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19 充実した日々

初めて知った事実。

ジェナさんは、城付きの騎士ではなく、神殿付きの騎士─聖騎士だった。つまり、ジェナさんの主は大神官であるイシュメルさんと言う事だ。


「魔道士のネッドも、最後にミヅキに挨拶がしたかったと言ってました」


魔道士ネッドさんは、王太子ルドヴィクさんが選んだ人で、他の4人は国王が選んだ人達だった。


「ネッドなんて、未だに聖女ミヅキに対しては崇拝レベルの憧れ?敬意を持ってますからね」


ーあの無表情なネッドさんが?ー


ネッドさんとは、あまり会話をした記憶がないけど、()()()の時、あの席に居たけど、ネッドさんが何かを言う事はなかった。ただただ黙って聞いていただけだった。無表情で。


「ネッドは、キレればキレる程無表情になるんですよ」

「なるほど…」


ーそう言う事なら、また…いつか、ネッドさんにも会っても良いかも?ー


「─と言うか、フラヴィアは別として、魔道士達にとって、聖女ミヅキは憧れの的でしたけどね。それと、旅の同行メンバーがクズ過ぎただけなんですよね……何度やってしまおうか?と思った事か……」

「ジェナさん……」


ジェナさんとアイルとフラムの思考、似てない?あ、だから、アイルとフラムは……ジェナさんの周りをよく飛び回っていたのかもしれない。実際やってしまうのは遠慮して欲しいけど、私の為にそこまで怒ってくれるのは……正直に嬉しい事だ。


「後は…ジュリアスの事は……」

「…………」





『私は……ミヅキとは、旅が終わった後も、一緒に居たいと思っているんだ。だから……今すぐにとは言わないから、少し、私との事を考えてみて欲しい』




あの言葉が本気だったのか、嘘だったのか─それは、正直、もうどうでもいい事だ。


「ジュリアスさんの事は、もういいんです。これから先、もう会う事もないだろうし、私がジュリアスさんに気持ちが動くと言う事もありませんから」


「そうですね……」と、ジェナさんが呟いた後は、3人で夜遅く迄会話に花を咲かせた。






******



私がアルスティア領にやって来てから、そろそろ1年。そして、即位式が行われる迄1ヶ月。


王都では少しずつ他国からの旅行客や商人が増え、いつもより賑わっているらしい。アルスティアも例外ではなく、いつもより人が多いようで、パン屋をしているメイジーさんも毎日忙しそうにしている。




「お手伝いできる事、ありますか?」と訊けば、「昼時の忙しい時間帯だけで良いから手伝って欲しい」と言われ、お昼の3時間程メイジーさんのパン屋さんでバイトをする事になった。


「チカ、計算が得意なのね!?神だわ!!」


と、主にお会計を任されている。

もともと暗算が得意だったから、お会計をするのも楽しいし、何より、働くと言う事が楽しい。働かなくてもお金に困る事はないけど…やっぱり働いていないと、どうにも落ち着かなかったりもする。


“働かざる者、食うべからず”


「本当に、その通りだよね………」

「ん?チカ、何か言った?」

「あ、いえ、独り言です」

「そう?あ、そろそろ上がる時間ね。今日はチカの好きなナッツたっぷりのベーグルを用意してあるから、食べて帰ってね」

「メイジーさん、ありがとうございます!」


バイト料以外に、いつもランチ用に色んなパンを用意してくれるメイジーさん。それを、いつもバイト上がりにエステルちゃんと食べる─それが私のルーティンとなっている。


本当に、毎日が充実して楽しい今日この頃です。










**********

(?????????)



「ジョセリン、君がそんな事をする愚か者だとは…思わなかった」

「私は何もしていません……」

「これだけの証拠があるのにも関わらず、己自身の罪を認めないのか?」

「ですから、その証拠自体が作り上げられた物なんです。ちゃんと調べ直していただければ──」

「もういい、黙ってくれ!」

「──っ!!」


大声を上げられたその令嬢は、震える体を気付かれないように力を入れて立っている。


「この事を、父に───」

「その必要はないし、もう既に君には名乗るべき家名も無い」

「家名が……無い?」

「そうだ。君がこれまでにしでかした事は、既に私から公爵には伝えてある。その上で、公爵は君を切り捨てた。相手が相手だけに、公爵も君を庇いきれないと思ったんだろう。公爵は娘よりも()を取った─と言う事だ」

「そんな………私は……本当に…何も…………」

「素直に罪を認めて謝罪すれば、修道院送りで済んだものを……こうなったなら仕方無い。国外追放となる。連れて行け!今すぐに!」

「なっ!?殿下!!」


その令嬢の言葉を聞く者は誰一人居らず、その令嬢はその場に待機していた2人の騎士に引き摺られるようにして、その部屋から連れ出されて行った。


その令嬢に冷たい視線を送っていた“殿下”と呼ばれた男性の横には、涙をハラハラと流している女性が居た。


「もう、これで大丈夫だから、安心して欲しい」


その男性が、その女性に微笑めば、その女性は「ありがとうございます」と言って、女性もまた微笑んだ。





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