……呼吸が、浅くなる。

 それなら、俺の動きは近くでいきなり顎でぶん殴るか齧り付くのもありだな。

 となると、レジーネは隠れてもらうしかないか。


「レジーネの時はどうだったんだ?」


「私は、最後に大きな魔法を当てようとしましたが毒の霧で動けなくなりそれっきりです」


 毒の霧は今のストックからするとまずいな。


「この部屋なら制限の十メートル以内にいるから問題ない。できれば、連携も試していないから隠れていて欲しい」


「でも」


「簡単には死なねぇ。……命は、削ってでも作り続けられる。切らさなければ、な」


「まさに神ですね」


「だといいんだけどな。弱点はあるのか?」


「反応からすると、あの石のどこかに魔石が埋まっているのは、間違いなさそうです」


「そうとなれば黒牙と白牙で食らいまくるのが一番近道だろうな。レジーネ下がっててくれ」


「わかりました。気をつけてください」


【外結線:距離 8.3m|損失/分:+2秒】(柱の陰に収まる)


【結線:予備[1] → 稼働(5時間)/前稼働 48秒 破棄】

【稼働残:4時間59分59秒|予備①:11時間32分0秒|予備②:なし】



 左右の顎が“うなずく”。手応えが返る。胸の奥に――任せろ、って自信が湧く。

 ……おいおい、俺が信じていいのかよ。


 さて、お前らどうする。


 石盤と向き合い、魔獣たちに問う。

 俺ではまったくもって魔石の位置など掴めるはずもない。

 正直な所、こいつらの意思に任せるより他にない。


 何の攻撃のそぶりを見せずに、石盤に近づき撫でるように触れる。

 この時点でも微動だにしない。

 内心で叫ぶ。ヤレと。


 途端に、右腕の黒い顎は、側面から噛み砕いていき、口を目指す動きだ。

 もう一方の白い顎は、反対側から目をめがけて側面から噛み砕いていく。


 突然の猛攻に石盤は震え出す。


【石盤:侵害閾値到達 → 防衛機構 起動】


 黒い顎は何かをつかんだのか嚥下した。


【取得:魔石キューブ(中格)×1】


 白い顎も何かをつかんだのかこちらも嚥下した。


【取得:魔石キューブ(中格)×1】


【返還:なし(無機/嚥下エネルギー化せず)】


 無機は“時間”にならない。噛んでも、返らねぇ。

 残すは左目だが、左右の顎が同時に攻めようとした時、景色全体が地震の如く揺れた。視界が波打ち、奥行きの感覚が狂う。


【警告:音圧波/鼓膜負荷 高】


 床の溝が唸り、台座がレールごと後退する。縁の粉塵が吸い込まれた。


 その間、一瞬にして石盤は俺との距離を数十メートルも後退し離す。

 瞬間移動じゃない――引かれてる。魔導具の仕掛けか……!

 

 同時に音波を全身で食らい、膝が崩れ落ちる。なんだ、今の……! 耳の奥が焼けるみたいに痛ぇ……!。

 見るも無惨な石盤は、すでに半分程度は崩れている。

 

 一瞬光ったかと思うと、右耳と肩をかすめる高出力な魔導砲をぶっ放してきやがった。

 発射の半拍前、円盤内の“息継ぎ”みたいな負圧が走る。


【警告:収束準備(発光まで約半拍)】



 これがあの目からの光という奴か。

 危うく即死を逃れ、間合いを詰めるため駆け出す。

 即時発射ができないのか、あの光はまだでない。

 

 毒霧は……ない? いや、放てねぇんだ。口を先に潰したのは、正解だった……はずだ。

 黒顎に感謝だ。

 

 射程に入った五メートル以内。

 白顎は一気に飛び出し左目の破壊のため咥え付き、咀嚼しながら圧砕していく。


【白牙・伸顎 −2秒 → 命中(霧粒ノイズ 0.3秒有利)】


 動きが鈍ったのか、左側は白顎で背面と右側面は壁。さらに黒顎が右側より砕いていく。

 再び閃光が走ったのは、俺がちょうどしゃがんだ時で、偶然に近かった。


 【取得:魔石キューブ(中格)×1】


【返還:なし(無機/嚥下エネルギー化せず)】


 どうやらこれで目の位置の魔石は獲得した。

 動かなくなり、完全に崩れ落ちた石盤を横目に、呼吸だけが荒い。

 それでも、台座へ向かう。


「ああ、これか」


 俺はどこか納得がいった。

 正面に立方体の“口”みたいな窪みが切ってある。鍵穴……かもしれない。

 

「レジーネもう大丈夫だぞ」


「さすがです。悠斗様」


 レジーネが寄ってくる。

 ただ問題はこれをはめると何が起きるか、彼女らの噂でしかない。

 これで本当に脱出できるのかということだ。

 

 しかもまだ課題はある。

 ミミと合流していない。

 この時、側面のいかにも作られた穴から叫び声が聞こえる。

 

「キャー」

 

 あの声は、ミミだ。

 どうやって滑ってきたのか、穴から勢いよく飛び出してくる。

 

「え? あっ!」


 何はともあれ、こうして合流できたな。タイミングとして申し分なし。

 少し早ければ、最悪な場面だったのは間違いない。

 

「よう、遅い到着だったな」

 

 声にまだ、焦げた空気の味が残っていた。

 身軽に着地したミミは、息を落ち着かせると駆け寄る。

 

「もう、すごく心配したよ? 大丈夫だったの?」

 

「まったく大丈夫でない道程だったけどな」

 

「私は、あの後ウロウロしていたら罠を踏み抜いちゃって、滑り台でここまできた感じ」

 

「それ実はもっとも最悪な場所に降り立つ罠だぜ? ここボス部屋だしな」


 ドン引きする顔を見ていると、顔芸でもしているのかと思うほどだ。

 ミミは俺の隣にいるレジーネをマジマジと見つめていた。

 

「この方は、生存者ですか?」

 

「いや、死んで腐っていた」

 

「え?」


 そこまで狼狽するか普通?

 理解が追いつかないのでパニックという所なのかもしれん。

 少しだけ説明が必要とみた。

 

「手持ちのポーションで体に振りかけたら、肉体が戻ったんだよな。そんで、偽命を試しに結線したらつながって蘇生したってわけだ。多分な、ここの場所限定かもしれない」

 

「え? それって、すごくない? 蘇生って神話の話だよ?」

 

「まあ、そうなるよな。……でも、代償がある。でかいのがな」

 

「もしかして……悠斗と同じ?」

 

「そうだ。常に偽命で補わないと命が続かない。しかも十メートルを離れると死ぬ」


 保存域の外での初期起動は失敗率が高い。――今は俺の半径十で生かす。

 

「それって……」

 

「……わかってる。軽はずみでやった。けど――今、こいつの心臓は俺の鼓動で動いてる」

 

「名前は――」

 

「ああ、悪い。こいつは、レジーネだ」

 

「初めまして、レジーネです。探索していたらここに落ちてきて、石盤の毒霧にやられて死にました」


 まあ、ここはミミは知らないボス相手だから、過酷さはわからんだろうな。

 ひとまずこれで、合流できたわけだから、後はあの窪みに魔石をはめこむだけということか。

 さて――開けよう。







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