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裏切られた聖女は、捨てられた悪役令嬢を拾いました。それが、何か?  作者: みん


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40 聖女と聖女

一悶着あった翌日



引き篭もっていた王太子が、久し振りに部屋から出てやって来たのは、比較的小さい応接室だった。

その応接室には、ルドヴィク国王とブラントとネッドと、フードを目深に被った者が居た。ちなみに、皆には見えていないが、フードを被っている者の肩には水の妖精がチョコンと座っている。






「それで、今日は謝罪をしてもらえるんですね?」

「謝罪も何も、こちら側は悪い事は一切していない。寧ろ、こんな時にも関わらず、我儘を言って外出をしたそちらに問題があるだろう?」


そもそも、何故未だに2人がミスリアルに居るのか。それは、デストニア国内が荒れているから。現国王の政治に反発した勢力が動き出し、その状況の中、王太子と聖女が帰国すればどうなるか分からないから匿って欲しいと言われ、預かっている状況である。

そんな状況下での外出。狙われても仕方無い。ただ、狙われるかもしれないと分かっていて何もしないと言う訳にもいかず、我儘な聖女の外出の為にどれ程の人員を動かす羽目になったのか。


「私は、2人を預かって欲しいと頼まれたから預かっているだけで、それを拒否してデストニアに送り返しても良いんだけどね?我が国にとって、現国王の統治が続こうが、新たな国王が立とうが、あまり関係ないからね」


確か……ミスリアルとデストニアは隣国だから商業に於いての国交はあるけど、王室や政治的には友好国と呼べる程の親交は無い─だったかな?


「外出を強請った事は…申し訳無く思ってますが、それでも!リリは聖女だから、聖女に対して無礼を働くのは許されない事ではないですか?」


外出は良くないと理解しているのに、聖女が絡むと阿呆な解釈しかできない事が残念だ。

ネッドさんとはまた違った意味での聖女信奉者なのかもしれない。


「それに、そのフードを被った女は、リリを脅したそうです」

「脅しではなく、忠告ですよ」


逆に褒めて欲しいぐらいだ。


「聖女だから狙われない、誰も手を出さないなんて事はありませんから。特に、聖女リリは、デストニアではまだ正式にお披露目されてませんよね?だから、貴方が聖女だと知らない人の方が多いと言う事です。でも、王太子の婚約者だと知っている者はそれなりに居ると言う事を鑑みれば、聖女であっても狙われる可能性が高いと言う訳です。そんな事、少し考えれば分かる事ですよね?だから、脅しではありません」


「な──っ!!」

「それに、マテウス様の為でもありますよ?王太子マテウス様の婚約者が、他国の騎士と2人でデートなんて…外聞が悪いですから。あぁ、今私が“デート”と言ったのは、聖女リリ自身が昨日のお出掛けは、ブラント様とのデートだと言っていたからです」


ネッドさん曰く、イカれた変換機能が発動されただけらしいけど。


「そもそも、服を汚されたと怒っていたけど、聖女であるなら浄化すれば済む話なんです。あそこまで怒る意味が、私には分からない。聖女なら簡単な事でしょう?」


「あ……貴方って本当に失礼な人ね!貴方に聖女の何が分かるの!?聖女だから何でもできるなんて思わないで!聖女がどれ程大変か、貴方には分からないでしょうけど。貴方、そのフードを外してちゃんと顔を見せなさい。それも失礼だわ!」

「あぁ…それは失礼しました」


バサッ─


「───え?」

「久し振りね?リリ…じゃなくて田辺さん?」


フードを外してニッコリ微笑むと、今迄勝ち誇ったような余裕のあった顔から、少し焦ったような顔になった。


「なんで……先輩がここに?」

「それ、愚問じゃない?この世界に異世界の人間が居る理由は1つしかないでしょう?オールデンさんから教えてもらわなかったの?そんな訳ないわよね?聖女様なんだから…」

「リリ、彼女も異世界の人間なのか?リリの知り合いなのか?」


この応接室に居る者の中で、マテウスさんだけが状況を飲み込めていない。


「知り合いも何も、元の世界では同じ()()の先輩後輩の仲でした」

「職場?え?でも…17歳で……学校に……」

「ちがっ!ちょっ…先ぱ…って……まさか、先輩も……」

「そのまさかよ。私も聖女としてミスリアルに召喚されてやって来たのよ。田辺さんとは違って、もう浄化の旅も無事に終わってスローライフを楽しもうとしてたところだったのに……だから、本当に不思議で仕方無いのよ。服を浄化すれば済む話を大きくする田辺さんが。まさか、1年以上もこの世界に居て、聖女の力を扱えていないなんて事は…ないよね?」

「─っ!」


ー扱えていない……のかー


そうだろうと思っていたけど。まぁ…浄化目的の召喚じゃなかったんだろうけど。


「そもそも、田辺さんが聖女に選ばれた事事態が不思議なのよね」

「先輩、そんな言い方酷くないですか?」

「そ…そうだ!同じ聖女だからと言っても、それは失礼ではないか!?」


田辺さんが目をうるうるとさせると、王太子が慌てて慰める。


ーこの王太子、チョロいな……年下で箱入りだから仕方無いのかなぁ?ー


兎に角、ここまで来たら私だって容赦はしない。先に仕掛けて来たのはそっちだから。


「だって、本当の事じゃない。ねぇ、田辺さん。貴方……お腹に居た筈の子供はどうしたの?」






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