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15 祝賀パレード

「祝賀…パレード………」

「そう。聖女様達が無事に浄化を終えた事を祝う祭りがあって、王都では夜には王城でパーティーが開かれて、パレードはその日の午前中に行われるんです」


ーすっかり忘れてたー


確かに、浄化の旅が終わったら王都でパレードをして、夜にはパーティーに参加してもらいます─なんて言われてたっけ?ダンスが必須だと言われて、ダンスの練習もさせられた…。


「…………」


聖女不在のパレード──


大丈夫なんだろうか?勿論、「大丈夫じゃない!」と言われたところで、私が王城に戻る事はないけど。

それに、無能聖女なんて、誰もお呼びではないかもしれないけど。


「私も、辺境地の神官だけど、一応神官()だから、王城で開かれるパーティーには出席しないといけないから、数日は神殿を留守にしますね。」

「そうなんですね。分かりました。気を付けて行って来て下さい」


ここから王都迄の移動は、アルスティアの神殿からイシュメルさんの居る王都の神殿迄、魔法陣で転移するそうだ。本当に、魔法って便利だよね…。


「それで、私が居ない間、何かあったらメイジーさんに相談すると良いから」

「はい、分かりました。」


メイジーさん


イシュメルさんの生家から、歩いて5分程の距離に住んでいて、所謂“お隣の奥さん”だ。優しい旦那様のアランさんと、可愛い女の子の3人家族。


昨日、挨拶をしに行くと、娘のエステルちゃんに懐かれて、そのまま昼食をご馳走になったりと、とても気さくな家族だった。


「“オールデン神の祝福”を見られるかもしれないね」

「オールデン神の…祝福?」

「あぁ、若い子は、知らないかな?」


ー若いからではなく……世界が違うからだけどー



“オールデン神の祝福”とは──



国の穢れが浄化され綺麗になると、オールデン神が、聖女に対して感謝の気持ちを表す為に、空に現れるモノなんだそうだ。


「何が現れるんですか?」

「なんでも、七色に輝くモノらしいよ」


ー七色……ベタに虹……とか?ー


「それは、国中で見られるらしいから、パレードのある日は、外に出て空を見上げてみると良いよ」

「はい!忘れずに見上げます!!」

「それじゃあ、私はこれで……」


帰って行くマッテオさんを見送って、家の中に入ってから───


「聖女に対して感謝の気持ちを……表す為?」


それは……微妙だったりする?“無能”扱いされて“デメリット”呼ばわりされて、聖女(わたし)はあの人達から逃げて……ここに居るわけで……。しかも、オールデンさんは、その事を知っている。更には、オールデンさんは楽しい事面白い事が好きな腹黒な神様だ。そんなオールデンさんが、素直に“オールデン神の祝福”をするだろうか?


「…………」


ーうん。考えるのは止めようー


どうなったところで、私には関係無い事だと思いたい──思っておく!











*王城、第一騎士団副団長室にて*

(ブラント視点)



クズであっても愚か者であっても、聖女ミヅキと共に浄化を成功させたミリウスとジュリアスとバーナードとフラヴィアは、取り敢えず予定通りにパレードに参加させる事になった。聖女ミヅキが不在のまま。


聖女ミヅキについては、国中にその存在を告知していたから、ミヅキ本人を見た事がなくとも、聖女が黒色の髪と瞳をした女の子だと言う事は知っている。だから、その黒色の女の子が居ないと言う事は、誰もが直ぐに気が付くだろう。


ー本当に……兄上は義姉上が亡くなってから傲慢な王になってしまったなー


もともと平民だった女性に恋をした兄。何とか手を回してその女性と結婚して、ルドヴィクとミリウスを生んだが……義姉上は貴族社会や王族には馴染めず、気を病んでしまい、そのまま───


ールドヴィクがマトモな思考の持ち主で良かったー



『ブラントさん』



何一つ、欠片さえ含まれてはいなかった。





『ブラント様』

『カールストン様』


俺の名を呼ぶ女性達の、その声には、いつも()()が含まれていた。俺は紳士的には振る舞ってはいるが、聖人君子ではない。そんな女性達とも上手く付き合っていた。


それが、紳士的に振る舞えば振る舞うほど、彼女は俺との間に壁を作っていった。笑っているようで、笑っていない笑顔を貼り付けていた。


ー取り繕う必要が無いなー


と思って、紳士的な態度を止めて素のままで対応してみれば、最初は驚いたような目で俺を見ていたが、数日もすれば彼女もそれに慣れたようで、彼女も私には素で対応するようになっていた。


『ブラントさん』


その声には、()()()も無い。ただただ名を呼んでいるだけ。それが、何となく落ち着く声だな─と思うようになっていた。そうなると、逆に()()()を含んだ声が鬱陶しくなっていった。



『行ってきます』



最後に聞いた彼女の声。未だに耳に残っている。



ふぅ──と、息を吐く。



彼女──聖女ミヅキが不在のパレード。一体どうなるのか…………



「兄上……次第か………」


俺は1人、呟いた。


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