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14 緑色

イシュメルさんの生家にやって来た私は、先ず、イシュメルさんが用意して、アイルとフラムが運んで来てくれた荷物の整理をする事にした。


『僕は部屋の掃除をする!』

『私は、お風呂の掃除と準備をしてくるわ』


水の妖精のアイルは掃除が得意で、今までもいつも楽しそうに部屋の掃除をしてくれていた。

火の妖精のフラムはお菓子作りが得意で、あの小さな体にも関わらず、よくお菓子を作ってくれる。そして、お風呂が大好きだから、いつもお風呂の準備をしてくれるのはフラムだ。


3人各々が動き出す。


イシュメルさんの生家のある領は、この国の一番端っこにある領だった。ただ、隣国とは接してはいない。隣国との間に、海があるから。隣国迄は船に乗って順調にいけば2日程で行ける距離。ただ、違う国を跨げば陸地でも繋がってはいるらしく、わざわざ危険の多い海の上を船でやって来る人は滅多に居ないそうで、海辺は静かで穏やかだし、領内も良い感じの田舎でのんびりできそうだ。


イシュメルさんの生家は、更にその領の端っこにあり、2階建ての3LDKで、1階にリビングと台所とお風呂と応接室のような部屋があり、2階に2つの部屋があった。


イシュメルさんはもともと、この領に住む平民だったそうだ。それが、“オールデン神の声を聞ける者”だと判明し、当時老齢だった大神官の後を引き継いで今に至る─と。それから10年空き家だったみたいだけど、汚れやホコリが溜まっている事もなければ、床や壁が傷んでいると言う事もない。


「不思議だよね………」

『何が?』

「───え?」


あれ?何故か、目の前に、またまた羽の付いた小人が居る。青色でもなく、赤色でもなく……緑色。


『あー、()が居たんだな』

『あ、()だ』


ー“風”と言う事は、この緑色の小人は風の妖精と言う事かな?ー


アイルはサラサラの青色の髪で、フラムは赤色のショートヘア。この風の妖精はクルクルパーマの緑色だ。


ー可愛い!!!ー


アイル曰く、この風の妖精が、イシュメルさんの家に風通しをしていたそうで、そのお陰で綺麗な状態で保たれていたそうだ。契約こそしてはいなかったけど、この風の妖精は、イシュメルさんの事を気に入っていたらしい。


『ミヅキは、僕が見えるんだよね?』

「うん。見えるよ。緑色だね!」

『じゃあ、僕とも契約してくれる?』


ーえ!?それ、願ったり叶ったりだけど!?ー


「勿論、喜んで!!うーん……」と暫く考えてから、私はその風の妖精に“トゥール”と名付けて契約を結んだ。


転移早々、癒やしが増えました!






その日の夜は、フラムが準備してくれたお風呂で疲れを癒やし、夜はイシュメルさんが用意してくれていたサンドイッチを食べた。フラム達用にか、小さいパンも沢山入っていて、3人とも嬉しそうに食べていた。




ーイシュメルさんには、本当に感謝しかない。落ち着いたら、絶対に会いに行こう!ー


そう思いながら、私は2階にあるベッドで眠りに就いた。

ちなみに、その部屋には小さな篭状のベッド?が()()置かれていて、アイルとフラムとトゥールが、それぞれその篭で眠っている。


イシュメルさん……恐るべし!










******


「ようこそ、我が領へ」

「ありがとうございます」


翌日、挨拶をしに来てくれたのは、ここ─アルスティア領にある神殿の神官長のマッテオさんだった。


このマッテオさん、イシュメルさんとは同じ歳の幼馴染みで、神官としても同期なんだそうだ。イシュメルさんが大神官となってからも、手紙のやり取りは続いていて、1ヶ月に1度はコッソリ会ったりもしているらしい。


「イシュメルから、女性が1人住む事になったから、気に掛けてやって欲しいと言われてね。嫁か!?と思ったけど……年齢的に、イシュメルの隠し子──」

「じゃありませんから!!勿論、嫁でもありませんから!!」


イシュメルさんの名誉の為にも全否定しておく。


「え?そこまで全否定する?ははっ……貴方は面白い人ですね」

「え?何が?」


と訊けば、イシュメルさんは大神官と言う事で、その地位と名誉に取り入ろうとする者が多いそうで、『私、実は大神官様の恋人なんです』とか『大神官様は、私の父なんです』とか言って、生家のある領に突撃して来る事も珍しくないそうだ。


「だから、逆に全否定する人は……貴方が初めてだったので……笑ってしまってすみません」

「いえ……分かってもらえたなら大丈夫です」

「イシュメルが自ら頼み事をして来るのも、珍しい事で……それだけ、イシュメルにとって、貴方はある意味大切な人なんでしょうね?」

「それは…どうかは分かりませんが、私にとってイシュメルさんは…恩人の様な人です」

「そうですか……」


ニッコリ微笑むマッテオさん。その周りを、アイルとフラムとトゥールが飛び回っている──と言う事は、マッテオさんは私に悪感情を持っていないと言う事だ。


ー妖精って、色々便利だなぁー


兎に角、マッテオさんには申し訳無いけど、今はまだ、イシュメルさんと私の関係と、聖女の事は黙っていよう。



こうして、私のアルスティアでの生活が始まった。





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