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44 その後

「今すぐ会いには無理だけど、手紙ならお兄さんに届ける事はできるわよ?」

「本当ですか!?」


私には頼もしい風の妖精トゥールが居るから。トゥールに手紙を託せば、誰の邪魔をされる事もなく飛ばした相手に届けてくれる。正しく言うと、飛ばした相手にしか受け取る事ができないのだ。


「うん。だから、いつでも良いから、手紙を書いたら私に言ってくれたら良いわ」

「チカ様、ありがとうございます」


「それじゃあ、これからどうするか…だな」

「その辺りの事は、私に任せてもらえませんか?」

「チカに?でも…」

「他国の王が介入して、後々何か言われたりするのも厄介じゃないですか?それに、私もちょっとキレてるんでオールデンさんに話をつけてもらいます」


1000歩譲って私の事は我慢したとしても、ジョセリンさんは完璧な被害者だ。これ以上ジョセリンさんが嫌な目に遭わないように、創世神オールデンさんを使っても罰は当たらない筈。


「オールデン神に話をつけるとか……チカは恐ろしいな…」

「流石はチカ様。何度も言いますけど、正真正銘本物の聖女様は言う事が違い過ぎますね。擬きは“私は聖女よ!”としか言ってませんでしたからね。擬きは一体この世界に何をしに来たんでしょうね?あぁ!そうか、態々年齢を詐称して勉強をしに来てたんですね。擬きは留学生だったんですね。なるほど─」


ネッドさんは何処にいてもどんな時でもネッドさんらしい。私の肩に座っているアイルも笑っている。


「それじゃあ、それはチカにお願いするとして、ジョセリン嬢は、これからもミスリアルでチカと一緒に暮らして行くと言うと事で良いか?」

「チカ様が許してくれるなら」

「許すも何も、一緒に暮らそうって誘ったのは私だからね。ただ……これからも一緒にと言うなら、様呼びは止めてくれる?私平民だし、何となく距離があるような気がして嫌なのよ」

「分かりました………チカ()()。呼び捨ては無理ですから」

「ふふっ。それで良いわ。何なら、ネッドさんも様呼びは───」

「え?それは無理ですから。私如きがチカ様を“さん”呼びなど……どんだけ傲岸不遜なんですか。私とチカ様の間には、間があって良いんです。寧ろ間がなければ私は呼吸の仕方も分からなくなりますから。チカ様は私を殺す気ですか?そりゃあチカ様に殺されるなら本望かもしれませんが──」

「ネッドさん、様呼びで良いです。死なないで下さい。これからも宜しくお願いしますね」

「──っ!!!!」


コクコクと無言で頷くネッドさんに、ジョセリンさんはクスクスと笑った。









******

(リリ視点)



「────マテウス!!」


目の前に居たマテウスに助けを求めるように手を伸ばしたけど、その手がマテウスを捕らえる事もなく、私は黒い光に全身を包み込まれた。

その懐かしい感覚にギュッと目を閉じて、次に目を開けた時には、真っ白な空間に独りポツンと立っていた。私が召喚される時にも訪れた空間と同じ所だろう。



『久し振りだな』


そう言って姿を現したのは、()()()()の中性的な顔をした神様のオールデン様だ。


「聖女失格って……私、まだこれからだったんですよ!?どうして──」

『ちゃんと伝えた筈だが…聖女としての器が不安定故、聖女としての訓練はキッチリするようにと。でなければ、器が堪えきれず聖女失格となると。其方は…私の世界で何をした?』

「仕方無いじゃない。学校に通いながら訓練なんて…」

20歳(はたち)を超えた者が学校に通う意味を教えてくれるか?年下の王子を翻弄するのは愉しかったか?弱者を虐めるのも愉しかったか?1人の女の子を蹴落して………愉しかったか?』

「それ……は………」

『私は、全く面白くなかったがな………』


目の前に居るオールデン様は微笑んではいるが、目だけは全く笑っておらず、その視線を向けられているだけで体が震えだす。


『それでも……()が出切ったのは確か。ギリギリ私の予想範囲内だ。それ故に、其方の行いには目を瞑ろう。それで、其方はこれからどうする?元の世界へ…小武(こたけ)(わたる)の元に還るか?』

「それだけは──!」




ー日本にだけは還りたくないー




先輩から完璧に航さんを奪った数日後に、妊娠が嘘だとバレた。


「お前、田淵と寝たんだろう?」

「な…何よ、何でそんな……」

「昨日、田淵とお前がホテルに入って行くのを見た奴がいたんだ。それで、妊娠も嘘なんだろ?」

「…そうですよ!嘘よ!だから何?妊娠してなくても、航さんが先輩を裏切って私と何度も寝たのは本当の事じゃない!」

「妊娠なんてしてなかったら、お前となんて結婚しない!」

「なっ!私だって、航さんなんかと結婚したくないわ!田淵さんの方が航さんより上だし、将来有望だもの!私は田淵さんを選ぶわ。でも、航さんは先輩の元には戻れませんよね?可哀想……ふふっ」

「って言うか、1回寝たぐらいで恋人面するの止めてくれるかな?」

「田淵さん!?」


航さんと2人きりだと思っていたところに、田淵さんがやって来た。


「妊娠したって嘘ついて他人の婚約者奪っておいて、更に違う男に手を出すような女、こっちから願い下げだから。選ぶわって……ホント、傲慢な女だね?」

「─っ!失礼します!」


全て聞かれていたと知って、私は急いでその場から走り出して──






気が付けば、この真っ白な空間に立たされていた。





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