謎の侵入者!?
担「ふー…あったかい…」
担は帰りにこたつを買い、その中に潜り込んで至福の息を漏らした。顔には心底リラックスした表情が浮かんでいる。
担「あの大釜より、こっちの方があったまる…」
先ほどの悪魔召喚用の釜よりも、こたつの方がよほど快適だと、彼はしみじみと呟いた。それはそうだろうな。
「琥珀くん!そうすると、帰れなくなるよ!」
突然、甲高い男性の声が響いた。担は顔を上げず、声の主を探す。誰もいないはずなのに、声だけが響き渡る不気味な現象に、担の眉がわずかに動いた。
琥珀「ええ!?じゃあどうすればいいんですか?」
担「(時空超えか…?だとしたら…)」
担はこたつに頬杖をついたまま、無関心に提案した。彼の思考は、すでにこの奇妙な現象の核心に触れていた。
担「…瞬間移動で通る」
琥珀「それだ!…それっ!」
琥珀がハッとしたように顔を上げ、次の瞬間、まるで何もない空間を通り抜けるように、店の奥から東洋風の豪華な衣装をまとった青年と、彼に続くように白い耳と尻尾を持つ少年が現れた。
李琳「やったね!出れ…」
琥珀「え!?誰!?」
琥珀が驚きの声を上げ、担を指差す。
担「…星 李琳と…白狐 琥珀か?」
担がぼんやりと呟くと、李琳が担を見た。
李琳「あ、確か、西の…」
担「南だ」
担の声が、一瞬にして冷たく、鋭くなった。その瞳には、明確な怒りの色が宿っている。李琳はピタリと口を閉ざし、気まずそうに目を逸らした。
李琳「そうだった。ごめんごめん」
李琳は平然とした様子で謝るが、担の機嫌は直らない。
担「妙に馴れ馴れしい奴だな…殺すか」
担がぞっとするような言葉を、真顔で呟いた。その場の空気が一瞬にして凍りつく。
琥珀「ご主人様になんてことを…!許せません!」
琥珀が李琳を守るように前に出て、怒りに声を震わせる。
担「退出」
担が、まるでゴミを捨てるかのように、軽く手を振った。次の瞬間、李琳と琥珀の体が宙に浮き上がり、そのまま店の壁をすり抜けるようにして外へと放り出された。
李琳、琥珀「「ぎゃっ!」」
二人の叫び声が外から聞こえてくる。
担「あー…あったかい…」
担は再びこたつに深く潜り込み、何事もなかったかのように至福の表情で呟いた。
担「(にしても、妖人と獣人が俺に何の用だ…?しかも俺の正体を知っていた…いや、知っていたから来た…?)」
担には、どうでもいいという気持ちもあった。だが、凛子の件、そして、先ほどの件。何か、繋がりがあり、大きな事件に巻き込まれているのではないか、そんな不安が、担の頭の片隅にあった。