表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ヘイト=ワキゲニズム 〜狂った世界で生き残れ〜

作者: naka

xxxx年、人類はわき毛を嫌った。いや、そんなイヤイヤ期の子供が多用するような表現では語ることのできない、強烈な嫌悪を人類は示した。


〜わき毛を持つ者は人間ではない、殺せ〜


という『ヘイト=ワキゲニズム』という名の過激な思想が世に広まった。脇毛があれば、殺される、一点の黒ずみさえも許されない、それがこの世界のルールである。脇毛ごときで人を殺すなんてあり得ない。30ヤード先のハエのまつ毛が落ちる音が鮮明に聞こえるよりもあり得ない、と思うだろう。しかし、差別なんてものは根本的にはそんなものだ。初対面で好きなしゃもじを徹底的に問い詰めるよりもおかしくて、その渦中にいない限りはどんなに小さい子供でもわかる簡単な話。そんなもので今日も人は死んでいく。





今日は、デラウェアの豊作記念祭で、それで作られたワインの品評会が開催されている。煩悩の数よりは少なく、両手足の指の数では足りない程度の人だかりができている。彼はダニ氏。年齢は、おじさんと呼ぶには少々若いが、お兄さんといったら違和感の塊といったところで、際立った特徴のないことが特徴の、絵に描いた平々凡々の商人だ。ただ一点、脇毛が生えるスピードが常人の13倍であることを除いて。



『いろんな味覚がワインにはあります。うまみ、さんみ、エドはるみ、にがみ、などです。』


ソムリエは小慣れた手つきでワイングラスをとり、グラスの中のワインを口に含む、


『ふーむ、コクがありますね、酒のようだ。』


その時、ソムリエのタキシードの袖から、毛が出てきた。ダニ氏以外の観客が狂った。


『毛があるぞ、脇毛だぁ、殺せ!!!』


『脇毛が生えてるくせに気取ってワインなんか嗜んでるんじゃねぇ!!!!』


観客達はソムリエをチタン製のナイフで襲った。ソムリエは死んだ。朝に徹底的に脇毛を剃ったが、そろそろまた生えてくる恐れがあるため、ダニ氏は、心臓の下半身を無理やり塩漬けにされたような恐怖と、無残な姿になった同胞への同情を感じながら、慌てふためき、家に逃げ帰った。


『はぁっっ、はあ、、!!!!nん、ぐぅ!!あてァ、!!ギャオス!!』


玄関に崩れ落ちたダニ氏は、言葉にならない憎しみと恐怖が時間が経つにつれて雪だるまのように増えていく。小太鼓のように動くダニ氏の心臓の鼓動をおさめるには、シェフが玉ねぎを71個切るほどの長い時間が経った。心臓の小太鼓合唱が終わった後、ふと、自分のわきを見た。


『!!?』


脇には紛れもない脇毛が生えていた。再び、ダニ氏の心臓は和尚さんがリズミカルに除夜の鐘を鳴らすように鼓動する。急いで洗面所に向かう。カミソリは見つかったが、どうしてもシェービングクリームが見当たらない。


『もう、勘弁してくれ!!お願いだ、仏様、女神様、お地蔵さまぁ!!!!」



ダニ氏はライオンのタテガミのようになった脇毛ともに目が覚ました。


『夢、なのか?、、やったァ!!よかったぁ!』


ダニ氏は歓喜した。おもむろにテレビのニュースで時間を確認する。デラウェアの豊作のニュースの画面の右上に表示された時刻を見ると午前8時だった。30分後にはマダガスカル人の売人とブラックペッパーについての商談がある。


『おっと、いけない、急がねば、脇毛は、、、仕方ないな、ちょっと毛が落ちたりするかもしれないが、厚手のスーツで隠せば問題ないだろう。商談に行こう。待ち合わせの時間に遅れるよりもいいだろう。』


ダニ氏は商談へと向かった。ダニ氏は家のテレビを消し忘れていた。


『臨時ニュースです。昨日の午後、ソムリエが市民たちによって殺されました。脇毛が生えていたからという動機のようです。専門家によれば、脇毛が生えていたから仕方ないとの見方をしているようです。また、、、、』





〜おわり〜

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ