決闘!担&冠VS凛子!
凛子「エアドレスカミリア!」
凛子が杖を鋭く振り下ろすと、まばゆい光の奔流が螺旋を描き、猛烈な勢いで担めがけて撃ち出された。それは、周囲の空気を震わせるほどの、破壊的な爆発系の攻撃魔法だった。
担「結界」
担はまるで退屈そうに、すっと片手を掲げた。彼の掌の前に、薄い膜のような、しかし揺るぎない透明な障壁が展開する。凛子の放った強大な魔法は、その結界に吸い込まれるようにぶつかり、瞬く間に霧散した。担は、何事もなかったかのように冠と自身を完璧に守り切ったのだ。
凛子はその隙を逃さず、ふわりと宙に浮かび上がった。
冠「フラペラットアサラ!」
担の結界が解除された直後、冠は自身の杖を優雅に一振りした。すると、地中から無数の蔓が蠢く蛇のように勢いよく伸び上がり、空中にいる凛子の足首に絡みついた。蔓はそのまま彼女を強引に地面へと引きずり下ろす。
凛子「うわっ!」
不意を突かれた凛子は悲鳴を上げ、無様に地面へと落ちた。その体勢は大きく崩れ、一瞬の大きな隙が生まれる。
冠は、その隙を見逃さなかった。彼女は杖を凛子に向け、目に見えない強烈な衝撃波のような攻撃を放った。が、その攻撃が当たる直前、凛子は素早く防御魔法を展開した。
凛子「カナヤラン!」
凛子の前に、杖の先から放たれた光が薄い盾となって現れ、冠の衝撃波を辛うじて塞いだ。だが、彼女は体制を立て直す間も惜しんで反撃に出る。
凛子「タマカルトフォード!」
凛子は再び杖を構え、先ほどとは全く異なる魔法を放った。それは、一点に集中した眩いビームのような光線で、冠めがけて一直線に襲いかかる。
担「分散」
担が静かに呟くと、凛子の放ったビームは、まるで霧のように突如として無数の光の粒に分裂し、そのままあらぬ方向へと散っていった。攻撃は完全に無力化され、冠には一切の損害がなかった。担は手一つで、いとも簡単に魔法を操っている。
凛子「アルサクスナコード!ナタカムマクス!ノルマティックハルナ!」
凛子は苛立ちと焦りからか、次々と攻撃魔法を乱射し始めた。灼熱の火球、鋭い氷の槍、唸りを上げる風の刃が、担と冠めがけて嵐のように降り注ぐ。彼女の杖捌きは、もはや焦燥によって荒々しくなっている。
担「結界」
しかし、担はやはり余裕の表情で手を掲げるだけだった。彼の前に現れた強固な結界は、凛子の繰り出すあらゆる攻撃を、いとも簡単に、まるで何もないかのように弾き返していく。その防御の完璧さは、常軌を逸していた。
凛子「今考えれば…2対1って不公平ね。」
息を切らしながらも、凛子は不満げに言った。
担「じゃあ冠姉と一騎討ちしろ。」
担は肩をすくめ、あっさりと提案する。
冠「ええ!?…わかったよ…」
冠は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑顔に戻り、どこか楽しそうに了承した。
凛子「おーけー!サマトランク!カナヤラン!」
凛子は即座に次の行動に移った。冠に向かって杖から攻撃魔法を放った後、すかさず自身の周りに防御魔法を展開する。攻防一体の戦術で、反撃の隙を与えない構えだ。
冠「これじゃ攻撃が当たらない…魔力切れを待つか…」
冠は凛子の攻撃と防御の連携を見て、思案するように呟いた。彼女の表情には焦りはない。この勝負、単なる力のぶつかり合いではないようだ。
凛子「カラサムラコム!」
凛子は、必死に杖を構え、新たな呪文を叫んだ。その声には、まだ諦めないという強い意志が込められている。
冠「カナヤラン!」
対する冠は、優雅に杖を振り、凛子の魔法を防御する光の盾を生み出した。その表情には、一切の焦りがない。
凛子「フラペラットアサラ!」
凛子は間髪入れずに、再び杖を振るい、地中から蔓を伸ばす魔法を放った。彼女の狙いは、冠の足元か、あるいは注意を逸らすためか。
担「(このままじゃらちがあかねーな…)」
横で見ていた担は、内心で呟いた。二人の魔法使いの攻防は、確かに見応えがある。だが、凛子の消耗は激しく、このままではいつまで経っても本題に入れないだろう。彼には、もっと早く情報を引き出したいという思惑があった。
担「(無声呪文…弱体化)」
担は、誰にも悟られないよう、指先一つ動かさずに、無声で呪文を唱えた。その魔法は、音もなく、光もなく、空気中に溶け込むように凛子と冠の二人に向けられた。
担「別に冠姉のスカウトなら、俺関係ねーよな?帰るわ」
担はそう言い放つと、本当にその場を立ち去ろうとした。彼の声には、もうこれ以上この茶番に付き合っていられないという、明確な諦めと面倒臭さがにじみ出ていた。
冠「クラミトス!」
凛子の放った防御魔法を打ち破るように、冠が杖を振りかざし、最後の呪文を唱えた。その一撃は、魔力切れ寸前の凛子にはどうすることもできない、強力な一撃だった。
凛子「そ…んな」
凛子は膝から崩れ落ち、信じられない、とでも言いたげに冠を見上げた。彼女の顔には、完全な敗北の色が浮かんでいる。
冠「私は戦争には参加するつもりはないよ。けど…」
冠はにこやかな笑顔のまま、淡々と告げた。その言葉は、凛子の期待を打ち砕くものだった。しかし、彼女は言葉を続ける。
冠「もしかしたら、担ちゃんなら乗ってくれるかもね」
凛子「あの人が…?」
凛子の目に、驚きの色が宿る。あの面倒事を極端に嫌う担が、戦争に?彼女には信じられないことだった。
凛子が、わずかに残った魔力で魔法陣を展開し、その光の中に身を滑り込ませた。彼女は、この情報を持ち帰るべく、その場から瞬間移動する。
冠「うん。ああ見えて、平和への執着心がすごいから。しかも、あの子はかの有名な南の魔…」
冠は凛子の消えた空間に向かって、言葉を続けた。その表情には、すべてを見通しているかのような、深い笑みが浮かんでいる。
冠「あれ?いない。もう行っちゃったのかな?」
冠はきょとんとした顔で、誰もいなくなった空間を見回した。彼女の言葉は、最後まで誰にも聞かれることなく、屋敷の静寂の中に溶けていった。