要するに気持ちの持ちよう
急展開続きで疲れを見せる作者のもとに届けられたのは新たな急展開。自分で自分を苦しめるのはそんな楽しいのだろうか。
その間にも主人公は緊迫感のあまり、下手に出れずにいた。
疑われた俺達は、焦るあまり何も喋れなくなった。時間が過ぎる度にどんどん相手の顔が険しくなっていく。
「それは本当か?」
「今取ろうとしたバック、明らかに重心が傾いている」
「それがどうかしたのか」
ボロを出したくない一心で、迂闊に三人の話に入ることができなかった。
「あの会社がわざわざ卸してくるものだ…相手にとって失礼なことはしないだろう?、だから丁寧な梱包になっていて、めったなことがない限り中身が崩れないはずだ」
「いや…俺達は!…」
「それより他も合わせて中を見たほうが早い」
口を挟もうとしたが遮られ、さらに窮地に追い込まれた。
「あっちの嫌がらせかどうかはともかく、落とし前つけてもらうからな」
「大丈夫なのか?俺等も疑われないか?」
「こいつら使うのか?」
話を聞いているだけでどうすればいいかわからず、連行されそうになりパニックに近い呼吸になる。しかしその時、マゼンタかボソッと小さな声で囁いてきた。
「あの人ら、もしかしたらYEKKと仲悪いんじゃない?」
マゼンタがどうしたいかは聞かないと分からなかったが、放った言葉には十分なヒントがあると思えた。その結果、咄嗟に思いついたのは、「助けを求める」という選択肢だった。
「すいません、少し聞いてください」
「ん?」
相手が反応を示したので話を始めた。
「あなた達、うちの会社とどんな関係なんですか?」
思い切って聞いたら、相手の一人がニヤニヤして目を合わせてきた。
「アイツラとうちはビジネス関係だが、あまり仲いいもんじゃないね。うちは世間一般的に言うと反社だ。アイツラは俺らの足元を見て搾取しようとしている。こんな世の中に乗じて暴動起こしてやろうかと思ってるところよ。」
話した人の隣で「おい」「よせ」と言っていたが、調子が乗ったらしくスラスラ話してくれた。これは好機だと見込み、話を持ち出してみる。
「俺達は会社に入った時、記憶を消されているんです…たぶん」
「ほう?」
予想どうりなのか、続きを促すように視線を向けてくる。
「だからあの会社から抜け出したい。あまよくば記憶を取り戻したいんです。」
相手はしばらく黙り、「何が言いたい?」と言ってまた視線を向けてくる。
「協力しませんか?その暴動について」
相手の1番上そうな男は、先ほどまでの険しい顔と打って変わって、息を吸ってから長く深いため息をつきこちらをチラッと見る。
「そういう話なら、俺らよりも紹介しなきゃならねぇやつがいる」
彼は親指で後ろを指し、ついて来いのハンドサインをする。俺とマゼンタは荷物を抱えて停まってある黒くテカっている高級車に乗る。相手は先ほどよりも面倒な顔をしながらも、だいぶ穏やかになった気がした。
車から外を見ると、周りより少し高い光り輝くビルがあり、YEKK社に比べれば小さいが、その他の貧相な掘っ立て小屋のような家に比べると、天と地の差があるレベルな気がした。俺達はそこに入っていった。
事務所みたいな部屋に入り、ソファで待たされていると、豪快な音を立てて勢いよく扉が開き、褐色のラフな格好をした女の人が入ってきた。その後続にも何人かの派手な格好の人たちが中に入ってきた。彼女は向かいのソファにボスンと座り、元気ある声で語りかけてくる。
「お前達…スパイにならないか?」
その言葉に俺とマゼンタは固まってしまった。しかし、彼女はそんなこと気にせずにドンドン話を進めてくる。
「お前達はただ私達との繋がりを隠していて欲しいんだ。いつか合図を送るから指示に合わせて動いてくれ。」
そこからもこっちの考えは無しに次々にペラペラと口を動かしていた。俺は、彼女の完全優位的な態度で話し続ける状況に、腹が立ってきていた。机に軽く拳をついて注意を寄せる。自分の不利にならないこと、したいことをすべきだと思った。
「ずっと上から目線なところ悪いけど、こちらから持ちかけるのは協力だ。求めているのは俺たちの記憶であってあなた達の目的じゃないんです。」
そう言うと彼女はポカンとした顔をした後、吹き出して笑った。彼女は立ち上がり俺達を物理的に見下してくる。
「何も話さないかもかと思ったら、結構図太いなお前。けっこー面白い。」
こちらをまっすぐ覗いてくる彼女の目は、うちの会社の社長と真反対の印象を感じる星のようにギラギラした眼だった。
オーディン(正式名称未だ不明)
土星人 身長191cm 93kg ひび割れが入った薄橙色
黄色のモコモコしたデカいフード付き防寒着に身を包んでいる。
紺色の下地に黄色のメッシュが入ったボサボサ刈り上げマッシュヘアー
土星人特有のでかすぎる身長と肌が特徴。いつも重い過去を抱えてるような雰囲気を出す顔をしている。基礎スペックがかなり高いが、単純に人と話すのが好きじゃない