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33 楽しい、面白い事

「あの女なら……やりかねないわね……」


他国に居るのにも関わらず「私は聖女よ!」と叫び我儘を言って、ブラントさんの居るだろう第一騎士団へ突撃している姿が目に浮かぶ。王太子に、それを止める事ができるのか…。

聖女とは、オールデンさんが選んで召喚した者だから、喩え王太子でも国王でも強く出難いと言うところがある。だから、私の場合も直接何かをされるような事は一度も無かった。

だから、ある意味聖女リリを真正面から対応できるのは、同じ聖女の私だけと言う事だ。


「何故、そんな女を聖女に………」

「すみません。多分……私も原因の1つかもしれません……」




最後にオールデンさんに会った時─


『しかし……このままではなぁ………』


と呟いた後、神様らしくない笑顔を浮かべていた。アレはきっと……そのままの意味だったんだ。


黒羽(くう)


そう呼べば、今回はアッサリと黒い翼を広げた鷹が姿を現した。いつもなら、その姿のままでオールデンさんの言葉を伝えてくれるのだけど─


黒羽から黒色の光が溢れたかと思うと、その光の後に居たのは、黒色のおかっぱ頭をした男の子だった。


『チカ様、今迄、呼び掛けに応えられずすみませんでした』


頭を下げる黒羽(で良いんだよね?)。


「謝らなくて良いよ。多分…オールデンさんの意向ですよね?」

『はい。ありがとうございます。では、オールデン様からのお言葉をお伝え致します』




オールデンさん曰く──



元の世界では、私が居なくなっても何も変わる事なく、尚且つ、航と田辺莉々が幸せになっていくのが納得いかなかった。


この世界で、立派に聖女としての務めを果たしたのにも関わらず、蔑ろにされた事が気に食わなかった。


元の世界でもこの世界でも、自分が認めた者である私がやられっ放しだった事が気に食わなかった。


何より、自分が如何に素晴らしい行いをしたのかを自覚していない深月千花が歯がゆかった。



『過去の事を決着させて、前に進んで欲しい』

「オールデンさん………」


ー感動……なんてしてませんからね?ー


そんなカッコイイ事を言っているけど、結局のところ、私が田辺莉々にざまあするのを楽しみにしているだけですよね!?声を出して言わないけど!ジョセリンさんの為にも……やりますけど!事が無事に済んだら呼びますからね!


「オールデン神は、余程ミヅ─チカの事を大切に思っているのだな…」

「「…………」」


オールデンさんの言葉に感動しているのが、ルドヴィクさんとブラントさんとネッドさんとジョセリンさん。イシュメルさんはいつも通り笑っているけど、多分、イシュメルさんもオールデンさんの性格をちゃんと理解していると思う。



“楽しい事、面白い事が大好きな元破壊神”



「ジョセリンさん…本当にごめんなさい。私の事がなかったら、ジョセリンさんは今も公爵令嬢で、王太子の婚約者のままだったと思うの。本当にごめんなさい。」


きっと、1番の被害者はジョセリンさんだ。これは、後でオールデンさんにも何かしらの事をしてもらっても……良いと思う。


「確かに、そうかもしれませんが、でも、殿下が本当に私の事を信頼して信じてくれていたなら、こう言う結果にはなっていなかったと思うんです。私の言葉をちゃんと聞いてくれていたなら、聖女様の事は関係なく、今でも殿下の横に居られたと思います。でも、殿下は、私の言葉を聞かず、聖女様の言葉だけを聞いて信じる事を選んだんです。それだけなんです。チカ様は何も悪くないんです。寧ろ、私を助けていただいた恩人なんです。」


フワッと微笑むジョセリンさん。これで本当に18歳なんだろうか?ジョセリンさんが一番傷付いた筈なのに、私の事をフォローまでしてくれて……誰が“悪役令嬢”なのか。田辺莉々の方が、よっぽどの悪役令嬢じゃないだろうか?


「ジョセリンさん、大好き!!」

「えっ!?」


ムギュウッ─と抱きつくと、ジョセリンさんはアワアワと私の腕の中で慌てている。それがまた可愛い。


ー妹が居たら、こんな感じなのかなぁ?ー


オールデンさんの思惑通りに進むのは、何となく悔しかったりもするけど、ジョセリンさんの為にと思えば…頑張れない事もない!


「はいはい、チカ、少し落ち着け。ジョセリン嬢が困っているから…離れようか?」


と、ジョセリンさんの背中に回していた私の腕を掴んだのは、ブラントさんだった。


「え?あ、はい。ジョセリンさん、重ね重ねごめんなさい」

「ふふっ…大丈夫です……ふふっ……」


何故か笑っているジョセリンさんと、少し不機嫌?なブラントさん。


ーえ?ブラントさんに、ジョセリンさんはあげませんよ?ー


ジトリとブラントさんを軽く睨めば「勘違いも甚だしいな…」と、呆れた顔をされ、ジョセリンさんには、更に笑われてしまった。



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