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「放してあげて」
私兵達に穏やかな声がかかる。
命令通りに拘束が解かれると、支えを失った少女が目前に立つ令嬢へと倒れ込んだ。
「お嬢様」
「大丈夫よ」
それを受け止めた彼女は優しく背中に手を回す。少女の身体が重力に従い崩れ落ちていくのを引き留めず、一緒になって膝を折った。
「本当はね、貴女の言う通りなの」
音を拾うことのない少女に語りかけながら、長くなった髪に指を通す。摘んで、絡めて、戯れるように触れていた令嬢は、やがて少女の後頭部に手を添えた。
「私は羨ましい」
長髪に埋まった唇からくぐもった声が漏れる。
少女を抱き寄せた令嬢は、その耳元で切なげに吐息を零した。
「殿下のことが、心の底から羨ましいわ」
まるで告白のように。




