表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/58

21 目覚め

「チカさん、大丈夫だった?」


翌日の早朝にマッテオさんに手紙を飛ばして、昨夜の話を伝えると、30分もかからないうちにノーランさん達聖騎士3人がやって来た。その内の1人は外でドロドロになったまま倒れている男を拘束して神殿へと戻って行き、1人はこの辺りを見回りに行き、ノーランさんは私の元へとやって来た。




女性は未だ、私のベッドで眠ったままで、名前やどこから来たのかなど、何も分かっていないままだった。


「家出や…誘拐と言う可能性もあるけど、昨日の今日の事だから、まだ捜索願も出ていないと思う」


一応、現在届けられている捜索願を確認してくれたそうだけど、その中に、この女性に当てはまるような人物は居なかったそうだ。


「そうなんですね。それじゃあ…目が覚める迄待つしかありませんね」


明るくなった部屋で、改めて彼女の顔をよく見ると、とても綺麗な顔をしている事が分かる。多分、貴族の令嬢だと思うけど、どうして貴族の令嬢が護衛も付けずにあんなボロボロの馬車を利用していたのか…


その女性が目覚める様子も無かった為、もう一度私から昨日の話をノーランさんにすると


「チカさんが魔力持ちで良かった。そうでなければ、チカさんだって怪我をしてたかもしれない。でも、次からは……できれば1人で対応しないようにね」


と言われた。


ー本当は、魔力なんて持ってないけどー


アイルが水魔法で攻撃したり、水の魔法で拘束したりしていた為、「私、水属性の魔力持ちなんです」と言う事にした。水属性は、聖女の癒やしの様に万能ではないけど、程度の軽い癒やしに似た力を使う事もできるから、そう言っておいた方が何かと都合が良いかも─と言う事もあったから、丁度良かったのかもしれない。


「彼女が目覚めたら、連絡して下さい」と言って、ノーランさんは神殿へと帰って行った。


女性がいつ目覚めるのか分からない為、申し訳無いと思いながらも、今日のバイトは休む事にした。





「チカお姉ちゃん、こんにちは」

「エステルちゃん!?」


その日のお昼に、エステルちゃんが我が家にやって来た。


「ママが、チカお姉ちゃんが大変だろうから、持って行ってあげてって!それで、一緒に食べても良い?」

「勿論!!」


メイジーさん達こそ忙しくて大変だろうに、私の為にサンドイッチを用意してくれて、それをエステルちゃんが持って来てくれたのだ。本当に、感謝です!


それから、エステルちゃんと一緒にランチを食べて少し話をしていると、エステルちゃんが寝てしまった為、取り敢えず、ソファーまで運んで布団を掛けた。


「疲れてたのかな?」


ガタンッ───


「─っ!?2階から?」

『チカ、彼女が目を覚ましたよ』


と、パタパタと、彼女を見てもらっていたトゥールが飛んで教えに来てくれた。







コンコン─


「あの、私、この家の者なんだけど……入りますね」


取り敢えず、ドアをノックして声を掛けてからドアを開けた。すると、ベッドの上で布団を握りしめて震えている彼女の姿があった。


「あの……大丈夫ですか?」

「…………」

「えっと…そのままで良いから、聞いてくれるかな?」

と、私はベッドまでは行かず、少し距離を空けたまま、昨日の夜の出来事を説明した。



話を聞き終えた後も、少し警戒されていたけど、そこへひょこっと現れたエステルちゃんに安心をしたのか、握りしめていた布団から顔を上げて「助けていただいて…ありがとうございました」とお礼を言われた。

それから、お腹が空いていたようで、残っていたサンドイッチを用意すると「ありがとうございます」と言って食べてくれた。





「挨拶が遅れました。私、ジョセリン…クロー……ジョセリンと言います」


ーん?今、家名を言い掛けて止めた?ー


「私はチカ。この家に1人で住んでるの」

「1人で……ですか!?」


ー万能なセキュリティ完備だけどー


「だから、私の事も何も気にしなくて良いんだけど……ジョセリンさんは、どうして1人であんな時間に、こんな辺境地に居たの?」

「それは…………」


ジョセリンさんは、黙ったまま俯いてしまった。


「あ、別に無理に話さなくても良いですよ。ただ、貴方に手を出していた男を捕まえて引き渡しているから、後で事情を訊かれるとは思いますけど…。あ、その前に、貴方の無事を知らせなければいけない人は居ますか?居るなら、直ぐに手紙を──」

「……居ません。私を心配してくれるような人は……もう居ません……」


そう呟くと、ジョセリンさんは声を押し殺したまま涙を流している。そんな彼女の周りを、トゥールが心配そうな顔で飛び回っている。

そんな彼女の側まで行き、その震えている体をそっと抱きしめて背中をポンポンと叩けば「ごっ…ごめ……なさい………」と言ってから私にしがみついて、暫くの間泣き続けた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ