6 納得いかない事
「ミヅキは、日に日に聖女の能力のレベルが上がっていくわね!」
と、ニコニコしながら私にタオルを渡してくれるのは、旅の同行メンバーの1人、魔道士のフラヴィアさん。金髪にピンク色の瞳。ピンク色!!初めて見た時には、失礼ながらも二度見した。可愛らしい人で気さくな感じだけど、何故かフラムは彼女の側には近付かない。相性が悪いのかもしれない。
「ありがとう、フラヴィアさん。そう言えば、今日は見学のご令嬢が多いですね?」
私達は、王城の敷地内にある訓練場で訓練をしていて、毎日ではないが、週に2回程、訓練が見学できる日がある。その日は、騎士目当てにやって来るご令嬢が居るけど、今日は特に多い気がする。
「あぁ、それは───」
「「「「きゃ───っ!!」」」」
「え!?何!?」
フラヴィアさんとの会話の途中で、悲鳴に近い黄色の声が訓練場に響き渡った。
驚いて、その声の方に視線を向けると
「あぁ………なるほど………」
「そう。アレが、見学のご令嬢が多い理由よ」
“アレ”─とは─────
「こんにちは。聖女様」
そう言って、ニッコリ微笑みながらやって来たのは、ブラントさん。ダークグレーの短髪に、葵色の瞳をした……所謂イケメン30歳。
「…こんにちは」
ブラントさん目当てのご令嬢が多い理由は、イケメンだから─だけではない。彼は公爵であり第一騎士団の副団長であり……王弟でもあるからだ。しかも、嫁どころか婚約者も居ないらしい。ただし、程よく遊んでいるそうだ。
そんなブラントさんは……私は苦手だ。あまり近寄りたくないタイプの人だ。なのに、第一騎士団の副団長と言う事もあり、ちょくちょく聖女に声をかけて来るのだ。子供扱いだけど───。
「叔父上!」
王弟ブラントさんを叔父上呼ぶのは、この国の第二王子であり、旅の同行メンバーでもある魔道士のミリウスさん18歳。プラチナブロンドの髪に、この国の王族特有の紫色の瞳をしている。
「ブラント殿下、ご足労いただき、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
ブラントさんにお礼を言ったのは、同行メンバーで、第二騎士団所属のジュリアスさん、金髪に青色の瞳のイケメン25歳と、第一騎士団所属のバーナードさん、赤髪に茶色の瞳のイケメン25歳。
『ご足労』と言う事は、私が知らなかっただけで、ブラントさんが、今日の訓練に来る予定だった─と言う事なんだろうけど……
ーきっと、知らなかったのは私だけだよねー
はぁ…と、ソッとため息を吐く。
ソレが意図的なのかたまたまなのか、私だけに情報や知らせが無い事がたまに……よくあるのだ。
ー私、頼まれてやって来た聖女だよね!?ー
と、何度心の中で叫んだだろうか?その度に、アイルとフラムが戦闘態勢に入ってしまう為、宥めるのが大変だった。そんな扱いに慣れてしまったのか、私も以前程イラッとする事もなくなった。
ー色々と、納得していないところはあるけどー
「聖女様、訓練はどうですか?無理な事を言われたりさせられたりはしてませんか?」
「はい、大丈夫です。皆さんには、よくしてもらってますから」
「なら良かった。では、聖女様には少し休んでいただいて、今から騎士達に訓練指導させていただきますね」
そう言って軽く頭を下げた後、ブラントさんは騎士達の居る方へと歩いて行った。
どうやら、今から騎士達の訓練が始まるようだ。
私とジェナさんは、訓練場にあるベンチに座り、その訓練の様子を見学する。
その訓練の間、ずっとご令嬢達からは黄色い声援が飛んでいた。何とも元気なご令嬢達だ。
そして、2時間程行われた訓練が終わると、いつものようにブラントさんが私の元へとやって来て「お送りします」と言って、ニッコリ微笑んだ。
ブラントさんが訓練場にやって来ると、訓練が終わって帰る時は、必ず私を城内にある私の部屋まで送ってくれるのだけど────
「ミヅキ、何故、俺が訓練場に来た時、驚いたんだ?」
「……驚いてませんよ?」
さっきまでの紳士的な対応をしていたブラントさんは何処へやら……。2人きりになると、本性?を現すかのような口調と態度になる。“聖女であっても、取り繕う必要がない”と、判断されたのか……兎に角、いっその事、その態度が清々しくて、イケメンであってもある意味信頼できるかもしれない。
「どうせ、また俺が来る事を知らされてなかったんだろう?」
「………別に、知っていてもいなくても、問題ありませんからね」
ー言いたい事はいっぱいあるけどね!?ー
「お人好しなんだか……馬鹿なのか……」
「馬鹿じゃない!──はっ!すみません」
聖女は、相手が王族であろうと、身分は気にする必要はない。様呼びも必要はない。敬語も必要ないと言われてはいるが、そのまま丸っと鵜呑みにしてはいけないと思っている。
「ミヅキが謝る必要はない。非礼を働いているのは……こちら側だろうから……」
「ブラントさ──」
「ま、お子様だから、知らせなくても良いと思われているのかもな?」
と、ニヤリと笑いながらポンポンと頭を叩かれた。
ーやっぱり、納得いかない!ー




