四季の魔法使い、冠登場!?
担「ほらよ。従姉妹の家にご到着だ」
担がぶっきらぼうにそう告げると、二人が転送された先は、まさに息をのむような場所だった。漆黒の瓦を戴いた巨大な切妻屋根が空を切り、重厚な木製の扉には精巧な彫刻が施されている。窓からは淡い光が漏れ、まるで城のような荘厳さを放つ、広大な屋敷が目の前にそびえていた。空気は澄み、どこか古の魔法が息づいているような気配が漂う。
「あら?担ちゃん!?久しぶりね!」
そのとき、屋敷の重厚な扉が音もなく開き、そこから一人の女性が現れた。艶やかな黒髪は膝まで届くほど長く、穏やかな笑みを湛えた顔には、どこか神秘的な美しさが宿っている。彼女の周りには、微かに甘い花の香りが漂い、その存在は屋敷の厳かな雰囲気に溶け込んでいた。
担「冠姉、客だ。」
担は凛子を指差して、まるで興味がないかのように淡々と告げる。
冠「あらあら〜…って、なんで縛られているの?」
冠は相変わらず優しげな笑顔を浮かべたまま、不思議そうに首を傾げ、担に尋ねた。その声は鈴の音のように心地よいが、その問いかけはどこか現実離れしている。
担「うちの窓割って不法侵入してきたから」
担は簡潔に状況を説明する。すると、冠は笑顔を崩さぬまま、恐ろしい言葉を口にした。
冠「それは重罪ね。処刑しましょう!ちょうど今、魔法のギロチンがあるのよ!担ちゃんの誕生日プレゼントに!」
その言葉に、担は思わず冠から一歩、いや、二歩ほど距離を取った。彼の顔に、微かな動揺が走る。
担「魔法のギロチン…?普通のと何か差があるのか…?」
担の問いに、冠は瞳をキラキラと輝かせながら、無邪気な声で答えた。
冠「人を殺せるよ!」
担「ただの殺人兵器じゃん…何も変わらないじゃん…」
担は心底呆れたように呟く。冠の基準は、明らかに常識からかけ離れていた。
冠「担くんに迷惑をかけた子は…死刑だよ」
冠が相変わらず笑顔で恐ろしいことを言う。その笑顔の裏に、底知れない狂気が垣間見えるようだった。
担「やめてくれ…冠姉に用があるらしいんだ。拘束解除。沈黙解除」
担は渋々といった様子で、凛子にかけていた魔法を解いた。縄が解け、凛子の口が開く。
凛子「あなたが…四季の魔法使い…?」
凛子は、目の前の冠が放つ異様なオーラに、戸惑いを隠せない様子で尋ねた。彼女の表情には、焦りと困惑が入り混じっている。
担「みりゃ分かんだろ?」
担は凛子の問いを一蹴する。
冠「君、私に何の用なの?」
冠は凛子に向き直り、優しい笑顔のまま尋ねた。その視線は、凛子の心を深く見透かすかのように鋭い。
凛子「神獣妖人戦争に、参加して欲しいのよ」
凛子は意を決したように、はっきりと告げた。その言葉には、切羽詰まったような響きがある。
担、冠「神獣妖人戦争?」
担は眉をひそめ、冠は笑顔のまま首を傾げる。その時、空間が軋むような、奇妙な歪んだ音がした。それは、まるでこの世界の均衡が崩れ始めたかのような、不穏な響きだった。