2.1日目
この街の時計塔の前の通りの道にある。
大きな建物の中の依頼ボードと書かれた前にその男は居た。
見た目があまりにも怪しく何故こんなところに?という視線が彼に向けられていた時だった。
「ダリウス!お前…なんでここに居るんだ?あいつらの任務が終わったのか?」
身体が日に焼けていて顔の至る所に傷のある男が少し変わった風貌のその男に声を掛けた。
『こんにちは、グレイブさん。彼らはまだダンジョン攻略中だと思います。』
そういって目元は黒い布で覆われていて見れないが、口元が少し微笑んでいる、今頃ダンジョンで暴れているであろう仲間のことを思い出しているのだろう。
「じゃあ、なんでお前がここに居るんだ?ダンジョンに行こうってわけでもねーだろう。」
少し怪訝そうな顔をしたグレイブはダリウスに尋ねた。
『実は、最近入ったばかりの子たちに追い出されてしまいまして。』
少し困りました…っと笑って答えているそんな彼を見て、少し考えてはみたが理解が追い付かないグレイブは。
「いや…ちょっと待ってくれ、追い出されたっって言ったか?外に散歩に行けとかそういうことか?」
うまく考えが纏まらない頭で、そう尋ねるが。
『いえ、なんでもマスターに相応しくないとかで、追い出されてしまいました。どうしましょう?』
何故この男はこうも呑気なのか、何故腹を立てないのか、何故こんなにも他のやつらに舐められているのか、そんなことを考えてはみたがこの男には無意味だろう。
怒ったところを出会ってから一度も見たことがない。
「あのなー、お前が居ないって気付いたらあいつら大暴れするぞ、下手したら半殺しでは済まないぞ!もう少しマスターらしくしろってあれほど伝えといたろ!」
この男はマスターらしくなく、よくこの男のギルドの者から(「うちのマスター変なんです!!」)という変な話ばかり聞かされる。
だがこの男と共にギルドを設立すると言い出した初期メンバー8人は違う、この男が如何に優れているかを理解している。
だからこそ問題は、この男を追い出した連中の安否だ、今はまだギルドに帰還していないからいいが、帰ってきたら何が起こるか…。
『マスターらしくって僕には向いていないんですよ、僕はもともとはバトルサポーター希望ですし、物を作ることが好きなんですから。』
そう、困ったように笑うダリウスだが、グレイブは気が気ではない。
「お前早く帰れ、じゃねーとそのうち大変なことになるってわかってんだろ?お前たちのギルドのせいで俺ら冒険者ギルドにまで迷惑掛けてくれるなよ?」
グレイブは頭に手を置きながら、今後起こるであろう事態について考えていた。
『その時はよろしくお願いしますね。あ、そうそう僕は今から素材集めの為にダンジョンに行こうと思ってますので、もしもの時はそちらもよろしくお願いします。』
もしもというのは、ダリウスの仲間達が戻ってきたときの保険だろう。
それにしても。
「お前がダンジョンに行くなんて珍しいな、そんなに必要なものならこっちで用意させるが?」
ダリウスは少し考えた後に首を横に振って
『いえ、もしもの時の為に皆さんのご機嫌取りようですから、僕が集めてきますよその方が彼らも喜ぶので。』
そう笑いながら
冒険者ギルドの受付のほうにダリウスは歩いていたが、ふと止まり。
『彼らをあまり叱らないであげてくださいね。』
とだけ伝え、一礼して受付に向かって行った。
「はぁ…自分の問題は自分で解決しろってんだよ…丸投げしやがって。」
グレイブはそうため息をつきながら、ダリウスの背中をただ見つめながら今後起こるであろう出来事に再度ため息をついたのである。