第22話:人生の墓場はキラキラに
肆の月を跨ぎ、伍の月も諸々の準備の忙しさに忙殺され……そして、終の月の末―――。
一年の終わり。
六大神の中でも冥府を司る神として知られる【淵冥神】が統べる季節。
あちらの感性のままなら、死を連想させるこの時期にソレを執り行おうとするのは意味が分からないだろう。
けど、この世界の価値観では逆。
「結婚式を行うのに最も適した季節は?」と聞かれたものの多くは終の月だと答える。
理由は簡単、かの淵冥神は冥府の神であると共に、契約の神でもあり、六神の中でも最も慈悲深いとされる神だからだ。
淵冥神の前で永遠の愛を誓う事こそが人々にとっては真実の愛の証明であり、死が二人を別つまで添い遂げる事の証であるってわけだね。
当然それが貴族のモノとなれば大規模。
大貴族……帝室に連なる家のモノとなれば―――、もう想像すらつかない。
むしろよくこの短期間で準備したもので。
「……、……。ぬ……ぅ」
「坊ちゃま。行ったり来たりと、落ち着きがありませぬな」
式の準備は粛々と進められた。
かつて神域の才女ともてはやされながらも、時間が経つと共に政界からは忘れられていた公爵家の第三令嬢の結婚話。
その相手がここ数年以前は話題に上る事すらなかった田舎貴族と来れば、噂好きの帝国民は勿論、大貴族との縁を結びたいと虎視眈々と機会を伺っていた者たちにとっても様々な感情の混ざり合うニュースにほかならず。
或いは、帝国に複数存在する大陸ギルド支部の冒険者たちすらも酒場の席で専らの話題にしているのだと―――そう隣の老いぼれが逝ってた。
「字が違いますな、坊ちゃま」
「問題ない。そう遠くないうちに現実になるからな―――ヴァレット、貴様、何を企んでいる?」
「企む? はて……」
とぼけるな。
お前が僕の親交のある貴族以外、帝国各所の貴族家は愚か他国の商人やら神殿連合にまで招待状をスパムメールしてたことは調べが付いてるんだ。
「意味が解らん。そんな事をしてお前に何の利がある? 重ね、どれだけ事を大きくするつもりだ。アノール領を財政破綻させるつもりか?」
「ほほっ。畳みかけておりますが、それこそ見当違い。祝宴は全てオクターヴ公が持ってくれるではありませぬか。式がどれ程大きくなったとて、お財布は痛みませぬ」
「ぬぬぅ……! 正論ッ!」
いや、良いじゃないか、感情論だって。
僕の思い描いてた理想はお金を掛けない小さな婚礼であって―――うるさっ、こういう幸福自慢みたいなのは―――うるさっ、余計な敵を作るだけであるからして……うるさっ。
さっきからギシギシうるさいな。
だれ? 真昼間から。
「正直な所、羨ましすぎて歯軋りが止まりません……」
お前か騎士。
道理で、ギリギリうるさかったわけだ。
「ちくしょおォォォォォ……。俺もあんな超美人で優しそうで包容力ありそうでおっぱい大きい年下の儚げなお嫁さんほしいいぃぃ……!!」
「……………」
「年下奥さんによしよししてほしいぃ……」
……これからその女性の夫になる男の前で言うか? 普通。
しかも主君。
余程淵冥神に会いに行きたいらしい。
「ヴァレット、剣―――じゃなくて。これ、今からでも追放できぬか? 魔物になるぞその内」
「冒険者は欲望に正直な生き物ですからなぁ」
変な所で肩持つんだよなァ。
確かに分からなくはないけど、そうだとしてもこういう外面でしか物事を見てない奴は滅ぶべきだ。
「アルベリヒ。顔じゃないだろう、人は」
「この……ッ。マジでどの面下げて―――凹ませてぇ……このあるじ」
「黙れ。男は顔じゃない」
「ふふふッ―――あちらも中々に姦しいものだったが、賑やかだな、こちらも」
「あっ! ル、ルクソールさま……!? これは大変な失礼を……」
「良い、ダインス卿。うむ、うむ。分かるぞ。男のさが。美しい女性には手を伸ばしたくなるものだ。同じ男として、どうしてそれを否定できようか」
「……お、おぉ……! 私が仕えるべき真の主がここに!」
おい。
丁度真上から淵冥神さま見てるぞ。
乗り換えようが別に構わないけど、あの誓い破ったらあれだからな? マジであれだと思うぞ?
っていうか……。
「騙されるなよ、アルベリヒ。ルクソールさまの奥方様は青薔薇の令嬢だ。第一子もついこの前生まれている」
「……あおばら?」
「何だ、知っていたか。発表したのはつい先日だったが、耳が早いな、君も」
「……。青薔薇の―――。学園のミスコンで連覇した超美人じゃねえかッ!」
そ。
僕らの二個下の学年で、入学当日にラブレターでバスタブが満たされたって話が出た女性。
外面や所作、礼儀作法の美しさなどを総合で競うコンテストで連覇したっていう絶世の美女だ。
彼女自身の出自も歴史ある名家で今現在の勢いも中々……顔よし頭よし武力よし、更には家柄よしの公爵嫡男と並べば、まさに最強カップル。
……まぁ彼女と僕には負けるだろうけどね。
今に騙されたことに気付いたアルベリヒは礼服の裾を噛み締め、ルクソールさまはそれがとても面白い事のように笑っている。
僕を虐めても顔に出ないから、出る方の部下での遊び方を覚えたらしい。
やがて、彼の視線はこちらに向き。
「くくくっ……ルクソールさま、か。……よそよそしいではないか、レイク。私は君の義兄になるのだぞ? このような限られた場でくらい、そう呼んでくれ」
「……では、義兄上。我が騎士をあまり虐めないでやってください」
彼からすれば精一杯なんだからさ。
一応今は無礼講―――この個室には僕たちしかいない事もあり、アルベリヒのあまりにあんまりな痴態を笑って許してくれるらしい。
彼自身、学園時代からユーモアもある隙の無い人物として有名だったしね。
生きる嫌味かな?
「義兄……。良い響きだ。幼少期の私は、弟の方が欲しかったこともあってな」
「おっふ」
義兄と呼ばれたことに気を良くしたか、彼は僕の背中を一度叩き。
その結構な力強さに思わず声が出る。
本当に力強いな、線は細めなのに。
「と、目的を忘れるところだった。さぁ、義弟よ。妹が待っているぞ」
「―――準備ができたので?」
「今しがたな。それで私が呼びに来たのだ。―――気絶するんじゃないぞ?」
………。
弟の方が欲しかった……とか言っておいて、もしかしてこの貴公子シスコンなんじゃないかな。
オクターヴ家の家族仲があまりに良いというのは公然の事実だからこそ、余計に邪推してしまう。
が、今はそんな事より。
「行ってくるっ……!」
「えぇ、行ってらっしゃいませ旦那様。私達は先に行っておりますゆえ―――そら、アルベリヒ。参りますぞ」
「ちくしょォ……」
………。
……………。
そこは、衣装の着付けなどを行っている筈の部屋。
普段の祝宴の際なども淑女らの武器庫として解放されている場所であるが、先のルクソールさまの言葉通り、賑やかな笑い声などが聞こえてきて。
果たしてどのような状況なのかと、緊張のままに扉の前に立ち。
「お待ちしておりました。どうぞ、伯爵さま」
ノックから1秒と空けず扉を開けてくれたのは、彼女の傍付きである黒髪の侍従で。
招き入れられるまま、室内へと入っていく。
「ぁ……。あなたさま……!」
「―――――」
すまない、待たせてしまった……。
取り敢えずは、何事にも揺るがぬという強い意思のまま、その一言を最初に言うという手筈だった。
叶わなかった。
扉を跨ぐと同時、僕はすぐに言葉と思考する為の知性を失っていたんだ。
或いは、どんな魔術よりも余程恐ろしい。
………。
この帝国において花嫁衣裳の配色の規定とかは特にない。
けど、純潔やら白公の存在やら、他の国や世界と同じような思考の帰結でやはり白が好まれる傾向にあるのは確かで。
羽のようにふわりと広がる、純白で上質な生地の衣装。
レース生地などが多くあしらわれた、まさにウェディングドレスをを感じさせるソレへ、極薄のケープのような重ね着が華やかさを増し、肌色の残る豊かな胸元が女性の美を強調する。
指先から肘奥まで、白糸で刺繍された精緻な花柄が目を惹くシルクの長手袋もあり、彼女の肌を晒している要素は事実少ない筈で。
にも拘らず、あまりに色香に満ちている。
丹念に解かされ編み込まれた桃色の長髪も、ふわりと柔らかに揺れ……。
こんなの、男だろうが女だろうが関係ない。
誰であっても目を奪われる―――女神がそこにいたんだ。
「……………」
………。
「奇麗だ……」
「あら……、うふふっ」
「「―――――」」
……?
「ほーら、お嬢様ぁ? 私めの言った通りでしょう!?」
「くっ。負けですか……!」
「大穴狙い過ぎましたねぇ……。やっぱり爽やか伯爵さまも只の男なんですかぁ……へっ」
「あなた達……、良い加減に……!」
たしなめるような傍付きさんを他所に、ノリノリな侍従さんたちはボードに描かれた幾つかの文章―――その中で「奇麗だ」を丸で囲み賑やか。
……。
さては僕の第一反応で賭けやってやがったな?
こんな所にいられるか、変な言葉を英才教育される前に、さっさと彼女は貰っていくとしよう。
「―――マリー。既に準備は出来ているらしい」
「……はい」
「ゆっくりと……怖かったら、すぐに言ってくれ」
僕は車椅子に座る花嫁の身体へ腕を回し、伸ばされ、首に回される彼女の手が安定すると同時に横抱きに抱える。
……抱き上げた女性の身体はあまりに軽く、柔らかく。
このまま消えてしまうか、溶けてしまいそうで。
「怖くはないか?」
「……ふふっ。いえ、全く……。あなたさまを、信じてますから」
「「きゃぁ~~~!!」」
「あなた達……」
………無視だ、無視。
背後から襲い掛かる歓声の波。
こんなもので狼狽えていては、次の大津波や大嵐に攫われるだけと、確かな足取りで進む。
「「――――――――――」」
………。
事実、歩み出た屋外は大歓声に包まれ、僕と彼女はあまりに多くの人々の注目の的となった。
公爵邸別宅の前に設えられた式場。
知った顔も知らない顔もいるけど、どちらにせよ歓声を上げている人々という意味では同一。
全ての注目を一身に浴びるまま、僕ははたと腕の中に目を向ける。
季節は終の月……目が見えない状態―――そして鋭敏である彼女の耳……、沢山の見物人たちの歓声を一身に受けるのは、ハッキリ怖い筈だ。
それも、自分の意思で動けず、誰かに抱えられている中では尚のこと。
けど……彼女は、そんな恐怖など欠片もないとでも言うかのようにゆったりと僕の首に腕を回している。
欠片とて震えてはいない。
それが、逆に不思議で。
「あっ……、鼓動が―――うふふっ、緊張されているのですね?」
「心は一般人だ」
「―――ふふふっ……!」
小さく会話をすれば、彼女はさもおかしそうにくすくすと笑って。
「行きましょう? あなたさま」
「……あぁ」
むしろ、僕の方が緊張してるじゃないか、これじゃあ。
まぁ公爵令嬢と田舎貴族の結婚なんだからそうあってしかるべきなんだが……。
別宅から出て歩き始めれば、割れんばかりの拍手が四方から鳴り響く。
今この瞬間にも公爵家に忠実な騎士団、そして術師たちが万全の警護体制でもって周囲を固めている。
聞いた話では帝室直属の近衛騎士団たる牙狼衆を動員したとも。
例え超一流の暗殺者、或いは魔物の王たる竜種であっても襲撃は無謀な布陣だ。
……どれだけの額が動いてるのか想像したくもない。
小さな祝宴で良いって言った僕に対して、「んなわけいくか」って言ったのは他ならぬオクターヴ公なわけだし、お言葉に甘えておくけどさ。
歩む……花嫁を抱え、ただゆっくりと歩み続ける。
やがて辿り着くは式場の中央の舞台。
一瞬の早業で用意された通常よりも座高の高い椅子の上に彼女を座らせ、僕はその対面へ。
疑問、或いは困惑、期待。
これからの事に様々な感情が渦巻き静まり返る会場……大勢の見守る中、花嫁の衣装を纏い座った彼女の左手指へ、ソレを嵌めた。
……結婚指輪。
向こうの世界では当然主流。
けど、あくまでアクセサリーの一つである指輪を、思いを寄せる異性へ贈り一生を添い遂げる誓いにするというのは、この世界では結構マイナーな方式。
遡っても二百数十年前―――七代目勇者の時代から伝わる比較的新しい伝統だ。
歴代勇者の中でも屈指の知名度を誇り、大陸ギルドの初代総長たる【聖者】リサ・オノデラ。
歴代最強とうたわれる【至高の勇者】ソロモン。
二人の物語に出てくる一幕になぞらえ、花嫁の指に輝くそれ。
「では―――」
「ジルドラード帝国アノール領伯爵、レイクアノール。汝はいついかなる時、いかなる困難に直面しようとも、帰るべき花嫁の前に。己が領へ舞い戻ると誓うか」
「誓いましょう」
「オクターヴ公爵家、ローゼマリー。汝はいついかなる時も夫を支え、共に在り続け、そして夫との間に領の未来をもうける事を誓うか」
「誓います……!」
「なれば契約の大神、黒き龍の化身デストピア! 大いなる冥府の神よ! いま、ここに新たな契約が結ばれました……! レイクアノール・ユスティーア。ローゼマリー・ユスティーア。夫妻の行く末に……、新たなる旅立ちに、大いなるご加護を……!! 六神の祝福を!」
………。
大枚はたいて呼んだというアトラ教高位司祭の口上が終わったのち。
僕たちは取り決め通り、そのまま互いに口付けを交わす。
「「―――――」」
―――やっぱ恥ずかしいな、こんな大勢の前で誓いのキスって。
やってること自体は最高で脳がとろけそうな甘さなのに、余韻にも浸りたいのに、何が悲しくて……。
世の新郎新婦って本当にこんな公開ショーみたいな真似してんの?
露出狂?
実のところ、式がここまで大きくなった最大の要因は段取りを決めてくれた公爵ではなく、僕のお嫁さんだったり。
諸々の事情もあり、一種の宣伝効果も見込めるという事で、それすらも利用せよという花嫁さんからの提案の結果がこれなのだ。
そもそも自分のパパすら思いっきり丸め込んだらしく―――僕より余程強かな女性だな。
多分、状況を一番楽しんでいるのは……。
「―――あなたさま。私、とても幸せです……」
「……私もだ」
これ、もしかしたら尻に敷かれる未来。
そうして、内心の戦慄を押し隠しつつも会場を去ろうと、再び彼女を抱き上げ、歩み出し……。
何事もなく、僕がどうでも良い恥辱を覚えただけで式が終わりを迎えつつあった。
……。
まさに、その時だった。
「「………!!」」
空から何かが降ってきた。
それは、光だ。
まるで極光が如き金色の輝きと、同じくきらめきを放つ緑の輝き。
……どちらも十メートル近い、光のもや。
それらはやがて、四足歩行の有角動物を思わせる形、或いは翼を持つ鳥類のような形をおぼろげにとり、上空で円を描くように旋回する。
金色の四足獣と、深緑の大翼鳥。
対角線上に位置したまま、変わらぬ間隔のまま回り続けるそれら。
「あれは……?」
「見事な……。いや、一体あれはどのような……」
「襲撃―――、では、なさそうですが……」
ただ、何を始めるでもなく上空を回り続ける光の化身。
その真下……丁度中心に位置しているのは、まさに僕と花嫁さん。
回る金光、緑光は今に細やかな星屑として地上へ降り注ぎ、あまりに幻想的かつ非現実的な美をその場に顕現させて―――。
「ほおォォォ……素晴らしい演出ですなぁ、これは」
「余程の術師が用意したものでしょう」
「流石はオクターヴ。このような魔術技法は私も目にした事がありませんよ……」
いや、予定にこんな演出はないぞ。
ヴァレットのサプライズか? けど、彼だって流石にこんな見栄えだけの魔術のスキルツリーを伸ばしているという話は聞いたことも……。
「―――、あなたさま」
「……?」
「参りましょう……! お早くっ」
「あ、あぁ……」
いつしか参加者の視線は上空に釘付けで。
そんな中、明らかに何かを確信した様子のお嫁さんに導かれるまま、僕は歩を進める。
………。
その光は今に僕が屋内へ姿を消す頃、完全に姿を消失させたんだ。
◇
屋内へ入り込む。
お嫁さんの侍従が開けてくれた扉を潜り、二人きりになった防音の室内で一息つく。
果たして、先のアレは何だったのか。
どうにも頭の中で思い当たる節があるような、ないような……考えつつも高揚や緊張があったため、それを落ち着かせるために水でも含もうと、一度お嫁さんを車椅子に座らせてあげ、呼吸を整え。
「あなたさま……」
「ん、む……? あ、あぁ……どうか―――し……ッ!!」
水を飲み下しながら振り返る―――これに関しては、本当に呑み下した後で良かった。
含んだままだったらえらい事だった。
紛れもなく、驚くべきものを見てしまったんだ。
季節は終の月。
だから、それはあり得ない筈だったのに。
それなのに……彼女の―――マリーの瞼が開き、彼女の瞳が真っ直ぐに僕の瞳を覗いていたんだ。
しかも……。
「これ、は……!? 何がどうなってる……? マリー、それは……。その眼は……見えて、いるのか?」
「―――鮮明に。あなたさまは……どう見えていますか?」
どうって。
……だって。
「い、いや……。鏡を―――これをッ」
「……ぁ」
彼女の瞳の色は本来、淡い桃色だ。
ソレが……左目はまるで蜂蜜のように煌めく黄金に、右目は幾何学模様を思わせる緑に揺らめく。
それすらも、彼女が瞬きをする度に両目とも金色であったり、緑であったりとまるで安定していない。
「あの―――あなた様。その……確認、して頂けませんか?」
しかも、やがてこちらに背を向けるまま衣装をはだけ、穢れを知らないような純白の背筋を晒す彼女は―――……。
んえ?
……え!?
ちょっと待った!!
本当に流石にちょっと性急に過ぎるっていうか早過ぎるっていうかまだ日も高いっていうか。
「ま、待ってくれさい! 確かにもう私達は夫婦だが、それでもちょっと陽が高すぎるというか刺激が強すぎますと言いますか―――……、ぁ……え?」
「………ぅ。ぅぅ」
「かわぃ―――じゃなくて」
本人自身あまりに恥ずかしいのだろう。
顔を赤くしてチラとこちらを伺っている姿に今度はこっちが「日が高いからどうした」状態になるところだったけど。
獣になるより早く、目が覚めた。
「―――これ、は?」
だって、これは……。
彼女の真っ白な背中に存在する、大地の象徴たる獣の角と、智慧の象徴たる鳥の翼が複雑に絡み合った紋様は―――。




