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48 思わぬ再会

「リン、お兄さんから手紙が来てるよ」

「チカさん、ありがとうございます」


デストニアの国王が変わってから5ヶ月。

リンはデストニアに居るお兄さんとは、手紙のやり取りで繋がっている。


前デストニアの国王は処刑されたけど、王太子マテウスさんは生涯幽閉となったそうだ。

そして、リンの父親は娘であるジョセリンさんを見付ける事ができず、少し前に捜索を打ち切った後、公爵を嫡男に継がせ、夫人と2人で住まいを領地に移したそうだ。


「多分、お兄様が、そうさせたんだと思います」


リンのお兄さんと両親とはあまり仲が良くなかった…と言うか、親のやり方にもともと反感を持っていたお兄さんが、妹の件を切っ掛けに公爵から引き摺り下ろしたんだろうと。そして、そのお兄さんは最後まで渋ってはいたが、先週、ようやくリンの希望通り、クロードハインからジョセリンさんの籍を抜き、リンは本当にミスリアル王国の平民となった。大丈夫かな?と少し心配したけど、平民となってからのリンの方が、毎日楽しそうにしているから大丈夫だろう。それに──


「リン、これをどうぞ」

「ありがとうございます」


相変わらず暇なのか、週2で通って来るルドヴィクさんとリンが………甘酸っぱい。ルドヴィクさんは必ずリンに…リン()()にプレゼントを持って来る。ここは私の家なんだけどね?とは言わないけど。

そのプレゼントは、お菓子だったりパンだったり、花1輪だったりと高価な物ではなく、平民になったリンでも遠慮無く受け取れる物。きっと、それを分かっていて選んでいるんだろう。ルドヴィクさんはデキるイケメンだ。リアルハイスペだ。

リンはリンで、お菓子作りは苦手なようだけど、料理は簡単なモノならできるようになった。


「ルドヴィク様、食べてくれるかしら?」と、顔をほんほり赤くしながら、ルドヴィクさん用にサンドイッチの具を考えている時のリンは可愛かった。あの顔を目にしたら、ルドヴィクさんも一瞬で落ちると思うから見せたくない。


「姑か!?」

「また変な事を考えているのか?」

「変な事とは何ですか!?私はただ、リンが可愛いと思っただけです。本当に、ルドヴィクさんもブラントさんも、よく懲りずにやって来ますよね…」

「チカ様、申し訳ありません。ただの魔道士でしかない私の力では、国王陛下と殿下の同行を止める事ができず……なんなら、いっその事城付きの魔道士を辞めて、アルスティア領専属の魔道士になるのも良いかもしれませんね。そうすれば、ここと城の魔法陣を外して繋がりを無くせますね。それに、私も程良い距離でチカ様の側に控える事ができるとか!!良い考え──」

「ネッドさんほどの優秀な魔道士は、国には必要ですから、城付きを辞めるのは勿体無いですから!勝手に付いて来る2人が悪いだけですからね?だから、絶対に辞めないで下さい」

「っ!!!」


コクコク頷くネッドさんの横で、ブラントさんは笑っていた。








******


「買い過ぎた…」


ネッドさん達が来る予定の日の前日。

明日はパンケーキを作ろうと思い、少なくなっていた小麦粉を買うついでに色々買っていたら買い過ぎてしまい、持つだけでも大変になってしまった。付き添いのフラムに転移の魔法を使ってもらうにしても、人の居ない所までは歩いて移動しなければいけない訳で…


「大丈夫ですか?持ちましょうか?」

「え?」


声を掛けられた方に視線を向けると「荷物、大変そうですね。持ちましょうか?」と再度声を掛けられた。その人は──


「ジュリアス、どうしたの?」

「あ、お嬢様。すみません。この方の荷物が大変そうで、声を掛けたところです」


ージュリアスさんー


「あら、本当ね。貴方、大丈夫?」

「え?あ…大丈夫です」


ブラントさんの情報では、ジュリアスさんは地方に飛ばされた後、どこかの伯爵家の護衛として引き抜かれて騎士は辞めたと聞いていた。おそらく、“お嬢様”と呼ばれた彼女の護衛をしていると言う事なんだろう。公爵の子息でもあったけど、籍は抜かれたと言ってたっけ?


「遠慮しなくても良いわよ?ジュリアス、彼女の家まで運んであげてちょうだい。その間、私はどこかのお店に入っているから」

「え!?あの、本当に大丈夫ですから!家もすぐそこなんで!」

「すぐそこなら、尚更持ちますよ」


ー嫌です!ー


焦る私に追い打ちをかけるように、フラムが戦闘態勢に入る。ウチのセキュリティは万能過ぎる。


「遠慮せずに荷物を──」

「それは俺が持つ」

「へ?」


焦る私とジュリアスさんの間にスッと手が伸びて来て、私の腕から荷物を取り上げられた。


「ブラントさん!?」

「──っ!?」


驚く私に優しい視線を向けた後、ジュリアスさんには冷たい視線を向けた。


「荷物は私が持つから、気にせずに買い物を続けてくれ」

「あら、一緒に来ている人がいたのね。それじゃあ大丈夫ね」


お嬢様と呼ばれた人は、ブラントさんが国王の叔父だと言う事には気付いていないようだ。と言うか、私とジュリアスさん以外の人は気付いていない。


「はい。お気遣い、ありがとうございました。それでは、失礼します」

「気を付けてね。ジュリアス、私達も行きましょう」

「はい………」


ジュリアスさんはブラントさんに軽く頭を下げてから、お嬢様と一緒に去って行った。



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