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5.3日目


ギルド《深淵の叡智(しんえんのえいち)》執務室内で少し暗い雰囲気が漂っていた。

このギルドのマスター、ダリウス・ブラッドフォードの補佐役リブレ・ハウンドは2日の休みを終え、仕事に来たわけだが。


ギルドマスターが不在、マスターへの依頼の品多数、ギルド内でのマスターへの反逆行為、エリオスさんの帰還及びダンジョン攻略の状況等。


「マスター…帰ってきてください。」


切なる懇願とはまさにこのことだと周りに居たギルド職員は憐みの目を彼に向けていた。


一息ついて、リブレはまず、マスターへの依頼品から手を付けることにした。

そして椅子から立ち上がり。


「さて、依頼品をまず確認しに行きますよ皆さん。」


そう言われ他の職員達はリブレの後をついて行くが。


「すみません、依頼品は本当にあるんでしょうか?マスターが居なくなった日から依頼は受けていないにしても、その前日までは依頼がありました。

少しあるにしても依頼された数が数です、数個だけ渡すとギルドの名前にも傷がついてしまうのではないでしょうか?」


それを聞いたリブレは少しおかしいなことを聞いたように微笑みながら。


「君は、新人ですね。安心してください、ついてくればわかりますよ。」


そうして着いた先は、【マスターの部屋】と書かれた部屋ではなく、横の部屋でリブレは躊躇なくその扉を開けた。



中は作業用の机とポーション台、裁縫道具や彫金台などが置かれた部屋だった。

リブレはその部屋の中にある【倉庫】と書かれた扉を開けて。


「ありましたよ、これで依頼品の件は完了ですね。マスターが帰ってくるまでは他のギルドからの依頼などはすべて断ってください、駄々を捏ねる方が居ましたら私が対処しますから。」


そういって発注書を確認しながらリブレはギルド別に依頼品を振り分けながら次の問題をどう解決するかを考えていた。


「皆さんはここで、ギルド別に依頼品を振り分けて、それが終わりましたら他ギルドの方々に品が出来たという旨の手紙を出してください、それが終わりましたら今日は帰宅していただいて大丈夫ですよ。」


それを聞いた職員達はこの数を…と山積みになったポーション、アクセサリーなどを見上げていた。



さて、次はとリブレはとある部屋に向かうために歩き出した。

エリオスさんからの報告はあとから聞くとして、問題は反逆行為があったこと、あのマスターのことですから、特に気にはしていないとは思いますが、ギルドの秩序が乱れてしまうのは些か問題がある。


どう対処しようかと考えているうちに目的の場所に着いた。

少し扉を開けるリブレだが、漂う鉄の匂いに少し顔をしかめた。


「マスターが帰ってきたらエリオスさんを叱ってもらわないとですね。」

まあ、あの人は叱るなんてことしないだろうけど、と思いながら。

中で倒れている人たちにアイテムポーチから取り出したポーションを頭から掛けて彼らの様子を見る。


「女性にまで容赦ないんですから…まあ、自業自得ですけど。」


と女性にもポーションを掛けて怪我が治っていく様子を眺めつつ心の中にある黒いものは、彼らを最初から居なかったことにした方が楽なのではないだろうかなどと考えていると。


「げっほっ…いってー…」

一人の少年が身体を起こしたようだった。

赤い短髪、そこそこ鍛えているであろう少年は不快そうな顔で苦痛を訴えている。


「あなたがエドワードさんですね、あなたと、そしてここで寝ている方々に今回の罰を与えます、《妖精の森》に居る ヒールスプラウトのレア素材《聖樹の雫》を10日で500個納品、その他素材も1万程採ってきてください、それで今回問題は不問と致しましょう。」

リブレはそう優しく微笑むと。


「はあ???そんなの無理に決まってんだろ!!なんで俺らがそんなことしなきゃならねーんだよ!!10日で500なんでぜってー集まらねぇ!!無理難題吹っ掛けてギルドから追放するんだろう!それなら今すぐ追放しやがれ!!!」

エドワードは腕を振るわせつつリブレに怒りを露わにしていた。


「はぁー…、今すぐあなた方を追放することに何のメリットがあるんですか?それにですよこれは慈悲です、今この交渉に頷かないのならー…そうですね、あなたが尊敬するグレンさんにこの失態全ての責任を取って頂いても構いません、もしくはそうですね、今回の被害における賠償金を払っていただいても構いませんよ?あなた方に払えるとは到底思えませんが。」

リブレは相変わらず微笑んだままそう提案した。


「はあ?!!!!あの人は関係ないだろう!今回は俺らの独断でやったことだ!!グレンさんは関係ねぇ!!!払えばいいんだろ!払えば!いくらだよ!!」

エドワードはリブレに詰め寄った。


「ざっと560白金貨といったところでしょうか?あなた方に払えますか?」


その言葉を聞いたエドワードの顔はみるみる青くなってリブレの目の前で膝から崩れ落ちた。


「そんな…大金俺らには…」

がっくりと項垂れるエドワードにリブレは


「今回の依頼をして頂けたら、払わなくても構わないんですよ?こんなにいい提案もうないと思いますけど、どうしますか?」

少し首をかしげながら、ではこの話はなかったことにっとリブレが言い切ろうとした時。


「や、やればいいんだろうが!!!やれば!!」


それを聞いたリブレは笑顔で頷いた。


今回不問にするといった内容が、マスターが不在になったことによる依頼品販売の滞りにおける処罰だということをエドワードたちは分かっていないが、そんなこと教えるつもりは毛頭ない。


あとのことは初期メンバー組とマスターにお任せしましょうと心の中で思いつつ。



「では、張り切って働いてきてくださいね。」

リブレはエドワードたちに笑顔でそう伝え部屋を後にした。




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【この世界における通貨の詳細】



1銅貨 1/100 青銅貨 主に日用雑貨を購入する際に使用される。

1青銅貨 1 青銅貨 宿屋市場など日常的に使用される。

1銀貨  10 青銅貨 冒険者たち下級ポーションなどの取引に使用される。

1金貨  100 青銅貨 一流の冒険者の装備などの取引に使用される。

1白金貨 1000 青銅貨 もっとも希少性の高い物の取引などに使用される。





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