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49 想い人

「ブラントさん、ありがとうございました。本当に助かりました。でも、何故ここに?」


訓練の日は明日。今迄、訓練の日以外でブラントさんとルドヴィクさんがここに来た事はない。


「昨日、ルドヴィクの護衛として視察に出掛けてな。そこで買った物をチカに渡そうと思って来てみたら、買い物に行ったとリンから聞いて迎えに来たところだ。因みに、ルドヴィクも付いて来たから、今はリンとお茶でもしてるんじゃないか?」

「態々今日来なくても、明日でも良かったのでは?あ、それとも、明日は来れないから今日に─って感じですか?」

「いや、明日も来る予定だ」

「ソウデスカ」


ー2日続けて来る必要は…あるだろうか?ー


「本当に、チカは相変わらず感情に素直だな」

「ブラントさんに愛想を振りまいても意味無いですからね。お互い様ですよ?」

「……だな………くくっ………」


可愛げのない言葉に、可愛げのない態度をとっても、何故か楽しそうに笑っているブラントさんだった。



ブラントさんから貰った物は、視察先の名菓とピアスだった。名菓が日持ちしないからと言う理由で、今日持って来たそうで、それは有難く頂いた。


「ピアスは…」

「あ、それ、高い物じゃないから。露店で売ってて誰でも手軽に買える物だから。それに、チカが貰ってくれないと、捨てるだけになるから─」

「わ…分かりました。有難く頂きます!」


ーピアスに付いている石の色は薄紫色かな?綺麗だなぁー


「ジュリアスと会って、大丈夫だったか?」

「え?あ……」


ジュリアスさん。最後に見た時よりも、少し痩せた感じだった。浄化の旅のメンバーに選ばれたぐらいだから、将来有望だっただろうに…地方に飛ばされてからは、色々と大変だったのかもしれない。同情はしないけど。


「こんな所で会うとは思わなかったからビックリしただけで、それ以外の感情は何もありませんね」

「なら良かった」


目を細めて微笑んで、私の頭をポンポンと優しく叩くブラントさん。


「………」


本当に、こう言う不意打ちは止めて欲しい。普段意地悪なイケメンが、不意に優しさ満載で微笑んだりすると、破壊力が半端無い。ポンポンって………キュンッと鳴るのは私がチョロいからだろうか?


それから家に着く迄は、あまり会話はなかったけど、それは嫌な沈黙ではなく、心地良い穏やかな静けさだった。







******



それから半年も経てば、私もリンも魔力を上手く使えるようになり「もう教える事はないと思います」と、ネッドさんから訓練終了を告げられた。


「ネッドさん、約1年もの間ありがとうございました」

「とんでもありません。こちらこそ、チカ様と同じ時間を過ごせて恐悦至極でした。しかし、流石はチカ様ですね。魔力の扱いの上達が早かったので、私も教え甲斐がありました。勿論、リンも飲み込みが早かったですよ。チカ様の魔力量はとても多く、オールデン神の加護もありますから、多少無理をしても枯渇する事はないと思います。流石チカ様です。ですが、リンの光属性は、加護があったとしても消費量が多いので気を付けて下さい。あ、それと、チカ様の出す水は聖水に近いモノがあります。流石は聖女様ですね!」

「聖水………」

「はい。ですから、料理を作る時にチカ様の魔力で出した水を使って作ると、より一層体に良い物が出来上がると言う事です。流石は聖女チカ様ですね」

「……ネッドさん、そろそろティータイムにしましょう」

「っ!!」


何年経っても、ネッドさんは変わらないなぁと思うと、自然と笑みがこぼれた。





ティータイムの後、私とブラントさん2人でお喋り、ネッドさんはお昼寝、ルドヴィクさんとリンが2人で庭を散歩する─これが、訓練後のルーティンとなっていて、今日もあの2人はお散歩中。ただ、その訓練が今日で終わりと言う事で…。


「ルドヴィクさん、リンに伝えるのかなぁ?」

「伝えるだろう。訓練が終わってしまったら、ここに来る口実が無くなるからな」

「ですよね……あー……こんなにも早く嫁に出さないといけないとは……」

「貴族としては適齢期だけどな」


ルドヴィクさんが22、3歳?でリンが19歳だっけ?私からしたら早いけど、この世界の貴族にとっては普通。


「なら、30を超えたブラントさんはヤバいと言う事ですか?」

「相変わらずハッキリ言ってくれるな…」

「ブラントさんに取り繕っても意味ありませんからね。そもそも、ブラントさんって、結婚願望とかあるんですか?」


かつては程良く遊んでいたらしいブラントさんも、ここ数年は浮いた話の1つもないと、ルドヴィクさんが言っていた通り、ブラントさんには恋人も居なければ遊んでいる感じも全くない。


「ブラントさんなら、引く手数多じゃないですか?」

「それは否定しないな」


イケメンが言うと、嫌味に聞こえないから不思議だ。


「結婚願望が無い事は無いが、相手が誰でも良いとは思っていないから、結婚できるかできないかは相手次第だな」

「ん?その言い方だと、想う人は居ると言う事ですか?」


私と横並びに座っているブラントさんに顔を向けると、ブラントさんは私の髪を少し掴んで持ち上げて、視線は私に向けたままで、持ち上げた髪に軽く口を付けた。


「──そう言う事だ」

「─っ!!??」






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