現れる選択肢
唐突の展開に驚きを隠せないカガ。だが冷静さを失うほどではない緊張感。この絶妙な状況の気味の悪さは、カガ達の頭をこんがらがらせていた。
彼女は先ほどに比べてかなりラフな感じで話し始めた。
「あそこに勤めてる奴らは大体、会社に大きな恩があると勘違いしちまってるせいで中々関わりにくい。お前等みたいなのが出るのはけっこー珍しいんだよ」
「私はまだ信じきれてないけどね」
マゼンタがなんか言い出したため、慌てて口を塞ぐ。
「いやいいよ、だいたいそんなもんだ!むしろ一人でも信じてくれてるのがありがたい。」
彼女は笑ってこちらを見る。そしてまた静かになると同じようにしゃべり始めた。
「まず自己紹介からだ。私達はこの世界の人々に平和が訪れるように暗躍する独立自警団組織、「革命軍」だ。そして私は革命軍の指揮官兼リーダーであるへードネー・アステールだ。よろしく!」
その言葉とともに、彼女の後ろにいる部下たちが右手を左肩に、左手を腰の後ろに置き、力強い敬礼のようなものをした。そこには、革命軍という組織の結託性が表れていた。カガ達も思い出したかのように自分で名乗った。一段落ついたあたりでアステールは協力について話を切り出す。
「すまないが、今すぐにお前たちを解放できる状況にない。お前らの欲している記憶もどうなってるか現状分からないしな。でも教えてやれることが一つある。」
二人は興味の目線を向ける。
「それはお前らはあの会社か何らかの超常現象がもたらした「時」に関する事象に巻き込まれたことがあるってこと。そしてそこにつながるであろう記憶を丸ごと取られているってことだ。お前が思ってるよりも気づかない内に消えてる記憶が大量にあるかも知れないんだ。」
そう言われても実感が沸かなかった。記憶がないからそうなるのは当然であるが、すべてを知っていたと思っていた分驚いた。
「そうなのか…そう言われみると何となく感覚があるかも…」
俯いて考えようとすると、ふと時計が見えた。そして帰還時間が刻一刻と迫っているのに気づいた。
「あの、ちょっと時間がヤバイので簡潔に」
カガがそう言うと、何かがゴロゴロと入った袋を渡してきた。重くもデカくもない普通のポーチぐらいだが、ガチャガチャと硬い音が聞こえていた。
「取り敢えずこれをもって会社に向かってくれ。協力してくれるんだろ?会社を離脱した後のことは保証するから、役に立ってくれよ?」
アステールにそう笑顔で言われたすぐ後、カガ達はそそくさと運ばれ、車に乗せられ、街から突き出された。カガとマゼンタはどうするかを今一考えないまま、行きと同じ宇宙の道を辿っていった。
この会社とあの街の場所がどこかはまだはっきりしていない。もし記憶を取り戻せたとして、たぶん会社には絶対にいられなくなる。それなら記憶を取り戻さないほうがいいかも知れない。そんな事を考えながら車庫に着き、点検担当に会釈をする。次の荷物を運ぼうと荷物置き場に行った。顔見知りはまだ帰ってきていなかった。カガとマゼンタは顔を見合わせてそそくさと裏へ抜ける。そして、アステールから渡された袋を、あの街で最初に荷物を調べたように慎重に丁寧に唾を飲みながら開いた。
【カガとマゼンタが今すぐに離脱できない理由】
YEKK社に入った直後、記憶を抜かれる時に位置特定と電気ショックの役割を担うチップがこの後頭部、喉、左腕、足の裏にどんなに入社の仕方であろうと埋め込まれます。これかあることで情報漏洩等の裏切りがないように、一定間隔で信号が送られ、規定の位置に規定の時間にいなかった場合、即電気ショックがONされます。これにはYEKK社に働いている以上、誰も知り得ない情報なので、抑止力はないものの純粋悪の阻止につながっています。もしこのチップの使用に引っかかり、会社に捕まった場合、処罰が入るかまた記憶を消されるかの2パターンになっています。これを導入したのはもちろんBOSSであり、「出来るだけ良い人材を確保して育てていきたいけど裏切られたら優秀で困る」という元も子もないことから始動されました。
上のように作中にない情報で知りたいことがあればコメントで質問していただければ答えます。こんな単調で突拍子のない展開が多い作品にもかなり多くの設定がありますので引き出させてください。