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神獣妖人  作者: リアリス・リスタート
第一章 魔法使い編
5/8

神獣妖人戦争

凛子「あなた達、魔法使いよね?神獣妖人戦争を知らないの…?」


凛子の声には、困惑と、ほんのわずかな絶望が混じっていた。この世界を揺るがす最大の戦いを、なぜこの二人が知らないのか。彼女の目には、担と冠の表情が信じられないものとして映っている。人間界ではまだその存在すら囁かれていない、遠い世界の出来事のように。


担「心中用心…?カップル禁止にでもしようとして争ってんのか…?」


担は眉間に深い皺を寄せ、怪訝な顔で凛子を見返した。彼の表情は、まるで意味不明な冗談を聞かされた時のような、心底どうでもよさそうなものだ。


凛子「すごいわね。そんな発想はなかったわ」


凛子がもはや呆れすぎて、感心するような口調で言った。その皮肉めいた称賛に、担は涼しい顔をしている。


冠「しんじゅうようじん…?うーん…?」


冠は首を傾げ、可愛らしい仕草で考え込んでいる。彼女の頭の中には、戦争などという物騒な概念は存在しないかのようだ。


凛子「神人、獣人、妖人、人間の戦争ってことよ」


凛子が簡潔に説明した途端、担と冠の顔に同時に驚愕の表情が浮かんだ。


担、冠「「あー…なるほ…ええ!?」」


まさかの理解に、凛子は心底呆れたようにため息をついた。


凛子「本当に何も知らないのね…」


担「待て待て待て!なんでうちはともかく、冠姉に連絡行ってねーの!?」


担は急に前のめりになり、冠に問う。彼の声には、いつもの無気力さとは異なる焦りの色が混じっていた。


冠「あ、なんかそんなこと言ってたような…担ちゃんへのプレゼント選んでたから、気に留めなかったけど…」


冠は朗らかな笑顔のまま、何の悪気もなく答える。彼女にとって、担へのプレゼントこそが、世界の優先順位の最上位にあるようだ。


担「なるほど。だからプレゼントギロチンになってたのか。納得納得」


担は妙に冷静に頷き、合点がいったような顔をした。その口ぶりからは、冠の異常な行動にも慣れきっている様子が伺える。いや、恐ろしい奴だな、冠。


冠「担ちゃんにこそ、連絡行ってなかったの?」


冠が純粋な疑問を投げかける。


担「俺んとこは知名度皆無だから。ただの怪しい店のお兄さん、くらいにしか思われてない」


担は肩をすくめ、自嘲気味に答えた。


冠「優秀なのにね」


冠の言葉は、担の力を知る者だけが発する、真実の称賛のように響く。


担「俺はそもそも…」


担が何か言いかけた、その時だった。


凛子「腕試しに…少し私と戦ってちょうだい」


凛子は、突然、真っ直ぐに担を見つめ、挑戦的な眼差しを向けた。その言葉は、まるで彼女の中で何かが吹っ切れたかのようだった。


冠「え…?な、なんで?」


冠は目を丸くして、困惑したように尋ねる。彼女の頭には、戦う理由が全く理解できないのだろう。


担「わかった」


担は、一瞬の逡巡もなく、あっさりと承諾した。彼の顔には、どこか面白いものを見つけたような、微かな笑みが浮かんでいるようにも見える。


冠「担ちゃん!?」


冠が驚いて声を上げた。彼女の知る担は、面倒事を避けることを好むはずだ。


担「で?魔法使いの賭けとやらだろ?何が目的だ?」


担は凛子に向かって尋ねた。その声には、彼女の意図を見透かすような、鋭い響きがあった。


凛子「あなた達は、戦争に興味がなさそう。だから…戦争への参加を要求する」


凛子は、一切の迷いなく、はっきりと自分の目的を告げた。その瞳の奥には、強い決意と、何かを成し遂げようとする切羽詰まった感情が宿っていた。


担「…わかった。冠姉は?」


担は冠に視線を向ける。


冠「なるほど…いいよ」


冠はいつもの笑顔を崩さず、まるでゲームでもするかのように、あっさりと了承した。彼女はその白い手から、細身の杖を抜き出した。


担「そっちが先攻でどうぞ」


担は悠然と構え、凛子に促した。彼の態度には、絶対的な自信が窺える。


凛子「わかったわ…エアドレスカミリア!」


凛子が杖を振り、その声と共に、激しい風が渦巻き、周囲の空気が一瞬で圧縮されるような異音が響いた。彼女の杖の先端から、眩い光を放つ魔力の塊が、弾丸のように担めがけて放たれた。それは、周囲の空間すら歪ませるような、強烈な爆発系の攻撃魔法だった。

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