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25 魔道士ネッド

即位式前日に、私はフラムと一緒にイシュメルさんの居る神殿奥にある塔へ転移して来た。


ちなみに、ジョセリンさんはアルスティアの神殿で過ごしてもらうようにして、アイルとトゥールに側に居てもらうようにお願いをしている。




「チカ、来ていただいて、ありがとうございます。それで……前以て話していた事ですが……」

「ミヅキ様!!!」

「はいっ!!??」


ーえ!?何で深月千花(この姿)でミヅキって分かるの!?ー


と驚いて声のした方を見てみれば、そこに魔道士のネッドさんが居た。




前以てイシュメルさんとジェナさんから言われていた事。


私が今回即位式に参加する時は、顔は隠れているけどチカの姿で参加すると決めていた。そうすれば、もし誰かに顔を見られたとしても、それが聖女ミヅキだと分からないから。だけど──


「「ネッドなら気付きます」」


と、イシュメルさんとジェナさんがハモった。


「ネッドさん?私、ネッドさんとは殆ど喋ってませんよ?」


だから、ネッドさんが気付く筈はないと思っていたけど、私が良ければ、念の為に即位式迄にネッドさんに会ってくれないか?と言われて、今日会う事になっていた。




「あぁ!本当にミヅキ様なんですね!この世界、この国にいらっしゃったんですね!またお会いできるとは…恐悦至極です!やはり、ミヅキ様は纏っている雰囲気が違いますね!圧倒されます!と言うか、また、更に力が強くなってませんか?兎に角、初めてお目にかかった時のあの、私の衝撃と感動が分かりますか?それはそれは息をするのも忘れる程の衝撃でした!あの時初めて、王太子殿下の側近候補で良かった!と思いました。王太子殿下に感謝しかありません!ただ……あの旅での事は本当に申し訳無く思っています!本当にあのクズ──ミリウスやフラヴィア達が失礼しました!何度あいつ等をやってしまおうか!?と思いましたが、一応は国王が選んだ者達だし、浄化を無事に終わらせる為にと我慢しました。が、やっぱりやっておけば良かったのかもしれませんね!?それに、ジュリアスは……自業自得ですね?ざまあみろ!ですね!?バーナードに至っては、本当に下衆でしたね!どんな目で聖女ミズキ様を見ていたのか……やっぱりアイツもやっておくべきでしたね……それで───」


「「「…………」」」


ーえ?これ、本当にネッドさん!?ー


未だに続いている弾丸トーク。止まる気配のない弾丸トーク。ひくんですけど?


チラッとイシュメルさんとジェナさんに視線を向けると「だから言ったでしょう?」と言う視線をイシュメルさんから返された。


「殆どの魔道士がそうでしたけど、特にネッドはミヅキに対する憧れと敬意が凄過ぎで……それに、アレでもかなり優秀な魔道士なので、容姿とは関係なく、チカがミヅキである事に直ぐ気付くのも……おかしくない事なんですよ」と、遠い目をしたジェナさんに言われた。


未だに続いている弾丸トークをどう終わらせる?


「それは簡単です。ミヅキが“ネッドにまた会えて嬉しい”と言えば、一発で黙ります」


そんな馬鹿な……と思いながらも「ネッドさん、ネッドさんにまた会えて…嬉しいです」


「─っ!!!!!!」


ピタッ─と弾丸トークが止まり、体もピシッと固まったネッドさん。


「えっと…でも、私が居ると言う事は…秘密でお願いしますね」


と言えば、ブンブンと音が出そうな勢いで首を縦に振ってくれた。


珍しい事に、フラムが私の首に、少し震えながらしがみついていた。







そんなネッドさんを引き摺るようにジェナさんと共に帰って行き、イシュメルさんが、私が今日泊まる客室迄案内してくれた後、即位式の流れを説明してくれた。それから、いくつかの確認をした後、イシュメルさんも部屋から出て行き、後は寝るだけとなった。


「………」


王都(ここ)に来てから心がざわついている。

それは、王都(ここ)に良い思い出がないからなのか、それとも、これからの事が不安なのか、その両方なのか………


ー隣国の聖女が、この国で問題を起こさなかったら良いけどー


「……黒羽(くう)


呼んではみるけど、やっぱり飛んで来る気配すらない。あれからも、時々呼んではみるけど、黒羽が姿を表す事はなかった。それも、不安になる理由の一つだ。オールデンさんがまた……何かを企んでいるのかもしれいと言う不安だ。フラム達に訊いても『知らない』『分からない』らしい。


「………」


ー本当に…本当に、何事もなく平和に……無事に、全てが終わりますようにー


切実に、切実に願います!







******


即位式は、王都の神殿で執り行われる。

大神官イシュメルさんが、オールデン神の代わりとして、新しく国王となるルドヴィクさんに王冠を授ける事によって初めて、ルドヴィクさんが国王として認められる。


いつもは礼拝に来ている人達で騒がしい神殿も、今日は厳かな雰囲気に包まれている。


そんな中、私は今、その王冠を持っている副神官と一緒に、大層ご立派な王笏を持ってホールの扉の外で待機している。


そして、その扉が開かれ、副神官が歩き始めると、私もその後を歩きホールへと入れば、そこには裾の長い真っ白なマントを身に着けたルドヴィクさんと、真っ白な聖職者特有の服を着たイシュメルさんが居た。





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